天零刹歌 第3話 桜花色の契約

桜の閃光、その光がもたらした変化は劇的だった。

自身が埋まっている土を衝撃波と共に吹き飛ばし、浮き上がった刀身は、

その名が刻まれた剥き出しの茎を漆黒の柄で覆い、桜の形をした白鍔しらつばを形作った。

「なんだ、これ、何なんだよ、これは」

力なく呟きながら、呆然とその一部始終を眺める。

ゆっくりとその切先を自らに向ける時でさえ、只、ぼうっと見ているだけ。

だから、気を取り直した時にはもう、それは胸に食い込んでいた。


「あ、ああ」

血が一滴も滴り落ちずに刀身を滑り、鍔にその赤が混じっていく。

胸が、熱い。

浸み込むような熱さに、それは刺された時の痛みではないと気付かされる。

とろけるような心地よさに、ここは現実ではないのかもしれないと教えられる。

5つ目の鍔の花びらがちょうど桜色に混じり合った時、刀身は輝いた。

桜色、その色彩を脳が認識した時、自然とすべきことが頭に浮かんだ。

「天空、桜華」

夕焼けの比ではない輝きが、クレーターから空へ舞い上がる。


契約は、此処に成った。

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