交差する思いの彼方

高安真悠は、いつも誰かの“代わり”だった。
好きになった相手は、みんな決まって音無妃芽を選ぶ。
妃芽は、学校のマドンナ。
可愛くて、モテて、優しくて――でも時々、彼女の無意識は誰かを傷つける。

部活は吹奏楽部。
真悠のそばには、いつも親友の竹井華や早坂裕香。
でも、笑顔の裏で揺れる感情は、誰にも言えなかった。
誰とどう関わっても、“選ばれない自分”を思い知るばかりだった。
だけど――
“交差する思い”の先に、本当の気持ちが少しずつ輪郭を持ちはじめる。
友情と恋のあいだ。
諦めと希望のあいだ。
真悠の高校最後の一年が、静かに、そして確かに動き始める。