天命刹歌 第16話 天に降る雨

雨が


高天原に雲などない。

一酸化二水素いっさんかにすいそ。H2O。あるいはaquaアクアariaアリアwaterウォーター

つまり水は、この高天原ではしばらく後に新しく実装されるだった。


それがなぜか、降ってきた。

空に雨雲などないのに。

まあ、別に実装する予定があったから問題はないのだが。


さて、この高天原は明確に果てのある世界だ。

性質上概念も法則も存在しないものは現界にリソースが必要だ。

今、この世界のリソースの管理は自分が行っている。

雨を引き起こした記憶もなければ実装の用意すらしていない。

天使は維持と保守点検を行うだけで世界への干渉権限はかなり限定されている。


つまり、どこからかリソースが流れ込んでいる。

どこから?


と、そこまで思考した辺りで、天使が飛んできた。


……水の滴るいい天使だ。

濡羽ぬればは艶やかで、顔を伝い滴る雫は麗しい。


「大変です。創造主」

深刻そうに語る天使。


「出現しました」

……何が?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る