天零刹歌 第2話 喪失と出会い

轟音、その音を認識した瞬間、世界がした。


星が、落ちた。

恐らく、白い線だと思ったは、

流星の閃光だったのだろう。

その閃光は、見渡す限りの荒野を一瞬で駆け抜けた。

余波で吹き飛んだ体に付いた土を払いながら、

無様に転げ落ちた丘を登る。

この広い荒野で見つけた初めての生物は

———既に息絶えていた。

Rest in Peace.安らかに眠れ名前も知らない誰かさん」

植物とはいえ、祈りを捧げる。

祈りを終えたとき、日輪は、既に落ちきっていた。


さっきまでとは一変した、その荒野に踏み出す。

荒れ果てた大地の中の安らぎを、乾いた心に降る雫を

——永遠に失わせた怒りを胸に。

———を確認しなければ気が済まなかった。


日が落ちたとはいえ、しばらくならばまだ明るい。

青空、夕空、夜空の3つの空を同時に楽しむ余裕は、

その時の自分になかった。

吹き飛んだらしい大岩を通り越すこと、

二十を少し越えたとき、その下手人はそこにいた。

半径が大体100メートル位のクレーター。


———じきに人が来るのだろうか?

そんな淡い期待を抱かなかったといえば嘘になる。


かなりの時間、つまり日が暮れきって、

夕空が完全な夜空になっても。

赤熱したそのクレーターは、凄まじい光量を持っていた。

日が落ちかけた頃に、遠くからでも目に見える程度には。


赤くなっていない場所を慎重に歩きながら、

クレーターの中心に引き寄せられる。

幸いなことに、

履いている靴はかなりの耐熱性を持っているようだった。


クレーターの端からは、

土に埋もれてよく見えなかったその下手人は、

近づくにつれてその姿を鮮明にしていった。


「刀?え、日本刀?本物?」

そう、それは紛れもなく、日本人なら誰もが知っている———日本刀だった。

とはいえ、日常ではお目にかかれることなどなくなって久しいその緋色の姿は、この異常事態非日常の中ではやけに映えて


———周囲まわりの暑さなど忘れてそれに歩み寄った。


そう、それは運命さだめと称するに足りる。


「桜、花?」


その武器の名を、桜花おうかと呼ぶ。


その出会いは、偶然ではなく必然だったと、

この時はまだ、知る由もない。


桜の閃光ヒカリが辺りを包んだ。

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