【映像化される作品って何が違うの?】カクヨムコン9「映画・映像化賞」選考部門インタビュー



2023/12/1から応募開始となる第9回カクヨムWeb小説コンテストには、Web小説から直接映像化を目指す「映画・映像化賞」を設置しています。

自分の書いた小説が映像になるなんて夢のよう!
でも、映像化にふさわしい作品ってどういうものなんだろう?

そんな皆さまの疑問を解消するべく、選考を行う映像企画制作部門がどのような作品を求めているか、さらに踏み込んだインタビューを実施しました。
映像化を目指す方はぜひ本記事のポイントを意識しながら作品を執筆してみてくださいね。
「映画・映像化賞」は、実写映画化/実写ドラマ化に相応しいと思われる作品が選出されます。「映画・映像化賞」での選考を希望する作品は「実写映像化希望」のタグをつけて是非アピールをお願いします。(※タグのついていない作品からも受賞作を選出する可能性があります)

映像企画制作部門インタビュー

ーーまずは映像企画制作部門の紹介と、カクヨムコンの選考に参加した背景を教えてください。

映像企画制作部門は、主に実写映画、配信ドラマ等の企画・制作をしております。企画から資金調達、スタッフィング、キャスティング、宣伝プロモーションなど劇場公開(配信開始)・二次利用までの全てを各プロデューサーがみています。

近年は小説・映像共にネットでの発表の場所も増え、多くの才能を持った人達の表現する機会が増えたと思います。時代を投影し人々を奮い立たせるような作品は、時代に合った「カクヨム」のような場にこそ集まっているのではないかと思い、参加させていただきました。

ーー選考では映像化を夢見て数多くの作品が集まってきます。映像プロデューサーの目を引くポイントはずばり何でしょうか?

まずは「小説の紹介文」を読みます。内容のキャッチーさなどはもちろん重要ですが、同時にそこから浮かび上がってくる「情熱」「絶対に読者を楽しませる」という意志も目を引くポイントの一つだと感じます。

ーータイトルやキャッチコピーだけでなく、熱のこもった紹介文に仕上げることも重要なのですね。
募集テーマは以下のように設定されています。特に注目したい応募部門があれば教えてください。

● 日本を舞台とした現代性のあるストーリー展開(異世界が舞台となる作品にも実写映像化の可能性はありますが、現代もののほうが実現可能性が高くなります)
● 実際のロケーション、生身の俳優による演技・アクション、音楽との組み合わせ等、実写映像化することで面白さや感動、迫力、恐ろしさといった要素が増幅される物語
● 「ラブ×●●」「ホラー×●●」(●●には、お金、スポーツ、タイムリミット、近未来、密室、サバイバルなど、既存のジャンルにとらわれない要素が入ります)等、新鮮な掛け合わせの物語
● 実話を元にした物語(ご自身の実体験や実際の出来事に着想を得た物語)


「ラブ×●●」「ホラー×●●」というテーマも設定させていただいていますが、「恋愛(ラブロマンス)部門」「ラブコメ(ライトノベル)部門」「ホラー部門」には今回も注目したいと思います。今という時代を感じられるような、新鮮な掛け合わせの物語に出会えることを期待します。

ーーテーマ設定についてもう少し詳しくお伺いしたいのですが、「実写映像化することで面白さや感動、迫力、恐ろしさといった要素が増幅される物語」をテーマに設定されています。具体的にどのようなシーンや描写で「実写映像化することで面白さや感動、迫力、恐ろしさといった要素が増幅されている」と感じますか? また、上記をテーマとして設定された狙いを教えてください。

例えば分かりやすいところでは、実在するロケーションが舞台となる作品は実際に現地で撮影されることで文字で読む以上の力を発揮するケースがあります。アクションシーンなども、生身の人間の体の躍動により迫力を表現することができるシーンです。音楽が題材になっている作品などは、実際に音を鳴らすことにより感動を増幅させることができる可能性があります。(反面、読者が文字から想像したものを超えるハードルもあるのですが)

トリッキーなものでは、ドラマの『24』は劇中の時間の流れを視聴者の過ごす現実の時間の流れと合わせることでリアルタイムで進行しているような緊迫感・臨場感を表現しており、時間の流れに縛られる映像ならではの効果を生み出していると思います。
ただ、そういった派手さのある要素だけでなく、例えば『リング』の貞子がテレビから出てくるシーンなどは、決して派手な描写ではないものの文字で読む以上に映像化されることで恐怖が増幅されるシーンであり、上記に挙げさせていただいたような事例以外にも「実写映像化することで増幅される可能性を秘めた要素」は多数眠っていると思います。

今回のカクヨムコンでは、皆さんが「この物語は実写映像化することでこの要素が増幅される!」と思う作品を是非拝読させていただけたらと思い、テーマとして設定させていただきました。

ーー小説にはなく、映像にはある要素をどのように生かせるか、イメージが湧くというのが重要そうですね。数多くの作品の中で映像化の決め手となる部分はどのようなところでしょうか?

映像化の決め手にはここでは語りきれないほどの様々な要素があり、総合的に見て判断されることにはなるのですが、「実写映像化されることで増幅される要素がある」ことは「映像化する意味がある」と判断されるための条件の一つだと思います。同時にそのことは、観客/視聴者が「映像化作品を見る理由」にもつながっていきます。

ーーほかには、「実話を元にした物語」というテーマも設定されています。具体的にどのような作品をイメージされているのでしょうか?

例えば映画では『フラガール』は常磐ハワイアンセンター創設にまつわる実話が元となっています。その他にも『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』『奇跡のリンゴ』『聖の青春』『抱きしめたい 真実の物語』『8年越しの花嫁 奇跡の実話』『ビリギャル』といった感動作は実話を元に映画化されています。感動路線でなくとも、実際の事件に着想を得た映画なども多数生まれています。
またドラマでも、放送中の『下剋上球児』にはモデルとなった実話がありますし、「お仕事もの」なども実際の体験が元になっているケースが多いかと思います。

ご自身の体験や身のまわりの出来事に着想を得た物語から、見聞きした感動的なニュース、史実に基づいたものまで幅広く発想いただき、あなたの知る「これは映画/ドラマになる!」物語を投稿いただけることに期待します。

ーー自分自身が体験したことでなくてもよいのですね。日々触れるたくさんの情報の中から様々な物語が生まれると思うとわくわくします!
前回のカクヨムコン8の総評では、『栄光の陸軍技術研究所』『邪祓師の腹痛さん』を映像化の可能性を感じる作品として挙げられていました。 この2作品は受賞にはあと一歩でしたが、どのようなポイントがプラスされると映像化に近づくのでしょうか?

『栄光の陸軍技術研究所』
◆講評
年齢の幅が大きい個性的なキャラクター同士の世代間のギャップでコメディの様相を呈しながらも、旧日本軍の秘密実験に関わるサスペンス的な展開で、発想のオリジナリティが際立っていました。10分しか若返ることができない設定も物語に推進力を与え、世界観としてもファンタジー要素に歴史物の側面や社会問題が内包されており、多角的な視点で描かれた秀作です。
『邪祓師の腹痛さん』
◆講評
映像が目に浮かぶ怖さを描けている点で突出しており、グロテスクさや生理的不快さのある表現もどこかスタイリッシュで、効果的な音と台詞の使い方も相まって魅力的でした。描写だけでなく、バディもの設定や登場人物のキャラクター配置、センスの良い台詞、発生する数々の事件のバリエーション等も含め、読み応えのある作品でした。


作品自体に何か欠けている要素があったというわけでは全くなく、映像化するにはその作品の良し悪しとはまた別の次元で様々な尺度から考慮する必要があり、映像化への諸条件を一度に満たすことはとても難しいことだと思っております。

例えば『栄光の陸軍技術研究所』はオリジナリティ溢れる発想をベースに様々な要素を多角的に盛り込んでいるのが作品の魅力ではありますが、一方で映像化する際にどの切り口を主軸として描けばベストなのか悩ましくもありました。

『邪祓師の腹痛さん』は目新しいホラー表現が鮮烈な作品ですが、小説の読み口としては良い方向に働いているグロテスクさや不快さを、商業性も担保しながらどのようなバランスで映像に落とし込むのかが難しい所ではあります。

上記もあくまで一側面に過ぎず、これらはむしろ映像化を検討する我々が解決すべき課題でもあります。
我々としては映像化の可能性を秘めた作品に出会えることは非常に嬉しいことですので、今回もたくさんの作品からそうした可能性を見つけ出せることを楽しみにしております。

ーー最後に、第9回カクヨムWeb小説コンテスト応募者へのメッセージをお願いします。

自分が本気で面白いと思って研ぎ澄ませたものは、必ず誰かの心に刺さります。生みの苦しみを乗り越えて、アウトプットしなければ永遠に出会えないままだった誰かに出会ってほしいと思います。もしかしたらその誰かは、我々かもしれません。


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