第27話 破損
「あ」
「おやおや、折れてしまいましたね」
「ご、ごめんなさい兄様!僕の出した氷柱の位置が悪かったせいで」
「仕方ないですよテオ、形あるものはいつか壊れますから。それにしても今回は綺麗に折れたわけではないので修復は難しそうですね」
「うぅ…兄様、本当にごめんなさい」
「こ、こここここ今回のは、おおお俺の使い方も悪かったたたたたかかかかららら」
「エス義兄さん!兄様が壊れてしまいました!」
「動揺しすぎですよリオン。これはこれで面白いですけどね」
「エス義兄さん??兄様に何言ってるんですか?」
愛剣が真っ二つに折れてしまった。柄の部分がバキッと逝かれてしまったのだ。俺は膝をついて崩れ落ちて折れてしまった両剣を眺めた。最近は手入れしても使いにくくなっていた矢先でこれだ、今まで壊れることはあったものの修復できる範囲だったのに今回は修復不可だ。しかもグラキエスが特別に作らせてくれた特注品なので値段もかなりする。しかも珍しい両剣なだけあって再び作り直すとなるとかなりの額と時間が必要になる。
「…両剣使い、引退します」
「「え?」」
「リオン、理由を言ってください」
「最近、両剣が扱いにくくて雑に扱うようになったから。武器を大切に使わない俺は両剣を握る資格なんて無い」
「なるほど……確かに最近のリオンの剣筋には乱雑さが見られてしました。ですが、新しい武器を使うとなると一度覚えた型をまた一から鍛えねばなりませんよ」
「そうだが…」
「それに、武器を変えて私に挑んだところで前よりも善戦できなくなるのは目に見えてますから変えないでください」
「・・・はい」
グラキエスにずばっと言われて頭を項垂れる。じゃあ何で最近使いにくかったんだよ。テオが背中を摩ってくれてるのが嬉しい。お兄ちゃん泣きそうだよ。
「…リオン、私と腕相撲しましょうか」
「は?」
「ちょっとした力試しです。ほら、早くしてください」
「え?え?」
唐突に腕相撲をしようと言われて混乱しているがテオもその意図がわからず二人して混乱している。よくわからないままグラキエスの手を握り、肘を机に付けた。
「二人共、準備はいいですか?」
「いつでもいけます」
「大丈夫だ」
「それでは、レディー…ファイト!」
合図の瞬間、前腕部分に力を入れてグラキエスの腕を押さえつけようとした。
ただ、予想外なことにグラキエスは力を入れてるはずなのに難なく腕相撲に勝てた。え、勝てたの?脳筋って言われてたけどグラキエスのほうが筋肉詰まってたから普通に負けてたのになんで?
「て、手加減した?」
「一切手加減してませんし寧ろ本気でしたよ。リオンの筋力が私を上回ったんですよ。小さい頃のリオンに合わせて作った両剣でしたからこの剣では軽すぎて扱いにくいと感じたのは当然のことですよ」
「軽すぎて…?」
「そういうことですね、これ以上重たいとなると直接職人に会って作り直したほうが良さそうですね」
「え?」
「作成費用は私が持ちますから心配しないでください」
「あ、うん…」
「それにしても数年で本当に成長しましたねリオン、兄として、師匠としても誇らしいです」
「エス義兄さん・・・」
「では行きましょうか」
「「へ?」」
「剣を作ってもらいにオータ領にですよ」
「今からか⁉︎」
「エス義兄さん、流石に日没前ですしご迷惑かけるので明日以降にしましょう!」
「そうですか?あとなんか右腕が少し痛いですし赤く腫れてるような」
「それ折れてるやつですよね⁉︎兄様はなんか棒とか持って来てください!」
「え、大木を折ればいいのか?」
「流石の僕でも怒りますよ、枝です。枝を持って来たら義兄さんの腕を冷やしてください」
「はい・・・」
まだ正気に戻っていなかったら弟に怒られてしょぼーんになった。
ちゃんとした医療行為はできないので街にいる医者にグラキエスを見てもらったが捻っているだけでしばらく安静にしてれば治るとのことだった。
「クマゾー、テオに怒られた・・・」
「クマ〜」
「クマゾー、クマのくせに何で人間みたいなこと言ってんだよ」
「クママ〜」
「俺は元々出来た人間じゃないし・・・完璧に演じきるのは難しいんだよー」
屋敷に戻ってから俺はクマゾーのところに向かって慰めてもらおうとしたが予想外なことにクマゾーの考えが思ったより常識人だったので俺はまた心の中で泣くことになった。
ん、なんでクマゾーの言ってることがわかるかって?表情と声で予想してるだけで完璧に意思疎通できてない。エロジジイ龍こと氷牙は完璧にクマゾーが言ってることはわかってるけどフラッといなくなるのでちゃんとクマゾーと氷牙が会話しているところは見たことがない。
「クマゾー・・・あともう少しで試験だってのに俺やばいよ〜」
「クマッ!」
「他人事すぎだろ、応援しろよちくしょー」
武器を壊すしグラキエスに怪我させるわテオに怒られてクマゾーには呆れられる始末。原作のリオンなら絶対ありえないことなんだろうなートホホ・・・。
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