天命刹歌 第5話 神産巣日神・高御産巣日神

高天原を創り上げ、天使との邂逅から六時間後半日

右手に握った白銀の刀、つまりは桜花。

その剥き出しの刀身を何とかしようと思い立った。

しかし、桜花の力はすべてのものに終わりをもたらす力。

作り上げた全ての鞘を爆発四散させたり完全消滅させたり、

つまりはことごとく失敗した。

とはいえ、この刀身をうっかりこの高天原の地面に落そうものなら、

その瞬間高天原がまるっと消滅しかねないので対策が急務なのだ。

「とはいえどうしたものかな」

「このカタナで消滅しない。つまり、終わりを迎えない物はないのでしょうか?」

天使がもっともなことせいろんを言うが、そんな簡単に見つかるなら苦労はしない。

左肩の林檎を見る。

記憶が確かならこれは真っ二つになってもはしなかった。

「これなら多分大丈夫だと思うけど」

林檎を手に取る。

とてもじゃないが鞘には長さが足りない。

そう、この林檎の力は全てのものに命という始まりを与える力。

「林檎、ですか?」

「そう、これなら」

黄金の林檎を一口齧る。

白い光が周囲を包む。


また一つ、契約は成った。


「え?なにこれ」

そう、黄金と白銀の双子が現れた。

神産巣日神カミムスヒノカミ

白銀の片割れが唱う。

高御産巣日神タカミムスビノカミ

黄金の片割れが詠う。

「「我ら、創造主との契約によって生まれ出でた依代」」

紡ぐ、一言一句同じその言葉を。

「「我らの未来は主と共に」」

自分なんかよりも遥かに神々しく輝く双子。


「どうしよう」

なんというか、急に騒がしくなっていく世界。

ファーストコンタクトから約半日の、セカンドコンタクト。

「ただ、私たちをお傍に置いてください」

「アレ君もそっち側!?」

こう、天使ファーストコンタクトは製作者にはわからない、

被造物同士でわかり合える何かによって瞬く間にシンクロしていた。


自分だけ世界じぶんに置いていかれるような気がした。

いやまあ、自分せかいに置いていかれるとは不思議な言い回しだが。

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