第22話 婚約者
竜たちの来訪も終わり、そろそろ帰るかと思っていたときにアランに爆弾を落とされた。
「あ、みんな今日は泊まってってくれるかな?まだ話足りないからさ」
「…殿下の命令なら」
「そう、ですわね」
「命令とあらば」
「殿下って結構自分勝手だよな〜仲良くなりたいのは分かるけどさ」
「マタラ!?」
「事実だが流石に言葉は選べきだろ」
「リオンさんもぶっちゃけてます!」
「「こんな殿下に気を使うほうが面倒」」
「わー、二人共結構ぶっちゃけるね」
「おう!だって言わないとわからないこともあるだろ?」
「正直、殿下に対して公式の場じゃない限り雑な扱いでもいいだろって思ったまでだ。あと、相手にするだけ疲れる」
ゲームだと、ハイスペック王子様だったくせに今はクソガキと言っても過言ではない。正直、王子であり未来の上司であるアランだからこそ手を出してないだけでこれが父上や、見知らぬやつなら普通に殴っていた。王子だから殴ってないだけで王子という肩書きがなければボコボコにしていた。それと、確か明日から父上は仕事で城にいるはずだから合間を見つけて殴るか。情報管理不足だということをしっかり教えなければいけない。
「僕としては友人みたいだから気にしないよ。それとは別にリオンは僕に対して当たり強くない?」
「魔眼で魅了したことに対して謝罪も貰ってないからな。王子じゃなければ殴って氷漬けにしていたところだ」
「そうだったね、魅了を使って無理やり話させようとしてすまなかったよリオン」
「過ぎたことは仕方ない、それに今回は父上の情報管理不足も原因にある。後で会ったら殴っておくので気にするな」
「リオン殿、脳筋ですか?」
「失礼だな、俺は勉強もできる筋肉だ。そこは間違えるな」
「筋肉は否定しないのですね」
「・・・エス義兄さ、んんっ!グラキエス団長にも筋肉の塊やら脳筋なり言われてるからな」
筋肉は全てを解決する!前世からこの言葉は魔法の言葉だと思ってる。事実だし、拳と筋肉は裏切らないからな。それと、外ではなるべくグラキエス団長って呼べるように練習しないとだな。
あー今日帰れないのかよ…テオとサティアにも会えないし鍛錬も出来ないのかよ。両剣も持ってきてないしなぁ…話を聞くしか無いのか…。
「お兄様」
庭園から移動して室内でまた話すことになったのでアランを先頭に城の中を歩いていると前からアラン似の少女が声をかけてきた。
見た目はアランと同じ金髪碧眼であるが、アランよりツリ目気味で髪型はショートボブ、カチューシャをつけている大人しめのドレスを着た印象の良い少女だ。
「フラン、この時間はいつもなら稽古の時間じゃ?」
「担当の方が本日流行り病でお休みになったので少し本を読もうかと思っていたの」
「そうだったのか。あ、紹介しなくちゃね。僕の実妹だ」
「初めまして、アラン・シーン=ドラコニアの妹、第三王女のフラン・シーン=ドラコニアです」
フランだと…?俺は5年前の記憶を思い出した、この女は俺が絶対会わないと決めていた人物だ。俺はそっとアランの後ろに隠れてなるべく息を潜めた。バレたら、絶対言われる。
「お兄様、もしかして後ろにいる方はリオン・ウィンタリア様ではありませんか?」
「そうだけど、フランはリオンのことを知っているのかい?」
「知ってるも何も、私とリオン様は婚約者ですもの」
「え!?」
「そうなのですかリオンさん?」
「やるなーリオン!」
「知らなかったな…まさか二人が婚約者なんて」
え、アランは知ってるんじゃないのか?俺は4人の圧から目をそらしていたが、目線の先にフランがやってきた。くそ、こんな可憐な美少女だったのは!正直好みではある!
「初めましてリオン様、ようやくお会いできましたね」
「そうですね、ただ言わせてもらうと俺はフラン王女殿下とは結婚するつもりはありませんからいつでも婚約破棄をしてもらって構わないですよ」
「嫌です、私は絶対リオン様と結婚したいですからいつまでも粘りますよ」
「そんな言われても俺は屈しませんから」
「上等です、絶対に私のことを好きになってもらいますので」
「あれ、二人ってどういう関係?」
「条件付きの婚約者です」
「俺は婚約したくないと言ったのですが、フラン王女殿下がどうしてもと言うのでかなり無理な条件を出したのですがそれでもいいと言って婚約している次第ですが」
「ふふ…それも愛の力で乗り越えていくつもりですので問題ないですの」
「んー…要するに僕は手出ししないほうがいいやつだね!」
「したらウィンタリアにあるアーマス湖に沈める」
「殺害予告?」
俺はアランが余計なことをしないように脅迫しておく。アランはもう雑に扱っていい人物認定した。それにしても本当に今回は偶然だとしても5年間1度も会わなかったのに婚約破棄しないのは想定外だった。1年で条件を破るか婚約破棄すると思っていたけど…。俺はフランの方を向くと目があった。
「あ…り、リオン様。私、絶対結婚すると決めてるので、早く私のことを好きになってくれると嬉しいです……」
チュ
頬に柔らかい感触がした…赤くなった少女が頭を下げてから走り去った。少女はフランってのは分かっているがあまりにも突然で俺は棒立ちするしか出来なかった。
「リオン、かなり大人びてると思ってたけど、案外年相応な反応もできるんだね」
「うるさい……」
熱い頬を冷ますように手の甲で口元を隠した。
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