第6回カクヨムWeb小説コンテスト大賞受賞者インタビュー|久川航璃(マルコフ。)【恋愛部門】

賞金総額600万円、受賞者はKADOKAWAからの作家デビューが予定されている第7回カクヨムWeb小説コンテストが、今年も12月1日(水)から始まります。

そこで、かつて皆様と同じようにコンテストへ応募し、そして見事書籍化への道を歩んだ前回カクヨムコン大賞受賞者にインタビューを行いました。受賞者が語る創作のルーツや作品を作る上での創意工夫などをヒントに、小説執筆や作品発表への理解を深めていただけますと幸いです。

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第6回カクヨムWeb小説コンテスト 恋愛部門大賞
久川航璃(マルコフ。)
▼受賞作:拝啓見知らぬ旦那様、離婚していただきます
kakuyomu.jp

──小説を書き始めた時期、きっかけについてお聞かせください。また、影響を受けた作品、参考になった本があれば教えてください。

小説を書き始めた時期は小学3年生の時です。時期は覚えていますが、質問を見て、きっかけってなんだったかなと物凄く記憶を辿りました。正直、全く覚えていません。

ただ一時期書くことを10年ほどやめていて、また書き始めたのはカクヨムなどのネット小説を知ったからです。ずっと読み手として楽しませてもらっていたので、私も何か書き手さんたちに少しでも恩返しがしたくなってまた書き始めました。


影響を受けた作品は数多くありますが、しいて一つを上げるならアンデルセン作の『絵のない絵本』です。童話ですが、何歳になっても何度読み返しても新しい発見があります。読むたびにその時の私の環境や心情で受け取り方も変わります。物語は作者のメッセージが込められているものですが、読み手が多面的なとらえ方ができるところも面白さだと考えます。

いくつもの登場人物を配置して一つの作品として構成していく様がとにかく大好きです。バラバラに見えるのにどこかでつながっている、そのつながりを見つけると震えるほどに感動する仕掛け。『絵のない絵本』はそれがお月様なのですが、使い方が本当に美しいのです。そしてタイトルがもう素晴らしい。ひねりが効いてますよね。

いつかそんな秀逸な話を書きたいと熱望して、ずっと参考にしている本になります。


──今回受賞した作品の最大の特徴・オリジナリティについてお聞かせください。また、ご自身では選考委員や読者に支持されたのはどんな点だと思いますか?

むしろ支持された点を私が知りたいと切実に考えています。

オリジナリティかどうかはわかりませんが、この作品を書いてる間はずっと違和感がありました。ジャンル合ってるよね、相手役がなかなか出てこないまま主人公好き勝手してるけど大丈夫か、カクヨムで浮いてないよね、対象年齢高くない?などとずっと自問自答してました。

それがオリジナリティというのであればそうなのではないかと思います。

なんせ主人公のバイレッタさんが全く恋愛体質ではないので、なかなか恋愛脳になってくれないのですから。恋愛ジャンルにいるのに、どういうことだと頭を抱えていました。人に惚れる時ってどういうときなんだ、トキメキってなんだとずっと悶々としながら書いていたところが、オリジナリティにつながったのかもしれません。

そしてそんな手探り状態の恋愛が読者の方に伝わったのかと思います。受け入れてくれる読者さまの懐が広いなあと改めて実感しました。


──今回受賞した作品を今までに執筆した作品と比べてみたとき、意識して変えた点や、後から気づけば変わったなと思う部分はありますか?

小説は娯楽なので、できるだけストレスのない話を書きたいと思っています。読んでいる方が楽しくなるような話を提供していきたいと意識していました。でも今回のバイレッタさんは悩みが多くて、わりと葛藤している主人公になりました。現実問題をあっという間に解決できる強さがあるにも関わらず、自分の力だけではどうしようもないことも理不尽に押し付けられる問題もなんとか解決して乗り越えようとするそんな姿を描けたかなと思います。

この頃、コロナなどがあって私自身もストレスが相当にあったので、自分を慰めるためにもバイレッタさんには頑張ってもらいました。

大変だったのは、恋愛ジャンルなのに、うまく恋愛にならないところです。バイレッタさんは相手がいなくても一人で生きていける人なので、相手役のアナルドに惚れさせるのは本当に大変でした。これまでの作品の中で一番恋愛している作品になったところが一番大きな点かと考えます。

何より一番私らしさが出た作品になりました。作者を練り込んでキャラづくりをしてしまうのですが、あちこちで作者らしい性格の人が好き勝手してました。創作するとカラーがでると思いますが、自分だからこそと思えるようなキャラやストーリーが出来上がっているなと感じました。


──作中の登場人物やストーリー展開について、一番気に入っているポイントを教えてください。

作中の一番のお気に入りはなんといっても主人公のバイレッタさんです。美人で悪評なんて気にもしない仕事もできる完璧さんですが、男嫌いで初心なところが本当に可愛らしい。自分でいうのもなんですが、作者はとにかくそんな彼女にメロメロです。ギャップ萌えって大事ですよね!

基本的に言葉遊びをするのが好きなので、ポンポン言い返してくれるバイレッタさんが色んな人と会話をしてくれるのはとても楽しかったです。義父のワイナルドと口喧嘩しているときは一番彼女が生き生きしていたのではないかと。相手役のアナルドを差し置いて物凄い量の会話をしているので、序盤からアナルドに嫉妬されるのも納得だなと苦笑してしまうくらいには暴走させてました。

そして、バイレッタさんがアナルドに心を込めて大嫌いだと言うシーンが一番好きです。自分を弱くしてしまう、虚勢を張ってもどうしても勝てない相手、そんな相手に意地っ張りな彼女は大嫌いだと言う。彼女の天邪鬼っぷりが遺憾なく発揮されている、そんな彼女の心情をすべて読んで納得するアナルドの姿が、この話の全てだと思います。そういう物語を象徴するようなシーンを書けたことが嬉しかったです。


──Web上で小説を発表するということは、広く様々な人が自分の作品の読者になる可能性を秘めています。そんななかで、自分の作品を誰かに読んでもらうためにどのような工夫や努力を行いましたか?

書き始めた頃はあまりPV数が伸びなくて、色々と悩んでいた時もありました。投稿時間を変えたり、読みやすい文章を心がけたりと工夫をしましたが、あまり効果は感じませんでしたね。そのうち今読んでくれている人に向けて続けることが責任だ、途中で挫折しないぞと心がけたような気がします。時折、コメントを寄せてくれる方がいて、その方たちが色々と疑問をぶつけてくださるので、答えようと文章を変えたり構成を変えたり登場人物を増やしたりと試行錯誤しました。こういう話を読みたいと教えてくれたりもするので、期待に応えられるように頑張りました。それが私なりの工夫と努力です。

読まれるようになってからはどんどんとPV数も増えました。勝手に増えていくので怖いくらいでした。ですので、工夫や努力と言われるとピンとこないし、効果的なのがどの方法かむしろ私が教えて欲しいなあと思います。

ありきたりではありますが、目に留まるようなタイトルにするとか、キャッチーな言葉を選ぶとか、あらすじを工夫するとか、読みやすい文章を心がけるとか。そういう工夫や努力は書いている人は皆、すでにしているかと思われます。

面白い話を書けば読んでもらえるのは当然ですが、その面白い話をどう書けばいいのか本当に謎です。そして今もわかりません。

たぶん、誰かに読んでもらえるきっかけは本当にささいなことだと思います。その一瞬に刺さるような何かを作品に込められると読んでもらえる作品になるのかなあと考えています。


──これからカクヨムWeb小説コンテストに挑戦しようと思っている方、Web上で創作活動をしたい方へ向けて、作品の執筆や活動についてアドバイスやメッセージがあれば、ぜひお願いします。

なんと私にはおこがましい質問。そしてこれに回答する時の気恥しさよ……。

気を取り直して改めまして、小説コンテストに挑戦しようと思っている方も、何か作品を執筆したいと考えている方も、とにかく書きましょう。というか、書いて欲しいです。

自分はこういうふうに思ってる、こういうことが言いたいんだ、好きなんだ、書きたいことはなんでもいいと思います。

とにかく書いて発信することが第一歩。心の中で考えていても伝わりませんものね。

私はとにかく本というか文章を読むのが好きなので、皆様の作品が読めるととても嬉しいのです。web小説にたくさんの話があってまだまだ読んでいない話があるというだけでとてもワクワクします。一生かかっても読み切れないとは思いますが、読みたいと常に望んでいますので。

書き手の皆さまに、書いてくださいよろしくお願いしますと拝みたいですね。


──ありがとうございました。


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久川航璃(マルコフ。)さんが第6回カクヨムWeb小説コンテストで恋愛部門大賞を受賞された
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