第3回カクヨムWeb小説コンテスト大賞受賞者インタビュー|原田まりる【キャラクター文芸部門】

賞金総額600万円、受賞者はKADOKAWAからの作家デビューを確約する第4回カクヨムWeb小説コンテストを、今年も12月1日より開催します。

そこで、かつて皆様と同じようにコンテストへ応募し、そして見事書籍化への道を歩んだ歴代のカクヨムコン受賞者にインタビューを行いました。創作のルーツや作品を作る上での創意工夫、そして受賞後の変化などを語っていただいた受賞者の言葉をヒントに、小説執筆や作品発表についての理解を深めていただけますと幸いです。



第3回カクヨムWeb小説コンテスト キャラクター文芸部門大賞
原田まりる
▼受賞作:アラフォーリーマンのシンデレラ転生(受賞時タイトル:アラフォー社畜の美少女生活)
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──小説を書き始めたきっかけについてお聞かせください。また、影響を受けた作品、参考になった本があれば教えてください。

文学では三島由紀夫が一番好きですが、この作品においては「冴えない彼女の育てかた」とか「To LOVEる—とらぶる—」のような、女の子キャラがひたすら可愛いアニメの影響のほうが大きいと思います。
執筆中は内田真礼さんの「モラトリアムダンスフロア」とか花澤香菜さんの「リカバーデコレーション」といった可愛い曲を聴きながら執筆していました。

小説を書き始めたきっかけは……なんでしょう。文章が一番思ったことを的確に表現できるから、ですかね。

──受賞作についてお聞きします。本作の最大の特徴・オリジナリティはどこにありますか? また、ご自身では選考委員や読者に支持されたのはどういった点だと考えてらっしゃいますか?

主人公の長束(美少女アイドルに転生した元社畜のおっさん)のリアルな心理描写&自身のフェチズムでしょうか。例えば「ブラとパンツをどうたたむのが正式な方法かわからない」とか「急いで浴槽から上がった時、足の付け根〜ふとももあたりに何も当たらないという違和感を覚えた」など、男性視点での美少女生活をリアルに描きました!
まぁ、ほぼ下ネタになってしまいましたけど(笑)

あとはこの作品のキャッチコピーでもある「俺かわいい」マインドを大切にしました。
街を歩けば人から視線を送られて、人を待てばスカウトされ、どこにいっても可愛い可愛いとチヤホヤされる美少女気分を男性読者さんに味わってもらいたい、癒されて欲しいという私の(謎の)フェチズムをぶちこんでいます!


▲2018年12月5日発売・書籍版『アラフォーリーマンのシンデレラ転生』(著/原田まりる イラスト/森倉円)
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言ってみれば、「男子たるものカッコよくあるべし」という男性性からの解放です。「男子が可愛くてもいいんじゃないかな、むしろ可愛くあってほしい!」という切実な想いを詰め込みました。

──今回受賞した作品を今までに執筆した作品と比べてみたとき、意識して変えた点や、後から気づけば変わったなと思う部分はありますか?

哲学入門書などを執筆していることもあり、いままではどちらかといえば真面目な作品を書くことが多かったのですが、今作品は80%が下ネタという真逆の作風となります。
けれども残り20%に、アイドルの子たちが持つ一生懸命さだったりピュアさを垣間見れるシーンを詰め込んだつもりです。

今回の作品ではそういった形で物語に緩急をつけたり、あえて随所に「こうなって欲しくない」というストレスある展開を散りばめた構成にしてみました。
「こういう展開になったら、伏線回収するまでを書くのがちょっと面倒だな」という気持ちから逃げないようにした、という表現が近いかもしれません。

面倒くさい展開をいかに退屈の無い刺激的なイベントへと作り変えるか、という点を工夫した作品です。

──Web上で小説を発表するということは、広く様々な人が自分の作品の読者になる可能性を秘めています。そんななかで、自分の作品を誰かに読んでもらうためにどのような工夫や努力を行いましたか?

出来るだけ毎日更新することと、作品のキャッチーさ……ですかね。
あとは一話一話に必ず引きをつくることは非常に意識しました。「えええ! 次回どうなっちゃうの!?」と思ってもらえるような引きを意識しすぎて「ヤバイ、今後の展開どうしよ……」と頭を抱えてたとしても、次の話を書くときにはまた最後に引きのあるシーンを入れるように心がけていました。
「起承転結」で各話が終わるのではなく、「起承転」で次回へ続くという構成ですね。

また今回は「ある日突然女性になってしまった男性」を主人公に書きましたが、意外とSNSなどでは女性から「面白いです!」というお声も多く頂いたので、女性でも可愛い女性キャラクターが出てくる作品を好きになってくれるんだな、という発見がありました。
これはただかわいい女の子というだけでなく、例えば性格や行動に共感できるような女性にも好かれるキャラクターをつくることができた、という部分がポイントかもしれないですね。

──好きなキャラやストーリー展開について、こんな要素があったら読んでみたい!というポイントはありますか? また、それは今回の受賞作に反映されていますか?

好きなキャラは、男性キャラなら無邪気バカで可愛いキャラ&ストイックで周りに弱音を吐けないキャラですね! 女性キャラだと、常にマイペースなキャラ&Sっぽいクールなキャラが好きです!

読んでみたい作品は「出来る限りご都合主義じゃない作品」でしょうか。例えばフィクションなら普通優勝すべき大会なのに負けてしまうとか、メインキャラのはずがよくわからない理由でいきなり死ぬとか、読者の予想を覆すリアリティのある展開には胸打たれますし、自分でも読んでみたいです。

受賞作にそれが入っているかはわかりませんが「アイドルは薄給なのでお金がない」というリアルな設定と「『ファンの人ってキモくないの?』と理解のない人に言われがちだが、実際は『マジで応援してくれてありがたい』としか思わない」というかつて自分が感じていた想いなど、ある種のアイドルあるあるみたいなものは入れました。

──これからカクヨムWeb小説コンテストに挑戦しようと思っている方、Web上で創作活動をしたい方へ向けて、作品の執筆や活動についてアドバイスがあれば、ぜひお願いします。

私もまだ新人なので偉そうなことは言えませんが、綺麗な作品にまとめよう! と考えすぎなくてもOKだと思います!
面白さにはいろんな種類がありますし、正解があるものでもありません。だからこそ「自分が今一番面白いと思うこと」を遠慮なく表現するのがベストなのではないでしょうか!

小説は箱庭みたいなものだと思うので、自分の好きにコーディネートしてみてください!

──ありがとうございました。


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