第31話 本日は営業終了です
「リオン、僕と結婚して」
アンフィの言葉に思わず驚いて声が出る。結婚?けっこん?KEKKONN?血痕?あれ、結婚ってなんだっけ?
「アンフィ、流石のリオンも驚いて固まっておるぞ」
「?」
「え、アンフィは男ではありませんか?」
「我ら竜種には性別の壁なんて存在しないアル。なんなら性別変えられるし」
「僕が女の子になれば、万事解決…」
「そんなわけあるかぁ!」
「俺、婚約者がいるんでお断りで…」
「そっか残念」
俺は丁重にお断りする。いや、竜って性別無いんかい!てか結婚してなんて、幼稚園でしか言われたこと無いよぉぉぉ〜!いやーびっくりびっくり。てか残念って何!?残念なことなの!?
「それで、アンフィの鱗をリオンの武器に使うのか?」
「そうそう、アンフィの鱗はかなり硬いし切れ味を良くしてくれるからね。しかもアタシとジェニエの共同だし今まで作った武器の中でも最高傑作になるんだ。お願いアンフィ!」
フェフィーが手を合わせてお願いする。俺も作ってもらう側なのでお願いしますとアンフィに向かって言った。
「ん、いいよ…」
「ありがと〜アンフィ!!!!助かるよ〜〜〜!」
「これで材料が揃いましたね」
「だな」
「……なぁ、その材料の中に我の鱗も入れて見たら面白そうじゃない?」
「え、氷牙のを?」
「……面白そうですね」
「え?」
「未知の材料…しかも氷龍の!燃えてきた」
ああ、これは俺がついていけないやつだ。俺は遠い目をして今頃二人で楽しく街を散策しているであろう兄弟が羨ましく思った。
「リオン、ぼっち」
「そういうのは人に直接言わないほうがいいぞ」
それはそうだけど人?ではないが人に言われるのがいっちゃん辛いんやぞ。
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「あー疲れた」
俺はウィンタリアの屋敷に帰宅してベッドの上に寝転んだ。鱗がもらったあと、機能やデザインの話をすることになったのだがそれが一番疲れた。疲れすぎて今日はもう一歩も動きたくない。鍛錬よりずっと疲れるって何事だよ。
横になっていたが仰向けになって天井を見るといつもと変わらない。だけどこの天井を見るのもあと半年もない。数ヶ月したらノアへの入学試験があるし、入学したら王国を出ないといけない。シーン王国と学園国家ノアはかなり遠く、簡単に行き来することはできないので帰れても年に一度くらいだ。例えるなら日本からイギリスくらいの距離、それだけ離れている。
「これも、俺が悪役にならずに平和にするためだ」
今の俺が主人公と会っても悪役堕ちしないとは思うが、もしものことがあるかもしれない。そのための保険として国を離れる選択をとった。主人公が召喚されるのは五年後、俺が十七歳の時に召喚される。そしてその一年後、十八歳の時に学院に入ってくる。十八歳まではノアにいるので会うことはない筈。
「イレギュラーなことが起きなければの話だけどな」
この世界が「俺」がいるということで既に崩壊し始めてる可能性もある。その可能性を考えると召喚が早まったり遅くなったりするかもしれない。考えすぎて空回りする可能性もあるから今は原作通りということにしておこう。
もう眠いなと思って目を瞑ろうとすると部屋の扉からノック音がした。
「失礼しますお坊ちゃま、当主様がお呼びですので至急書斎に向かってください」
「父上が?もう寝ようとしてたんだけど」
「かなり急ぎの様子なので格好はそのままで良いとのことです」
「はぁ・・・すぐに行く」
疲れた体を叩き起こしてベッドから起き上がる。今日は少し冷え込むらしいので薄手の寝巻きだけでは廊下を歩くのが億劫になる。なので、上に羽織を着て父上の書斎に向かった。
「失礼します父上。何か御用ですか?」
「急に呼び出してすまないリオン、お前に指名依頼が来てる」
「指名依頼?魔物討伐の?」
「なんでもかなり危険な魔物だから普通の戦士に依頼できないのでな」
「なるほど」
「依頼主はサマナ家の嫡男だ」
「やっぱ行きたくない」
「ダメだ」
「やだ」
「行ってくれ」
「無理」
「何故だ!?」
「サマナ領は暑いから行きたくない!大体武器壊れたから新しく作ってて弓しかないけど」
「え?」
「四日前に言ったのに…」
「あー因みにその魔物、魔法があまり効かないらしい。あと明日行ってくれ」
「…父上、殴りますね」
「すまない!」
俺は拳を握って父上の胸ぐらを掴むと父上がやめて!と言ってきたが容赦なく殴っておいた。父上はシクシク泣いてるが俺は無視して書斎を後にした。
明日はダラダラしようと思っていたのに…。俺は自室に戻ってふて寝した。明日のことは明日やる。予備の武器も明日決める。
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