天命刹歌 第19話 陵墓

時は戻ってしばらく前。


「……ねえ、一体何をやる気?」

「うん、おかしなところ見つけたの」

「うん、不思議なところ見つけたの」

——なんで私がこの子たちの子守をしなければならないのか。

そんなことを考えながら、秋白緋葉は草原を歩く。


「キラキラしてるの」

「ピカピカひかるの」

金銀の双子、春双黄金と冬双白金は無邪気に笑う。


「この丘の向こう側」

「あの丘の向こう側」

「「未だに私たちを呼んでるの」」


「……私たちを、呼んでる?」


この世界には、草原しかない。

丘、というようになだらかな地面の凹凸はあるものの。

山もなければ、海も川も、存在しえない。

当然、生命が生存できる環境ではあるが、産まれる環境ではない。

唯一、地を覆う草原でさえも、素粒子レベルまで完璧にされたのハリボテ。

それに魂は宿らない。


命を注ぎ込まれて、魂の欠片を自己増殖させたならば、話は別だが。


「着いた」

「ここが目的地」


「……陵墓?」

半透明な墓のようにも見える。それ。

「圧倒的不自然」

そもそも、この高天原に自然なんてものはごく限られているのだが。

「圧倒的不思議」

丘の上からの眺望は幻想的である。

そう、少なくとも三人の好奇心を刺激する程度には。

「……近くまで行ってみる?」

「「賛成」」


「……あれは」

「扉」

「入口」

「何やっても明かない」

「何やっても開かない」


「うん?なんだろう、これ」

開閉用のセキュリティコンソールを弄ってみる。


本来ならば、所有者の魂を検知して開閉される時空を超えた扉。

実体を現したそれは、扉を開けた。

「あいた」

「アイタ」

「……開いた」


なぜか開いたその扉は。

所有者、橘悠斗の魂、血、肉を持つ者を招き入れた。

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