天命刹歌・1章 Golden Apple and Silver Sword

天命刹歌 第1話 天之御中主神(仮)

星の光のない宇宙。

形容するならそんな言葉になるような、無。

何も無い、ということが有る。

そんな、矛盾する光景。

何もないのに、なぜこの光景を認識できているのか?

———そんな疑問はすぐに解決された。


宇宙コレは、自分自身だ。

自分自身を認識できることも、いろいろと驚きだ。

それ以上に、平凡な生命体であったはずの我が身が、

この世界と同一化してしまって、自我を全く棄損していないことに驚く。

この世界自分自身のことは知識として何もかもが理解できるのに。

しばらく、その意識はフリーズしていた。

しかし、何も無いが有るその光景は、意外にも無性に寂しくて。

「星(の光)が欲しい」とダジャレのような想いを抱いた瞬間。

空間が螺旋を描き、爆発を起こした。

—熱い。

——眩しい。

———というか何も見えない。



宇宙の始まりは、時間と空間の始まりは、爆発であったという。

その名を何と言っただろうか。

そう、確か、ビッグバンと、言ったのだったか。


全力で現実から逃避した。

こうして、新しい宇宙が産声を上げた。

指数関数的に膨れ上がった宇宙は、38万年かけて冷却されていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る