天命刹歌 第21話 檸檬色の結晶

闇の中を進む一行。

淡い光がだんだんと明るくなっていく細い通路を、

その輝きに引き寄せられるように進んでいく。


「……結晶?」

「うわあ、きらきらだ」

「うわあ、ちかちかだ」

通路の終わり、その部屋は、姿を現した。


結晶、円柱、円錐と、多角柱、多角錐の柱達。

黄金、白銀、無色、輝虹、真紅、紺碧、深緑、漆黒、純白。

透き通っていながら、それでいて鮮やか。

どれも同じ色などない、同じ形などない。


時折、結晶の中を通過していく光の粒。

絶え間なく響き続ける、音の波。

その光景は、神秘を纏いながら、それより遥かに神々しい。


八百万の結晶が、満天の星空を支えていた。


「……いったい、何のために、こんなものを」


「そうですね、我が造物主は何を考えているのやら」


「ッ!誰!?」

振り返り叫ぶ緋葉。

「あ、声の人だ」

「あ、中の人だ」


「……知り合い?」

「ううん、しーらない」

「うん、声で呼ばれた」


「ええと、そう言えばあなたたちにも紹介していませんでしたね」

そう、彼女こそが、この場に3人を呼びだしたもの。

「私は、この大規模演算装置、ZEUSUの総合統括人工知能の片割れ」

ZEUSUが、自身の効率化のための自己改造の課程で、

自己判断機構と管理保守機構を求めたが故に、

所有者にも知らされていない自立管理プログラム。


「クリスタル・アーティサンダー、クリスとお呼びください」

檸檬色のワンピースに身を包んだその少女は、太陽のように微笑んだ。

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