天命刹歌 第2話 暇を持て余した神の遊び

世界を終わらせたと思ったら、自分が世界になっていた。

はてさて、これはどうしたものか。

明るくなった世界を見て、ひとりごちる。

38万年の時すらも、長いとは思えなくなってしまった。

もはや、人ではないのだ。

ちなみに、ダジャレで宇宙を生み出した記憶は心の奥底にそっと叩き込んだ。


38万年で長い時間をかけてエントロピーの法則されたその宇宙に降り立った。

ヒトガタでしかないその体は、髪が紫微、つまりは藤色になる。

ありえないファンタジックなビフォーアフターによる大変身だった。

当時鏡などないので桜花の鏡面で見たが。


……イケメンにはなれなかった。


ちなみに、たんぱく質が主成分な今の体ではバリア的な何かを張っている。

熱も衝撃も通さないが、有害にならない程度の光は通す。

桜花も林檎も私についてきた。

確かに真っ二つにしたはずの黄金の林檎は、なぜか一つにくっついていた。

持ってきた荷物もあるが、食料品に白カビが生えてきたので食べていない。

水は、塩をぶちまけて海水のようにしょっぱくなってしまった。

いや、食べても死なないし食べなくても死なないのだが。

少なくとも38万年ほど。


というか、現在時点においてこの世界とはすなわち私そのものであるから。

物を食べるということは共食いにしかならないのだ。


さて、結論を言おう。

———暇である。

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