第23話 行く道

「やっほーリオン、遊びに来たよ」


「帰れ」


「え〜来たばっかだし僕、せめてお茶位は出してほしいな〜」


「なんで連絡もなしに来てるんだ、俺だって暇じゃない」


「僕も暇じゃないけどね」


「本当にお前次期国王か?」



 これからグラキエスとテオとの鍛錬があるのに突然、アランがやってきた。本当に突然だったので、服も鍛錬用の薄着で上なんかノースリーブインナーだ。背には両剣を背負っていて鍛錬に出る直前だった。



「まぁまぁ、僕も僕で目的があってね。氷龍が封印されていた洞窟の調査が本来の目的だよ」


「あそこは父上と国王の了承が得られない限り王族でも立入禁止の場所になっているが」


「その二人からの了承はすでに得てるよ。あとは護衛なんだけど…」


「まさか…」


「置いてきちゃったからリオンが護衛してくれないかな?」


「やっぱりか」



 俺はため息を吐いた。原作でも護衛を付けずに城下町を一人で散策したり、森で勝手に迷子になってボロボロになって返ってくるシーンなどかなり自由奔放な性格をしている。ちゃんとしているときはかなりかっこいいのに。なんで人気キャラ投票ではリオンはアランに負けてずっと二位だったんだよ…意味わからん。



「護衛、引き受けてくれる?」


「あー分かりました…それと、俺だけじゃ殿下の護衛には足りないって言われるんでちょっとだけ客間で待っていてもらえますか?」


「分かったよ」


「メアリ、殿下を客間でもてなしてくれ」


「承知いたしましたリオンお坊っちゃま」



 テオの専属メイドだがたまたま近くにいたのがメアリしかいなかったのでアランを任せて俺は先に森で待っている二人とペットを呼びに行った。

 ◆



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「殿下、今から貴女を守る護衛を連れてきました」


「わー、流石に豪華な人たちだね」


「当たり前だろ、殿下の護衛となるとそれなりに護衛が必要になるからな」



 俺は森で先に組み手をしていたグラキエスとテオ、そしてペットとして我が家で相いされているホーンベアーのクマゾーを連れてきた。クマゾーはメイドたちの間で人気になっており最近甘やかされ気味なので流石に動かさないといけないと思ったので護衛にした。



「アラン殿下、今日は護衛としてよろしくお願いしますね」


「グラキエス団長、休暇中にすまないね」


「いえ、殿下の護衛なら文句はありませんよ」


「は、初めまして殿下!テオドール・ウィンタリアと申します。殿下の護衛をさせていただきます」


「テオドールか、グラキエス団長からリオンの話と一緒に聞いてるよ。よろしく頼む」



 テオが挨拶する。うわー、テオに悪影響与えられたら嫌だなー。俺はテオの頭を撫でながら言い聞かせるように言った。



「テオ、もし殿下が変なこと言ってきたらすぐ俺に伝えろ」


「?分かりました兄様!」


「リオン?なんかまた失礼なこと考えなかった?」


「殿下に対して遠慮や配慮は最低限でいいとこの間学んだからな」


「やっぱリオンといいみんな、結構僕に当たり強くなってるね」



 俺は上に羽織を着て外に出てみると少しだけ雪が降っていた。じいやに紅茶の入ったポットと炎魔法で保温してるからアランがもし寒いと言ったら飲ませられるように配慮している。いちよ、未来の上司であるわけなのでそこは考えている。


 洞窟は屋敷から少し遠いのでクマゾーにソリを引っ張ってもらいながら走ってもらっている。もしかしたら雪が激しくなる可能性もあるので急がないとだ。



「あ、そういえばリオンってフランのことどう思ってるの?この間頬にキスされてたけど」


「おや?そうなのですかリオン?」


「は?に、に、にににに兄様にキス⁉︎僕だって最近してもらえてないのに!」


「テオ、落ち着きなさい。私なんかリオンから額にキスすらされたことありません」


「ククク、クマァ」


「クマゾーはマウント取るな!兄様からよくモフられてるからって!」


「・・・リオン、愛されてるね君」


「たまにその愛が暴走する時があるので困る時は困る。怪我なんて戦士にはつきものだってのに怪我した後は騒ぐし」


「思ったより常識人よりだねぇ」


「何言ってるんだ殿下、俺は元から常識人だ」



 グラキエスとテオの喧嘩がこれ以上激しくなりそうなら殴るか宥めるかを考えながらアランの相手もする。多分、原作でもアランはこんな感じでリオンと関わったからリオンも心を許す様になったんだろうな。もし、テオを助けられずにいたら俺も原作のリオンみたくなってたかもしれないし。そう考えるとテオの存在は大きいなと思って隣で口論しているテオの頭に手をおく。



「リオン兄様?」


「喧嘩は終わりだ、別に婚約者がいるならこれくらいあったりもするだろう。それに、エス義兄さんも父上からそろそろ結婚しろと言われてるみたいだし、テオも婚約者をそろそろ決めろって言われていただろ」


「「う・・・」」


「俺のことより自分の心配をしろ」


「お〜流石リオン、僕が見込んだ通りの圧力だね」


「褒めても紅茶しか出ないぞ」


「あ、寒かったからちょうど飲みたかったんだ」



 良かった、じいやにはあとで感謝しないとだな。俺は持ってきた木製のカップに温かい紅茶を注いでアランに渡す。


 さて、そろそろ洞窟に着くからだよな。降りる準備と安全対策のために魔法でバフをアランにかけようとした時にグラキエスが声を出した。



「魔物だ」


「‼︎数は?」


「見たところ5ですね、けど最近は活発化してますし危ないので油断しないでくださいね」


「分かった。テオ、援護を頼む」


「はい兄様!エス義兄さんは殿下の護衛、ですね」


「勿論そのつもりです、くれぐれも怪我だけには注意を」



 俺とテオはソリから降りる。俺は両剣、テオは魔法を使うための魔法書を開いた。目の前には巨大な白兎の魔物「ブリザードラビット」がいる。ブリザードラビットの特徴は、後ろ足の蹴りと魔法で放つ吹雪だ。吹雪は自分の姿を黙視させずに狩るために音と視覚はあまり頼りにできない。


 俺は両剣を持ってブリザードラビットに突撃してまず一匹殺す。続いて二匹目を殺そうとしたが早速吹雪で視界を悪くさせてきた。だけど、これを対処するのがテオの役目だ。テオは炎魔法と風魔法を合わせた炎風魔法で吹雪を掻き消す。

 姿が目視できた瞬間、その方向に走って斬り付ける。後ろからまた一匹来るが、右手から左手に持ち替えて、後ろを振り向きながら蹴られる前に斬った。残りの一匹はテオが双剣で刺していた。



「おつかれさまです兄様、怪我してませんか?」


「してないから心配するな」



 テオの頬に飛んでしまった血を拭いながら怪我してないことを伝える。まだまだテオは子供だな。



「よく出来ましたね二人とも、だけど吹雪を起こす前に倒せたと思いますね」


「確かに、弓矢を使えばすぐに終わったな」


「別にいいじゃないですか、ちゃんと倒せましたし」


「テオ、今回は俺の機転が効かなかったのが悪い」


「んー」


「これを生かして次に繋げばいいのですから、成長に大切ですよ。さて、早く洞窟に向かいましょう。この様子だと本格的に降ったら帰れなくなりますし」



 俺らは再びソリに乗ってあの洞窟に急いで向かった。

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