第3話 熱
「・・・頭痛い」
多分、昨日の弊害出てる。声も少しガラガラだし風邪引いたかも。
「お坊ちゃま、おきておりますか」
「おはよ、じいや」
「声が枯れておりますな、顔も赤いですし風邪を引いたのですか?」
「うん・・・」
「なら今日一日は部屋で安静にしていてください。喉が枯れてる他に何かありますか?」
「頭も痛いし、熱もあると思う」
「では医者も呼びましょう。食欲はありますか?」
「ある、と思う」
「分かりました、シェフに体にいいものを作って持って来てもらうよう伝えておきます」
「ありがと」
あー記憶を思い出した後ははなんとか動けてたけど、寝たら一気に疲れが出た感じか。身体だるいなぁ、ご飯食べたらもう一眠りするか。
シェフが持って来たパン粥を食べながらこれからのことを考えた。
リオンのポテンシャルはどれを取ってもかなり高い。頭もいいし魔法の才能も武芸の才能も持っている。
確か小説のワンシーンで槍を振り回してたとかあったよな。ゲーム版のボス戦では剣しか使ってなかったけど。俺TUEEEEは解釈違いだけどどうせなら色んな武器使ってみたいな、男のロマンってやつ。
あーでも、使うならやっぱ剣と魔法だよな。リオンのメイン武器だし。
あと、ずっと使ってみたあと思ってたし弓使ってみたいな。ほら、モンスターの狩猟ゲームでもボウガンあったし、弓道とかかっこいいって思ってたから憧れがある。
「リオンお坊ちゃま、医者を連れて来ました」
「ありがとう」
これまたおじいちゃんのお医者さんに診察される。そのとき、黄緑色の紋様や謎の言語で書かれた魔法陣がお医者さんの手から出てきた。初、生魔法!へぇ、やっぱアニメで見たのと同じだ。属性ごとに色が変わるのは知ってたけど回復系統だと魔法陣は黄緑か。主人公は白と黄色の混ざった、何色っていうかわからないけどそんな感じの色だったからちゃんと見るのは初めてだなぁ。
「疲れが溜まっているようですな、1日寝ていればすぐに治ります。痛いところなどありますか?」
「頭と喉が少し」
「では痛みに効く薬もお出しします。ここで調合してしまうので少しお待ちくだされ」
お医者さんはそう言ってカバンの中から草や木の実、後は何かの錠剤みたいなのを取り出した。
「・・・」
「おや、気になるのですか?」
「うん、あれって薬?」
「これは薬の材料になります。この錠剤は元々別の薬なのですがこれを砕いて薬草に混ぜ、生薬にします」
「・・・医者、俺が自分で薬草の効果を知れば自分で薬を作ってもいいのか?」
「薬について興味がおありで?」
「多少はな」
いや、普通に現代のと全然違うから興味がある。それに、アニメとかである薬師がこんな薬草とかを使って薬作ってたから!やっぱ最近のファンタジーの王道になりつつある医師や薬師みたいな医療系主人公もいいよなぁ。
「それに、薬は毒にもなるし毒は薬にもなると本で読んだことがある。自分で薬のことや毒のことを知っていれば暗殺の心配もないからな」
「リオンお坊ちゃま・・・」
「まだ幼いのに聡明な方だ、もしよろしければ薬草や毒草について書かれている本を今度お持ちしましょうか?」
「それは助かる、感謝するぞ医者」
リオンの言動をなるべく意識しながら感謝を伝える。もしかしたら弓を使う時に矢に毒を塗ったりとか・・・いいね、頭痛いのに思ったより有用性のあることを思い付く。
そんなことを考えていると医者が薬をすり鉢の中に入れてゴリゴリと擦り始めた。しばらくして、泥みたいになると医者がすり鉢に手をかざすと再び黄緑色の魔法陣が出てきた。すると泥状の薬は粉末状になった。医者は薬を理科の授業で使うような名前の忘れた正方形の紙に移し、俺に差し出してくる。
「粉薬です、一気に水と一緒に飲んでください」
「あ、ああ・・・」
色的に完全に苦いよなぁ。粉薬って口内にまとわりつく。どうせなら錠剤が良かった・・・そんなことを思いながら粉薬を受け取って水と一緒に飲み込む。
「にがぁい・・・」
「薬が苦いのは当たり前ですからな」
「薬が飲みやすい方法があればいいのだが」
現代にある「おく◯り飲めたね」とかいうゼリーがあれば良かったのに。口の中の苦さを水で飲み込んで横になる。
「寝る、明日は通常通りで頼む」
「分かりました、ゆっくりお休みください」
俺は目を閉じて寝ようとした。部屋から人の気配が無くなる。少し、窓の隙間から入ってくる外の冷気を感じる。
リオンは、こんな冷たい大地で生まれ育ったのか。
「寒・・・」
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