第26話 お茶会
「あら、リオン様ではないですか?本日はお一人ですか?」
「フラン王女殿下、本日はアラン殿下に呼ばれて来たのですが本人が見当たらず彷徨っていたところです」
学園国家ノアへの入学試験の準備中だった俺は突然アランに呼び出されて嫌々城に来たのはいいもののメイドに案内されず、城を彷徨いながらアランを探していた途中でフランに出会った。なんで毎回遭遇してるんだ、条件違反ではないから俺からはなんとも言えない。
「兄様ならちょっと前に城下町に行きましたが・・・入れ違いのようですね?」
「アイツ絶対忘れてるだろ・・・このまま帰ってもな・・・」
城下町に寄ったら寄ったでアランと遭遇しそうだし、帰るには何もせずにとなると勿体無い気がする。
「あの、リオン様が良ければですがお兄様が帰ってくるまで私とお茶会をしませんか?」
「お茶会・・・?」
「はい、私たち婚約者ですし、そろそろお互いのことを知っていったほうがいいかと」
「フラン王女殿下、俺らは婚約者という肩書きであって別に結婚するというわけじゃ」
「ダメ、ですか?」
「うっ」
リオンにも最近そんな風に甘えられるからフランにやられても効く!俺、というかリオンも年下に弱いのか?ついつい甘やかしてしまう。俺はため息を少しだけついたが決心して伝える。
「分かりました、フラン王女殿下。お茶会しましょうか」
「本当ですか!ではこちらにいらしてください!」
フランは花が咲いた様に思わせる満面の笑みをして俺の手を掴む。本人は無意識なのかそのまま手を掴んで先を歩く。楽しそうに今日のお茶とお菓子は、と話すフランに連れられて庭園のガゼボに来た。そこにはすでにお茶とお菓子が用意されている。
「リオン様、ここでお茶しましょ、う・・・」
「フラン殿下?どうなさいましたか?」
「あ、私ったら手を掴んだまま。ご、ごめんなさい」
「手を掴まれたくらい気にしませんよ」
「いえ、その、はしたないことをしてしまいました」
赤面してかなり照れてるフランを可愛いと思ってしまった。なんで好みドンピシャなんだよ!俺はなるべく平然を装いながら返事をする。
「えっと、お茶会!しましょうか!」
「そうですね」
向かいに座るがお互い話が始まらない。俺が口を開こうとするとフランが先に口を開いた。
「り、リオン様は私のことどう思っていますか?」
「フラン王女殿下のことをですか?」
「はい、婚約のことは無理やり結んだようなものですしつい先日初めて顔を合わせたので気になっていたんです」
「どう思ってるか・・・随分と強引な姫様だと思ってました」
「そ、そうですよね…」
「婚約が嫌で嫌がらせ半分で無理難題な条件を出したのにそれに対して受けて立つと伝えられたとき、面白い人だなと思いましたよ。姫様ならもっと軟弱だと思いましたがまさか受けて立つとは思いませんでしたから」
「そうだったんですか?」
「今でもあれは衝撃的でした。ウチに仕えてるメイドにその条件を言っていたら耐えれる気がしないと言ってましたからね。実際に会うまでもっと勝ち気な女性かと思っていたんですが予想とかけ離れていましたし、ずいぶんと可愛らしい方だとも思いました」
「か、可愛らしい!?本当に言ってるんですか?」
「俺は王族に対して嘘なんてつきませんよ」
本心を答えるとフランは赤くなってうつむいてしまった。可愛いとも思ってるし好みであるのも本当だし、もうお嫁さんにしてもいいんじゃないか考えてるくらいだ。いや、決めるのは早いな。それを言うとめんどくさいことになる人間が二人ほどいる。もう少し後に決めよう。後が本気で怖いし悪寒を感じる…。
「ほ、本当にそう思っているのですか…?」
「思ってますけど、なにか問題でもありましたか?」
「えっと、リオン様にそう言われるなんて嬉しいです…」
ああああああああああ可愛すぎるンゴ!!!!!原作に出てこないからって軽くあしらった昔の俺を殴りたい!戻れるならはいよろこんで、って言ってたのに!選択肢をミスった!どうしてこういうときばかり俺はぁぁぁぁぁ!
少しやけになって用意されていたクッキーを頬張る。バターの味が口の中に広がって美味しい、ステンドグラスクッキーも美味しいな。さすが王族が食べるだけのものだ、素材から美味いんだろうな。
「気に入りましたか?」
「はい、とても美味しいです。弟に食べさせたいんですけどどこの店のものですか?」
「城下町にある菓子屋のものですけど、弟様がいるんでしたっけ」
「いますね、テオドールというんですが二つ年が離れていて魔法の腕は俺よりも上なんです」
「なら私と同い年です!仲良く出来たらいいんですが」
「きっと仲良くなれますよ、テオはいい子なのでとても優しいですから。もし王女殿下の身に何かあればすぐに対処してくれるでしょうし。学院に入学したらテオに声をかけてみてください」
「ありがとうございますリオン様!学院ですか…リオン様と姿をたくさん見れるので嬉しいです」
あ、俺は学院と聞いて思い出した。俺は学院には行かないことを伝えるとフランはあからさまに悲しそうな顔をした。その顔は俺の良心が痛む!やめてくれ!こっちも泣きそうだよ。
「そうでしたか…少し、寂しいです」
「帰国できるタイミングがあれば必ず帰ってきますので。もし、フラン王女殿下が俺になにか共有したいことや些細なことでも共有したいというなら手紙を送ってください。返事を出しますから」
「いいのですか!?」
「婚約者ですし、それにフラン王女殿下のことをもっと知りたくなったので」
「本当ですか?嬉しいです」
そうして俺とフランは日が傾き始めたことまで楽しくお茶をした。
バカ殿下はというと、城下町で遊び呆けて俺のことを完全に忘れていたとのこと。本当にふざけるなと思い、しばらく城に来てくれという手紙は無視することにした。父上には行ったほうがいいぞと言われたが知らん。俺はそんなやつの相手をするよりも鍛錬して死なないようにするんだよ!
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