第8回カクヨムWeb小説コンテスト 大賞受賞者インタビュー|尾八原ジュージ【ホラー部門】

12月1日から応募受付開始となった、第9回カクヨムWeb小説コンテスト
かつて、応募者の皆さまと同様にコンテストへ応募し、見事大賞に輝いた受賞者にインタビューを行いました。
大賞受賞者が語る創作のルーツや、作品を書き上げるうえでの創意工夫などをヒントに、小説執筆や書籍化への理解を深めていただけますと幸いです。

今回は、12月22日発売みんなこわい話が大すきの著者、尾八原ジュージさんにお話を伺います。

第8回カクヨムWeb小説コンテスト ホラー部門大賞
みんなこわい話が大すき(尾八原ジュージ)

kakuyomu.jp

──小説を書き始めた時期、きっかけについてお聞かせください。また、影響を受けた作品、参考になった本があれば教えてください。

 大学時代、友人数人とリレー小説をして遊び始めたのが最初……と思っていたのですが、最近高校時代の友人と話をしたとき、「高校の時すでに何か書いてた」という証言を得てしまいました。ですから自分が忘れているだけで、実はもっと古い体験が潜んでいるのかもしれません。
 影響を受けた作品はたくさんありますが、あえてホラージャンルでひとつ挙げるとすれば、実話怪談集の『新耳袋』(木原浩勝・中山市朗著)でしょうか。簡潔で読みやすい文章は今も目標とするもののひとつですし、「原因や因果が不明のままでも怪談は面白い」と気づかされたことも大きかったです。

──今回受賞した作品の最大の特徴・オリジナリティについてお聞かせください。また、ご自身では選考委員や読者に支持されたのはどんな点だと思いますか?

 視点人物や一人称・三人称の切り替えが多いところが、本作の大きな特徴ではないかと思います。これに関しては「自分が執筆に飽きないように」という理由でやっていたのですが、たまたまいい塩梅で情報を小出しにすることにもつながったようです。また、子どもがメインの視点人物になる章については、「子どもらしい」と褒めていただくことが何度もあり、それも本作の魅力ではないかと思っています。
 加えて、自分ではあまり意識していなかったのですが、本作をバディものとして楽しんでくださった方もおられるようでした。カクヨムコン8最終結果発表時の選評で「シリーズとして読んでみたい」とのお言葉をいただいたこともあり、それだけ愛着を持っていただけるようなキャラクターが生まれたことも、本作がご支持いただけた理由のひとつだと思っています。

──作中の登場人物やストーリー展開について、一番気に入っているポイントを教えてください。

 気に入っている点は多々あるのですが、やはり本作に関しては「十万字超の物語を初めて完結させられた」ということ自体に大きな価値を感じます。見切り発車で始めた連載でしたが、自分で〆切を設け、限られた時間の中で懸命に先の展開を考えつつ、オチをつけることができたという経験は得難いものでした。
 本作に関しては、とにかく完結させることが目標だったので、まず自分が執筆に飽きないように視点人物や文体を切り替えつつ、基本的には好きなことばかり書いていた気がします。「こういう怪異が好き!」「こういうキャラクターが好き!」という気持ちで書いた物語が、結果的に自分以外の方々にも楽しんでいただけるものになったということは、とても喜ばしいことです。

──受賞作の書籍化作業で印象に残っていることを教えてください。

 まず、編集さんや校正さんからのアドバイスやご指摘を受けて本文を修正していくうち、どんどん読みやすくなっていったことに感動しました。第三者、それもプロの視点からのご意見には有益なものが非常に多く、それを踏まえていくことでここまで改善されるのか、という驚きがありました。
 驚きといえば、初めてゲラを受け取ったときも衝撃を受けました。ぱっと見の感じがかなり書籍に近くなり、自分で書いたはずの文章がよそゆきの顔をしているように見えて、とても面白い体験でした。イラストのラフをいただいたときも、自分の頭の中にあったイメージを取り出されたようで感動しました――と、ひとつひとつ挙げていったらキリがありません。とにかくよい経験をたくさんさせていただきました。

──書籍版の見どころや、Web版との違いについて教えてください。

 すでにお答えした部分と重なるのですが、本文がかなり読みやすく、ストレスの少ないものになっていると思います。わかりにくい箇所には説明を足したり、余計なところは削ったりして、かなりブラッシュアップされました。また、元々本作にはプロットやしっかりした設定がなかったため、キャラクターの言動に矛盾が生じていたり、不自然なところがあったりしたのですが、それらをほぼ潰すことができたと思います。Web版をすでに読まれた方にもぜひお手にとっていただきたいです。

──Web上で小説を発表するということは、広く様々な人が自分の作品の読者になる可能性を秘めています。そんな中で、ご自身の作品を誰かに読んでもらうためにどのような工夫や努力を行いましたか?

 作品によって色んなPRの仕方があると思いますが、本作に限って言えば、まずは日刊連載のペースを崩さず、またなるべく同じ時間に更新するようにしたことが、継続して読んでくださる読者を得るために役立ったのではないかと思います。基本的には朝の七時すぎに更新するようにしていたのですが、通勤・通学中に読んでいるという話を伺うことが何度かありました。本作の完結後も何度かカクヨム上で日刊連載をしましたが、できるだけ同じ時間に更新するよう気をつけていました。
 カクヨムの自主企画や、X(旧Twitter)などのSNSもとても役に立ちました。特に自主企画は、レギュレーションによっては似た趣味趣向の方が集まりやすいのでおすすめです。自主企画のために書いた作品が、アピールしたい作品とはまったく関係のないものであっても、結果的には導線になることがあるかもしれません。

──これからカクヨムWeb小説コンテストに挑戦しようと思っている方、Web上で創作活動をしたい方へ向けて、作品の執筆や活動についてアドバイスやメッセージがあれば、ぜひお願いします。

 まずはあまり気負わず、気軽に始めてみるのがいいかと思います。特に「小説を書いてみたいけど、何を書けばいいのかわからない」という方は、カクヨムの自主企画等で興味のあるお題を探してみてはいかがでしょうか? お題について考えるうち、思いもよらない物語が生まれることがあるかもしれませんし、趣味が似ている方と交流が生まれるかもしれません。
 それと創作とは直接関係のない話ですみませんが、筋トレをおすすめします。小説の執筆等をしていると座っている時間が増えると思うのですが、腰や肩などを痛めてしまうとそれどころではないので……。私はインドア派で慢性的に運動不足なのですが、それでも一日十分程度、本当に簡単な筋トレを続けているだけで、肩こりやそれに伴う頭痛などが軽減され、執筆の効率も上がったと思います。もちろん個人差はあると思いますが、よければ無理のない範囲で試してみてください。
 ともあれ心身ともに無理することなく、創作活動をお楽しみください。

──ありがとうございました。


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