天命刹歌 第4話 世界を終わらせた人間の名

世界を作ったと思ったら、天使の創造主になっていた。

わけがわからない。

いや、理屈の上ではわかるのだ。


「もう、一度、キミの名を教えてくれる?」

天之常立神あめのとこたちのかみ

そう呼ばれる存在です。と天使はその名を語った。

この高天原を維持、保全する為に生み出された、この世界そのもの。

それが彼女?であるのだという。


———恐らく、今の世界、つまり自分そのものが世界という原型。

それを元にして作り出されたこの世界の天使カミサマなのだ、この子は。


「ん?高天原?この世界の名が?」

「はい、ここは、世界の始まりと終わりを観測する場所」

まあそんなこと言われてもサッパリである。

名前を決めかねていた世界の名は、とりあえずこの高天原に決定した。


「……あの、私からも主に質問があるのですが、よろしいでしょうか?」

果てしなく申し訳なさそうに、限りなく丁寧な口調で、彼女は問うた。

自分はといえば、目で先を促す高等テクを久しぶりに発揮した。

「創造主、貴方のお名前をこの身にお聞かせください」

………名前、なまえ?Name?

控えめに言って、頭の中が白くなった。

いや、この思考をしているところが頭部に位置しているわけでもないのだけど。


混乱で一周廻って正気に戻った。

あーそうかー自己紹介してなかったかー。

どんな礼儀知らずだ、全く自分が嫌になるなーハハハ。……はあ、しにたい。

「えっと、悪かった、私の名は……」

ここで一旦止まる。

気付けば簡単なことであるが、今まで考えてこなかった。

いや、あえてそうしていたのかもしれなかった。


「———天之御中主神アメノミナカヌシノカミ、或いはこの世界そのもの、そして」

「主?」

たちばな、そう、橘 悠斗」


それが、世界を終わらせたの名前だった。


ちょうど、偽物つくりものの空の夜明けと同時。

暁の空に、その言葉は放たれていく。

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