第8話 超絶過酷特訓〜獄〜

「本当に昨日は申し訳アリませんでしたリオン…怪我の方は大丈夫ですか?」


「エス義兄さんの回復魔法のお陰であとも残らず…痛かったのは本当ですが」


「うっ…力加減がうまく出来ないまま咄嗟にしてしまったことなので本当に申し訳ないです」



 昨日の生死がかかった追いかけっこはグラキエスの腹蹴りで俺が沈んで終わってしまったので今日こそ指南してもらうことになった。痛すぎて悶絶していたししばらくの怪我が残ると思っていたが回復魔法をグラキエスがかけてくれたおかげで綺麗さっぱり痣や切り傷などはなくなった。テオに服がボロボロだと指摘されたときはドキドキしたがなんとかバレずに誤魔化せた。



「今日から特訓に入るのか?」


「はい、昨日のリオンを見て確信しました。貴方は私の全てを習得できると。あの状況で立ち向かえるなんて本当に感心しましたよ」


「本気で死ぬかと思ったけどな」


「うっ、そこまで深堀りしないでください…あの後当主様に叱られたんですから」


「父上が…別にこれからの訓練で怪我をすることもあるだろうし父上にはなるべく特訓のことには口を出さないように伝える。これも俺自身が修行を受けると決めた以上口出しはされたくない」


「リオン…そんなに私のことを思って…」


「そういうにはいいから早く始めよう」


「ですね、では最初に基礎能力を上げるための特訓をしましょう。まだ最初なので軽くにしておきましたので確認してみてください」



 俺はグラキエスが渡してきた紙を読む。最後まで読んで、これ明日動けないやつだと確信した。多分だけどグラキエスは加減を知らないタイプで自分ができたなら出来ますよねって普通に言っちゃうタイプ。でも、俺はやると決めたんだ。その覚悟が揺らいだら終わりだと思い、基礎トレーニングを始めた。




《リオン専用基礎能力向上特訓 1日目》

 持久走 屋敷外周30分間

 短距離 10本×3

 腕立て伏せ 20回×5

 腹筋 25回×4

 背筋 50回×2

 スクワット 10回×5

 体幹トレーニング 30分間

 雪山おにごっこ リオンが捕まるまで

 ◆



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「全身が痛い」


「やはりリオンには早すぎたかもしれませんね」


「分かってたのかよ・・・」



 俺は雪山で横になりながら空を見上げる。鬼ごっこは見事に捕まって初日を終えたが本当に記憶がない。記憶がなくなるまでトレーニングとか普通にアウトな気もするけど…ファンタジーならセーフか?



「それにしてもリオンの根性はすごいと思いますよ。このメニューより少し厳しいものを新人の騎士にやらせてみたら逃げられたんです。私も組んでみて流石に途中でやめるか、気絶するかのどちらかだと思ったのですがやり遂げられるなんてすごいです」


「…父上にそのこと言ったら怒られるけどいいか?」


「流石に困りますので当主様には内密にお願いしますね」


「倒れたら困るんで程々に頼む」



 俺は起き上がりながらグラキエスに伝える。グラキエスは分かりました、と返事しているがこれは絶対わかってないやつだ。内心諦めながら屋敷に二人で戻った。

 ◆


 ◆


 ◆

「兄しゃまおかえりなさい!」


「ただいまテオ」


「おや、私には挨拶をしてくれないんですかテオドール?」


「あ、いたんだー兄しゃましか見えてなかったー」



 あれ、なんか空気悪いな。グラキエスとテオの間に雷が見える気がするんだけど疲れすぎて幻覚でも見えるようになってしまったのか?それはそれで困るけどなんでこの二人は出会って間もないのにこんな険悪なんだ。



「大体グラキエスは兄しゃまを傷つけて!」


「し、しかたないじゃないですか、訓練というものは怪我がつきものです!」


「でも、でも!昨日なんか気絶してた!父上も怒ってた!」


「うっ…」



 あーこれ、俺が口出ししたら余計ややこしくなるやつだ。俺はややこしくなる前にそっと玄関ホールから抜け出して自室に向かった。



「あの二人を一緒にさせるのはこれから避けたほうがいいな…あー風呂はいったら寝よう」



 ベッドに横になりたい気持ちを抑えてお風呂に入りに向かう。体を清潔にすることは出来たのでそのままベッドダイブしたらいつの間にか眠っていた。



 その後も1日地獄のトレーニングを続けた結果、俺の体力はついたけど代わりに勉強があまりできないという問題が生まれ、午前は座学で午後は訓練になった。

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