第二幕 少年期
第18話 屈強な戦士になりました!
雪大地を敷き詰める森。葉の衣を纏っていない細い木だけが白しかない世界で別の色を出してくれている。そんな静かな大地で金属同士がぶつかり合う音が響き渡る。
「また力押しですかリオン?」
「エス義兄さんには丁度いいだろ」
「ええ、これくらいの重さがちょうどいいですね!」
「うわ!この距離でバレる!?」
「お前は気配を感じやすいぞテオ」
「ぐっ、なら!」
「魔法で拘束ですか…いい案ですよ」
「脆い」
「リオン兄様!流石に氷を脆いって言うのはおかしいよ!?」
「母上譲りの馬鹿力を舐めるな」
銀髪イケメンと銀髪美少年×2が三つ巴の戦闘をしていた。
まぁ、こんな前置きは置いておき。
転生してから6年の月日が流れた。俺は12歳になって体も成長し、頭も筋肉も顔もかなり良くなった。ナルシストに見えるだろ?だけど俺はリオン・ウィンタリアだ、元々のスペックの良さはすごいんだぞ!さて、俺は今グラキエスとテオの3人で三つ巴の戦いをしている。勿論、怪我をしないように力加減や使う魔法など制限しながらだ。
テオは魔法の才は俺以上で使える魔法の数が桁違いに多い。元々の魔力量も俺の倍以上あると氷牙が言っていたけど、なにより本人の努力の賜物でもある。だけどウィンタリアの戦士たるもの近接も使えるようになれということで双剣を使っている。魔法が封じられたときのためと言ってはいるが普通に強い。元々気配を消して俺に抱きついてくることも良くしていたから隠密系が得意で奇襲などを良くしているが、俺とグラキエスにはよくバレて反撃されているので最近は真っ向勝負ばっかしている。
俺はグラキエスの太刀を避け、木の枝に足を引っ掛けて逆さになりながら、背負っていた弓を取り出して氷の矢を魔眼で3本生成し、二人に向けて放つ。その後も距離を遠ざけたり遮蔽物に隠れる二人に向けて牽制で何本か放ってから弓を捨てて両剣で上から奇襲する。
積もっていた雪が舞い、辺りが白一色になるがそのうちに次の体制に移そうとしたとき、左から銀色が見えた。
これはマズイ
「はいはいそこまでアル、何時間手合わせしてるんだ童」
「おやおや、流石は氷龍。指で私の本気の一撃を止められるとは思いませんでした」
「リオン兄様大丈夫!?エス義兄さんは模擬戦と本番を分けれない野蛮だしこれからは僕と訓練しよ?」
「テオ?なんで師匠であり兄である私を差し置いてリオンにそんな提案を?」
「えー僕もエス義兄さんの弟でしょ?なら可愛い弟に兄様を譲ってよ」
「ならせめて言動と顔は可愛くしてきてから言ってください」
「そこ五月蝿いアル」
「お前もなんとかアルって話し方やめろ。急過ぎて気持ち悪い」
「年々キミら兄弟口悪くなってるけど、そういう血筋なの?」
俺は氷牙に手を貸してもらい立ち上がる。さっきのグラキエスはかなりやばかった。あんなのチビるわ。チビって無いけど。やっぱり、もっと強くならないど…できれば手から波動弾出せるくらいには…いや、一撃必殺の絶対零度のほうがいいか?
まぁここ数年かなりメンタル的にも肉体的にも強くなった。そして年を取るにつれて俺の表情筋があまり働かなくなってきた。動かせるには動かせるけど何も考えてないときや力が抜けてるときは能面になる。助けて…。リオンの原作での笑わなかった理由ってこれが原因なのかな…たまに顔が攣りそうになるし結構不便なんだよな。
「まったく、ユエちゃんもずっと動きっぱなしで心配してたからすぐに帰る」
「人の親をちゃんづけで呼ばないでください氷牙」
「はいはい、それにあの子も会いたがってたけど」
俺等はその言葉を聞いてすぐに屋敷に帰った。途中で氷牙の「シスコンどもめ」という声は無視しておく。俺らは屋敷に入ってすぐに母上の元に向かった。
「母上!」
「3人ともおかえりなさい」
「おかーりなさい、にいたま!」
「サティア、ただいま!」
「ただいまサティア、いつ見ても可愛らしいですね」
「今日も元気に過ごせたか?」
「うん!あのねあのね」
必死に言葉を紡いでテオの手を握って話しかけてくるのは、5年前に生まれた妹のサティア・ウィンタリア。この子も原作には登場していないが、父上と母上がラブラブ(意味深)な結果生まれたのだ。
初めて見た時、テオと同じく天使が舞い降りたと思った。まだ純真無垢でふにふにしてて可愛い。俺もかなり甘やかしているがテオとグラキエスは俺以上に甘い。甘すぎるので俺がストッパーとして嫌われ役をしている時もある。お菓子を与えすぎて虫歯になったらどうすんの!まったくも!なんてお母さんみたいなことを心の中で言っているが実際は
「2人とも、甘やかしすぎるとサティアの成長の妨げになる。あとお菓子は決められた時間に一回だからちゃんと守れ」
原作のリオンみたいだよ!くそぉ、なんでこんな冷たくなっちゃうんだよ俺・・・。そのせいかサティアとは少しだけ距離ができてるところがある。仕方ないだろ、甘やかしたいけど、甘やかしたいけど当主たるもの制限を強いることもあるからさぁ!本当は辛いけど。
「あ、そういえばリオン。ゼンリがリオンのこと呼んでたわよ」
「父上が?何用で?」
「さぁ?かなり大事な話っぽいから直接聞いた方がいいと思うわ」
「分かった、またなサティア」
「うん・・・ばいばいリオンにいたま」
ぐつ・・・やっぱ妹可愛い。本当は離れ難いけど父上が呼んでるならそちらに行かなければならない。本当は嫌だけど仕方がないんだ!
俺は早く風呂入りたい気持ちとサティアともう少しお話ししていたかった気持ち、あと嫌な予感を感じながら父上の書斎に入った。
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