第13話




―棘と蔦の薔薇園湖―




目が覚めてしまった――――――………


月夜の真夜中―――――――――………


水音か――――――――――――………






「…?」


静粛さの闇の中に光が放つ空は星の夜空に白のスパッタリングを描く。

今にもこぼれ落ちそうな涙の様だ―――――……


って、いつのまにかあの子がいなくなってるぞ。


また勝手に歩いて、危なっかしい娘っ子め……


重い腰をあげて、包帯を巻いた腕を抑えて探す……


壊れた金属鎧は脱ぎ捨てタンク一枚にショールを巻いた姿だが、まぁ新しい武装アイテムは旅先で揃えると良い……。当分シュゴカラも追っては来ないだろうし…で…あの娘はどこへ行ったまったく……ふぅ。


そんなルイティアは腕を組み鬼構えの面。

あ―――っ、たく。カイシェルが居ない。

! 居た。




「え?ルイ………?」


「…っな、なにを !?」


ルイが目撃してしまった。艶やかなる宵闇に溶ける男女の二人を―――――――――。







「―――――――――――――…帰る。」

「ちょっ、…ちょっとルイ、まってぇ…!」

「うるさい大馬鹿野郎者が。」

「や…野郎とは失礼じゃないのよ…っう、うぅ……ぅ。私…女の子なのに……うぅ…」

「おぁ、む、むぅ。…す、すまぬ ! 泣くことはなかろうがっ…!?」

「堅物……何を焦っているのですか……っ」

「なっ。カイ貴様のその言葉がユーモラスに聞こえてならんッ…! け・し・か・ら・ん…ッ!!!」


ドカァッ


「ぐほぁ…!」


「きゃあああルイ… !? 待って 待って ! ちょっと、キィちゃん落ち着いて ! 」



『キィちゃん』…だと…?


ルイは立ち上がった。


「そうか。貴様キィちゃんと申す…。不束者が世話焼けたな…………恩に切る!!!」


ザシュッ!!


大剣を一直線に上から下ろした。

待て………。


「ピキューイ!!」


ボムッ


「!?…………小動物だと。」


キィちゃんと申す人型は、白い煙と共に弾けて消えた。こっちが本当の正体。キィちゃんは新種のペット、小動物、属に言うモンスターであった。

それはそれは、可愛らしい姿のモッフモッフである。

………何か問題でもと、カイシェルがうるうるとした瞳で訴える。

私はこの子と湖の浴に浸かって、体を癒していたのよ。

もうっ…まったくアナタって人は本当に堅物です………!







…ぎゅ…






「…………誤解の次は、なんです懺悔ですか?」

「無念。」


己のはやとちりに参った。

しかし、このキィちゃんとやら、見掛けは可愛いがなんだか先程から俺の頭をガムガム噛みついてくるのは気のせいだろうか。

まぁ、いい………やはり、カイの温度はあたたかい。


そう

包んだり、包まれたり

なんだかんだこの腕の中が一番

安心してあたたかいのでした……。





「…初な。」


「…え、ルイは早く、私が20歳になるまで待てるの………私………もう、雛鳥の様に幼く…あ…ありません………。」


湖の真南に立ち、星の逆光を浴びる、髪の毛を裂いて露になとたその背中はキレイで。






逆光


「…………。」

「……うん。」


順番違いだらけの、この、ありさまよ


そんな、瞬間瞬間¨今¨を大切にしよう


殻子守りの様なふたりは一滴頬を伝うと


親貝が珠の子を守るように


鍵と伝うキィを、掛けて


たいせつにしまいこみましたとさ。


……………宝石の涙と伝う宝物を…………







終わり








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