第3話
涙狩の連中に涙を狩られまいと、カイティアと、手を繋いで歩いています。
目指すは、二人静かに暮らせるところ。
「ルイ…大丈夫?」
「む…。やむををえん。」
ルイティア達は、旅の途中、涙狩りの連中に襲われてしまいました。
涙狩りの連中は、ルイティアの胸ぐらを掴み、無理矢理涙を搾り取った。
その、ルイティアの流した涙は宝石に変わり、持っていかれてしまいました。
なんて……なんて……狡猾かつ残酷な行為。
涙狩りの連中を許す事は難しいです。
和解すら永久に難しいでしょう。
「許せませんわ…涙狩りの頭族…私がついていながも…私は、涙いているだけで何もできない…こんな悲しい…辛い………。」
「カイは何も。むしろ、共に居てくれて有難い。」
カイは、心境をキュウッ…と締め付けられながらもルイの全てに心を鷲掴みにされている自分を感じた。
ルイが好き。
カイは、頬を火照らせ、歩幅を早め、ルイに手を惹かれて行った…。
それにしても、『涙狩り』の連中とはいったい『何物』なのだろうか………。
今や遠くはない廻り合わせが、例の男女である。
マスカとレイド。
です…。
-中央聖都市マイヴーム-
街並みは色鮮やかで賑わっています。
たくさんの人達が行き交いし明るく健やかな空気に包まれている。
キラキラ、キラキラ、輝いています。
ルイティアは何かを探し始めました。
「ここはこの世界観の中央区だ。武装を集める。カイ、おまえはそこで待っているんだ。いいか、待っているんだぞ。」
「武装道具って…何?」
「なあに。新しい剣だ。何も心配する事は無い。」
ルイは、そっと…カイシェルの頬を手の項で撫で、人中の霧に消えた。
「……………あら?」
視界に収まる範囲にその人は居た、その人は弓を地面に差し、両手で膝を抱えて顔を下にしている。
何かを⦅待っている⦆様な………
「どうしました…?」
「フッ…久しいね…カイシェル」
カイは反射的に護衛用のナイフを手に取り身構えるが、相手の動作も手早い、ガシッ…と、腕を掴まれた。
「さぁ!!カイシェル今度こそ家に帰るのです…!!」
高らかな美声が響き渡る。その真澄の瞳は桜色に輝き全体的に真っ白だ。長髪のアルビノ紙をリボンで1つに束ねている。服装はエレガント。レースが似合う、そして………
天にも浸かりそうな、その、高価な弓。
今にもカイシェルを撃ち抜こうと。
その弓先には眠り粉が染み込まれた金属の切っ先だ。
「帰りますよカイシェル!!」
「…ア、アナタは!」
「貴様かあの時の。」
何処からともなくルイティアの声が聞こえてきました。
「!?何処だ。」
「背後だ。」
ルイティアは後ろ首に切っ先を身構えた、一筋の血が流れ落ちる。パタパタ…っと血が地面に着地した時、カイシェルがハッと目が覚めた。
「…!ルイ」
「カイシェル。なんだその手は。」
手を取り合う様かに見えた弓士とカイシェル。ルイの蟀谷に亀裂を入れるとは、この美声高らかな真っ白な男、何物か。
…更に言うと、カイシェルの手は気づいたら謎のこの弓士の手を取り合っていた。
「とりあえず弓士よ落ち着け、話を聞こう。」
「なんです貴様は!?貴様諄いですよ!!何故その賢剛なオーラ!?ウザイですよ!!」
そちらが煩いが。
とても高らかに響く美声も、ここまで高いとただただ煩いとしか。兎に角。
「……亀裂とはこうして切れる。」
「う、うわあ…!!?」
ルイティアは一瞬にして、くるりとカイシェルの前に回ると、剣をグシュッと捩じ込ませた。
痛い。
「ッ、やったなあ!!…この賢剛男!!……覚えていたまへチックショーーーウ……!!」
「去れ。」
「そっちがなあ!!……うわあ!!?」
と、去り際にズッコケながらも、去って行く、弓士であった。
名前は………?
「僕の名前はシュゴカラだからな…!!忘れたら射貫くからな特にカイシェル!!」
「壁にぶつかるなよ。」
「うわあっ!!」
美貌溢れるシュゴカラと伝う青年は綺麗に去って行きました。
また壁にぶつかりに来るだろう。
ルイティアと伝う険しい壁の向こう側にカイシェルと伝う籠り貝が守られているねだから。
「ルイティア、その、あの………。」
「アレは、フィアンセか。」
剣を、ガシャン…と、柄に帰し、世界の後ろのカイシェルに横目で見たルイティア。まぁ、少々、⦅聞いとらんぞ⦆と、言いたいところだが。
しかし、そんなことはどうでも良いのだ。
カイシェルが自分の殻に籠っていてくれていれば。
そう。今は、まだ、………だ。
「ルイ、えーと…あ、ありがとう。」
「何がだ。」
ルイティアは集めた武装道具を片っ端から抱えて中央聖都市マイブームを歩き始めた。
カイシェルは、淋しそうだ。
「ルイ…。」
『ごめんなさい、ルイ。私こんなで…。…あら?』
首元に⦅ネックレス⦆ が…。
「ルイ…!」
「行くぞ。」
こっちに来んかと、カイを呼ぶ、鍵枷剣士ルイティア。
嬉しくてーーー
嬉しくてーーー
もどかしくて
キュンがとまらなくって……… !
「…はい !」
カイシェルはルイティアの腕を掴み、しあわせそうに並んで待ち並木を歩くのでした。
新しい、ふたりの、巣箱を、
探して………。
-終わり-
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