第21話 四季の竜
「あ、最近風の噂で聞いたんだけど氷龍が封印されていたらしいね。封印を解いたって聞いてはいるけど、なんで封印されていたのかな?」
「!」
「氷龍が封印されていた?」
「そういえば、氷龍のことについてはあまり話がありませんでしたね」
「確かに氷龍の話はアイツもしたがらないなとは思ってたけど」
マズイ…なんでこのタイミングでその話をするんだよ。
氷牙について、封印されていたことは俺とその家族と一部使用人、あとは国王くらいしか知らないように話を合わせていたのだ。表向きは力の使いすぎで長い眠りについていた、という話になっていたはずだ。
「焦ってるね…その様子だと図星みたいだ」
「殿下、なにか勘違いされている様子ですが氷龍は長い眠りから目覚めただけで封印はされていません」
「そうなのかい?父上とウィンタリア当主殿が氷龍が封印されていた、という話を用があったときにたまたま耳に入ったからてっきりそうなのかと」
「……なるほど」
父上、変なところで抜けてやがるな。もう少し重要な話をするときは警戒心を持てよ!せめて扉はしっかり閉めて、防音魔法をかけるとか…帰ったら模擬戦でも申し込むか。そこでボコボコにしてやる。
「ま、実際お父様に口裏を合わせるように言われてるかもしれないからちょっと力技で聞かせてもらうよ」
「は?あ…」
アランの言葉に疑問を持ちながら彼と目があった瞬間、体の自由が効かなくなった。頭の中が霞がかって他のことを考えられなくなる。アランの命令しか聞きたくない…。
「教えてよリオン、氷龍は本当に封印されていたのかな?」
「……はい、殿下…氷龍はふ」
「はい、そこまで〜。我の契約者に魔眼を使うなんていい度胸あるね」
「残念、聞きそびれちゃったか」
目を覆われてようやく意識がはっきりした。さっき、俺は何を思っていた?突然アランの命令を聞きたくなって…。そして、氷牙のことを話しそうになった。間違いなく、俺の口から言おうとしていた。
「氷牙…」
「正気に戻ったようだな童、まったく儂がすぐ近くまで来ていて運が良かったの」
「アラン王子、もしかして魔眼持ちですか?」
「そうだよ」
アランが魔眼持ち!?そんな設定、原作でもなかったはずなのに…迂闊だった。なんで原作にない力をアランが持っているんだ?しかも人を操るような魔眼、いや原作でもその力を使って人気者に?流石に考えすぎか…。
「しかも厄介なのが『魅了の魔眼』ってところだな。しかも王族がその魔眼をもっているなんて思いもしなかったがの」
「あはは、僕も滅多には使わないよ。まぁ本人が来たことだし、直接聞いたほうがいいよね」
すると、アランの目が少し怪しげに光った。氷牙にかけるつもりか!?
「
「!」
「残念、我には魔眼は効かんぞ。直接聞きたければ魔眼を使わずに聞けばよかろう」
「氷牙!?それは」
「別にいいだろ、隠しても無駄じゃ。他の奴らも勘づいておる」
「……お前が決めたことなら俺は何も言わない。父上に怒られても僕は擁護しないからな」
「応」
ため息を付いて横においてあった魔術書の続きを読み始めた。
◆
◆
◆
◆
◆
「ねぇ君、それおもろいの?」
「別に面白いものではない。ただ、必要だから読んでるだけ」
「そうなんや、あんさんも緋扇と一緒で冷たい人間やな」
「は?」
てっきり緋扇が話しかけていたのかと思ったらそうではなかったらしい。本から目を話して声のした後ろの方を向くと着物を着た、大和撫子を体現したような人…いや龍がいた。
「桜!?何故ここに!?」
「かんにんえ、えらい昔に消えたかつての同胞の力を感じたさかい、様子見に来たんよ」
「それって…」
「おーっす!なんかすっげー懐かしい顔ぶればっかじゃん!てか氷牙いるじゃん!生きてたんだな〜」
「スヴァーリャン…うるさい……」
「悪い悪い!それにしても全員集まるのって建国して以来だろ!?」
「你好、久しぶりだなガキども」
「ガキって言われる年齢と違うし子供扱いしいひんでもらえる?そっちこそ急に反応消えた思たらいつのあいさにか生き返ってるし」
「勝手に殺すな、それに我からしたらお前らなんてガキだ!」
ま、まさかのシーン王国建国に携わった四季の竜揃っちゃった!?俺は顔には出ないもののかなり焦っていた。え、こんなときに再会しても良いものなの?俺が原作改変したせいなのは重々承知なんだけど…それでいいの?逆にこんなときでいいのか?魔術書を抱きしめながらどうすればいいんだと頭の中で色々考えを巡らせていく。
マジでこういうときどうすんの?対処法とかわかんねーよ!
「それにしても氷牙、なんかチビになった?」
「封印されて力を失ったからな、てか相変わらず馴れ馴れしいぞスヴァーリャン!」
「竜の性格ってその後継者にもにるんだね。見てて結構面白いや」
「元はお前のせいだぞ殿下」
「あれ、誤魔化せなかったか?」
「確かに、元はといえばリオンさんにアラン様が魔眼で魅了をかけたからで」
「責任取って竜たちを収めてくださいね」
「やっちゃえー殿下!」
「あれれれれ?みんなは手伝ってくれない感じ?」
「手伝うわけ無いでしょう。第一、俺は被害者ですし殿下は未遂とはいえ加害者ですから。あと。次期国王なら従うものを抑える義務もあるだろうし」
自分は関係ないヅラをしている殿下に竜の相手を任せて俺等はお茶をしたり話したり、本を読んだりし始めた。と、言っても俺は龍たちを観察しているけど。
春の龍、スプリアの守護龍『桜』。桜魔帝国にいた龍の一種で春を司る。水魔法を使っており京都弁を話す。シーン王国の神事などはスプリア家が取り仕切っており、その中でも当主の舞と桜の舞は神事ではとても重要視されている。
次に夏のティンニーン、サマナ家守護龍『スヴァーリャン』。地竜であり、守護龍の中で唯一飛べないらしい。スヴァーリャンは商売よりも戦闘のほうが好きだが、気まぐれに商売に参加する。幸運に恵まれているので、スヴァーリャンが選んだものはたちまち需要が増えるとまで言われている。ただ、本人は気分屋なので本当にたまにらしい。
最後に秋のドラゴン、オータ家の守護龍『アンフィ』。小柄な男の姿をしており、ドラゴンの姿でも小型な翼竜。確か全員元になるドラゴンがいたけどしっかり覚えているのがアンフィで、元はアンピプテラってドラゴンらしい。元々話すことは少なく、話すときも声が小さい。たまにアンフィも鍛冶をしており、自分の鱗を使って作る武器は逸品で戦士なら誰でも使いたいものらしい。俺はあまり考えたことはなかったけど気になりはする。
「ほら、次期国王様も言ってることだしこれで話は一旦終了!!!!どうせ久々に揃ったし暇ならこのあと宴会でもしないか!?サマナならすぐに用意できるぞ!」
「我は絶対行かないぞ、溶ける」
「そんなか?」
「まぁ、間を取ってスプリアでもええよ?」
「そっちなら行くが、アンフィも行くか?」
「ん!」
「よし、リオン!俺は今日帰らないかもしれないが心配するな!」
「まだ昼過ぎたばっかだが……勝手にしろ」
「冷たいねー」
「じゃーなー!」
「ほなまた」
「…」
話し終わったからなのか、それとも早く宴会をしたかったのか氷牙を含めて全員がいつの間にか姿が見えなくなった。早いな、年寄ってやっぱ酒好きなのか。覚えとこ。
「ふぅ、疲れた疲れた」
「「「「自業自得」」」」
「なんでまだ一緒に過ごしてきた時間短いのにそんな息ぴったりなの?」
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