第33話 討伐

「よいっしょおおおおおおおおらぁ!」



声を出しながら上空から落下攻撃を仕掛ける。かなり勢いよく脳天直撃をしてみたが思ったよりも手の方にダメージが来る。なるほど、特殊個体だから外殻もかなり固くなってるのか、厄介だな。


サソリの方は氷の拘束から抜け出そうともがいているがそう簡単に抜け出せない様にしているからあと数分は持つはずだ。逃げ出せない様に砂漠の砂を水で湿らせてから凍らせたので蟻地獄で攻撃されたり逃げられたりしない様に対策済みである。


そして、殻に覆われていない関節の部分を狙って氷柱を生やして攻撃する。甲殻類はこういう関節が弱いって前世で知ったんだよなぁ。一方的に俺が攻撃して足や腕を奪っていくがサソリは痛みでもがいているが氷は中々砕けずにいる。尻尾でも砕いてみようとしているが砕けずにいる。



「ふっ、あっはは!特殊個体だからって警戒してたけど大したことないなぁ。期待して損した」


『ギッギャャャャャャャャ!!』


「叫んでも逃げ出さなきゃ意味ないだろ。もういいや、脅威にはならないし死ねよ」



俺は氷柱を生やして下から頭を貫いた。紫色の血を流しながらサソリは生き絶える。氷が物理として効いてくれて助かったな。両剣があれば一瞬で終わるけど少し手間が掛かったし少し魔力を使い込んだな。回復まで時間がかかりそうだ。



「リオン、倒したのか?」


「もう大丈夫だとは思うが」


「そうか、助かったなぁ。ついでに砂の中にある商品って探し出せたりしないか?」


「あー・・・探知系の魔力操作は弟の方が得意だが少しやってみる」



俺は手を湿った砂の上に置いて魔力を下に下に薄く広げる。目を閉じて何かに当たらないから探っていく。



「!」


「リオン⁉︎何かあったのか?」


「はは・・・これは、長丁場になりそうだな」


「ど、どういうことだ?」


「この下、コイツと同じレットスコーピオンの群れとその王がいる。数だけで言ったら五十を超える」


「嘘だろ、まだこんなやつがたくさんいるのか⁉︎」


「しかも特殊個体が進化した王もいるとなると弓と魔法しか使えない俺だけだとキツイ」



俺は腰の革袋から紙とペンを取り出して紙にあることを書く。書き終わったら紙を巻いて首から下げていた骨笛を鳴らす。ピィと音がなると影から四本脚の獣が出てきた。



「ロウ、これを父上に渡してくれ」


『ヷフッ』


「頼んだぞ」



ロウと呼んだメチェーリウルフは一声鳴くとまた影に溶けて消えた。さて、明日にはこっちに着くだろうけどそれまでは油断できないな。



「マタラ、ここ一帯は封鎖したほうがいい。多分殺された事に気づいたらもっと被害が出るからな」


「分かった。だけど今のは?」


「応援要請、明日には来るはずだし俺等も離れるぞ」



夜行性だからもう少ししたら地表に出てくるかもしれない。俺等は魔法の絨毯に再び乗って砂漠からシルク港へと戻った。









「兄様、要請に応じて僕が派遣されました!」


「急に応援要請してすまないなテオ」


「いえ、兄様が応援を呼ぶってことはかなり深刻ってことって分かってから」



次の日の午前中、サマナ家の屋敷で応援を待っていたらテオがやってきた。グラキエスを呼べたら呼んでほしいと書いていたが騎士団の仕事で無理だったのだろう。そのかわりにテオが応援に来てくれた。まぁテオと二人ならギリギリ安全に討伐できるかな…。


俺の後ろでこっちを見ていたマタラがテオに近づいて手を差し出してきた。



「初めまして、俺はマタラ・サマナだ!今回の依頼主でリオンと同じ四大公爵家の後継者の一人だぜ。よろしくなテオ!」


「僕はテオドール・ウィンタリアです。兄様から名前は聞いてます!」


「敬語じゃなくていいぜ、同い年だし学院では同級生になるんだからな」


「あ、分かったよマタラ。改めてよろしく!」



二人が握手してるのを見て順応力高いなーと思った。未だに俺は全然マタラのノリについていけないのに。



「リオンの弟って聞いてたから気難しいタイプだと思ったのに全然違ったな!」


「兄様の悪口だけは僕は許しませんよ?」


「んーやっぱリオンの弟だったわ。似たような感じがする」


「そこで判断するなマタラ。さて、このあとの動きを説明する」



俺は今回の主戦力であるテオに討伐の作戦を教えた。













「ここに大穴を魔法で開ければ良いんだよな?」


「俺とテオは土魔法のコントロールが苦手だからな、助かる」


「これくらいしか俺には出来ないから全然いいぜ。取り敢えず巣と繋がれば良いんだったな」



マタラが手をかざすと黄色い魔法陣が出てくる。魔法陣が砂の上に広がるとその部分だけ穴が空いた。俺は昨日のように魔法で水を作り出して穴の中に注ぐ。昨日よりもかなりの量を注いでから弓で氷の矢を放つ。これで逃げられないように出来た。



「兄様、僕はいつでも行けるよ」


「そうか、なら行くぞ」


「うん!」



俺らは武器を構えて穴の中に自ら入っていった。

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