第34話 強敵

 穴に入って全貌を見ることになったがかなり広い。長年巣を作っていたのだと考えるともしかしたら昨日の感知に引っかかった数よりもっと多いかもしれない。油断はできないな。



「テオ、まだ構えなくていい」


「分かりました兄様」



 剣を構えるテオをを静止する。この数を相手するのは面倒だし俺は魔眼に魔力を込めて全身凍らせる。



「少し刃を当てれば崩れる。雑魚相手に時間をかけないでいくぞ」


「はい兄様!まだ王個体は気づいてないみたいですし急いで数を減らしましょう」


「そうだな」



 そうして俺らはサソリの数を減らしていった。やっぱ魔眼は協力だ、魔力をこめて対象を凍らせれば少し衝撃を与えるだけで氷漬けされた対象諸共崩れる。魔力消費はそこそこ多いが今日は贅沢にいこう。この後のボス戦があるからな。


 一体、また一体と壊していくといつの間にか氷塊が空間を四割しめていた。



「これであとどれくらいだ?」


「王個体以外は全部倒せましたよ。今のうちに下準備でもしておきますか?」


「そうだな。少し我慢してろよ」


「え、に兄様!?」



 俺は手をを抱き上げて氷で巣穴を氷で覆う。逃げられないように穴も氷で塞いでいく。息が白くなるのを見て自分で冬を作り出してしまったな、なんて思ってしまう。



「あ、あの兄様…」


「すまん、今降ろす」


「いえ、降ろしてほしいって意味ではなくて。体温が前よりずっと冷たいですけど大丈夫なのかと思って?」


「そうか?俺は大丈夫だがそんなに冷たいか?」


「うん、前は雪っぽかったけど今は氷水みたいで」


「……布面積増やすか」



 そんな冷たいんだな俺。完全に雪男じゃん…少し悲しいが弟に嫌がられているのなら多少は我慢しよう。



「あ、僕はひんやりの兄様も大好きです!」


「…だったらまだ」



 いちよ布面積の広めの服は買っておこう。あとてじいやに商人を呼んでもらって…。



「兄様、下から来ます!」


「しっかり掴まってろ」



 俺はテオを抱えたまま壁際まで急いで走ると元いた場所の氷がひび割れ始め、隆起した。ええええええ、結構厚くしたのに割られたぁ!!どんだけ馬鹿力なんだよぉ!



「お、おっきぃ…」


「特殊個体が五メートルなら十五メートル以上はあるな」


「兄様、援護お願いします!」


「任せろ」



 テオが双剣を構えてサソリに近づく。俺はそのうちにサソリに魔法で手で攻撃できないように氷柱を生やして貫通させた後、上から氷で覆って動かせないようにする。王個体だと言っても普通の個体と同じで関節部分の装甲は硬い。



「兄様、足場を!」


「あいよ」



 テオの足元に足場を作ってどんどん上に登らせていく。生やす時間と足場がテオの足元に来る時間を調整しないといけないがよくあんな早く生成できるな。あとで感謝しないとだ。頭の上にテオがたどり着いたのを確認して俺は弓で腕の付け根の関節部分を魔法で炎の矢を作り出してそこに放つ。テオも目を潰したようでサソリは雄叫びを上げて馬鹿力で拘束を破って暴れ出した。



「テオ!!」


「わ!ごめん兄様、一撃で決められればよかった…」


「テオは俺やエス義兄さんより力が弱いから数回攻撃に分けるのは仕方ない。だけど思った以上に体力的にも硬さ的にも他のレットスコーピオンより固い。本来なら俺が剣でぶっ叩けばいいが…」


「兄様の両剣は壊れてますし予備の大剣でも難しいってわけですよね」


「いや、できるにはできるが剣のほうが耐えられないと思う」



 吹っ飛ばされたテオを担いで一旦安全なところまで引いてから暴れてるやつをみるがかなり怒っているのか壁にぶつかりながら見るもの全てに攻撃している。うーん、これはまじで俺が魔法と弓だけで倒すことやテオと協力して倒すのもかなりきつい。こんなときに両剣があればよかったのに…。



「兄様、僕が自由に動いてもいい?」


「テオが?かなり危険だぞ」


「僕だって自分でできるから、お願い兄様」


「…分かった、好きに動けばいい。俺がなるべく魔法で援護して動きを制限するから怪我には気をつけろよ」


「ありがとう兄様、僕頑張るね」



 テオは改めて双剣を手に握りしめてサソリに向かっていった。愛しい弟のためにお兄様が一肌脱いでやりますか。俺は両手を前に出して風魔法と氷魔法を同時に展開する。風魔法はテオの動きを早めさせるため、氷魔法はサソリを拘束するため。ついでて氷魔法には魔眼の力も使って一撃で砕けるように細工をしておく。半分近く魔力を使った俺にしては珍しい戦法だ。


 サポートをしているうちにテオがサソリの足を刈り取った。再生しないように足の付根の部分を炎魔法で燃やす。確実にダメージを削っていると尻尾が毒を噴出してテオに当たりそうになった。難なく避けていたが慢心していたのか腕に当たった。



「テオ!!」


「僕は大丈夫で、痛っ!」


「あとは俺がやるからテオは休め。解毒薬もあるから早く飲むんだ」


「ごめんなさい兄様」


「戦いで慢心だけはするなとあれだけ言っただろ、困った弟だな」



 テオを安全なところまで運んでから俺は背中に背負っていた大剣を抜いてサソリに攻撃を始めた。レットスコーピオンの毒に効く解毒薬はテオに渡した一本しか無いから毒を食らったら確実に終わる。だからここからは短期決戦だ。


 大剣を片手で持ちながら走り出してハサミ攻撃を避けてから関節部分に刃をいれる。流石に固いから一撃でとは中々いかない。避けては攻撃を繰り返していると尻尾が何故か俺とは別方向を向いた。方向の方を向いてみるとテオを避難させた場所だ。コイツ、テオを狙ってるのかとすぐに察知した俺は急いでその方向に走って向かう。毒液が尻尾から噴出され、テオに直撃しそうに鳴った。



「うっ…!」



 毒液がテオに届く前に俺が庇い立てる事ができた。背中がジリジリと痛む。とにかくテオの安全を確保しないとと思いながら自分に解毒魔法をかける。薬関連に興味があって良かったと今は特に感謝できる。動けるくらいに回復できたので振り返るとサソリのハサミが頭上から振り下ろされていた。



 これは、避けられない



 久々に感じた死の感覚




 死ぬのは、嫌だ










「アイス・ドライブ!」





 眼の前のサソリが紙のようにたやすく斬れた。







〈作者から〉

 投稿のストックが無くなってしまったのでしばらく投稿をお休みします。1ヶ月以上毎日投稿をしてきましたが少し筆が遅くなり始めました。楽しみにしてくださった読者様、投稿再開まで少々お待ちしてくださると嬉しいです。あとモチベのために少しでも感想やいいね等してくれると創作の励みになります。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

毎日 18:00 予定は変更される可能性があります

原作は叛逆者だけど穏やかに生きたいな! 参画 停 @nagomin3

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画