天零刹歌・序章 Perfect Game Ground

天零刹歌 第1話 夕暮れと静寂

歌が、聞こえる。


瞬きの中に、永遠の中に、響き渡る歌が聞こえる。


きっと、この歌は——




「ッは!……一体、ここはどこだ」

目が覚めたら荒野だった。

持ち物も、着ている服も、おおよそ記憶にないものばかり。

「三日分くらいの食糧と水、一体なんなんだ」

荒れ果てた大地に見覚えなどあるはずもなく、

とにかく、この眩しい日輪の光から逃れるように、日陰を探して彷徨っていた。

歩きながら考えたことは、今ではよく覚えていない。

孤独や困惑を感じることすらも、頭は放棄してくれていた。


枯れていない木を見つけた時、すでに日は沈みかけていた。

自分たち以外の生物の気配がない。

限りなく静寂しずかな、その美しさは、いっそ神々しいとまで形容できる美しさだった。

夕日を楽しめるくらいの余裕は、どうにか取り戻していた。

「綺麗、か、いつ以来だったかな、こんな感情を抱いたのは」

日の沈む、丘の上。そんな時、そんな場所で。

こんな感情を抱くことすら、随分と久しぶりな気もする。

日が沈み切ったその時には、今日はここで眠りにつこう。

自然と、そう思った。

でも、現実は残酷だった。


夕日の向こうに、白い、白い線が見えた。

それは何だろうかと、目を凝らし、直後。


轟音が、その静寂を打ち砕いた。

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