第5話 問題大アリ家族

 氷龍の存在を知って、今日も一日頑張ろうと思った矢先、今日は吹雪で外が荒れており、新しい先生の到着がかなり遅れるというので到着するまで暇だったから書庫にでも向かって新しい知識でも頭に入れようと思っていた。



「兄しゃま!」


「・・・テオか、今日も元気だな」


「はい!これから母上に会いにいくのです!」


「・・・母上か」



 目の前から愛しのテオが走ってきた。俺の天使、今日も可愛い。そのテオがある人物の名前を口に出した。


「母上」・・・俺とテオの実母でリオンが特にプレッシャーを感じている人物である。特に俺が記憶を思い出す前に引きこもった原因も母上である。



「兄しゃま、母上のところ、一緒に」


「・・・行くか」


「!はい!」



 俺はテオの手を繋いで母上の自室に向かう。俺としてもあまり母上に会いにいくのは気乗りしないが。が、これから生きていくためには向き合うべきだと思う。


 テオが母上の自室のドアを開けて2人で中に入ると窓辺で外をずっと見ている母上がいた。その姿は着飾っているわけではなく、部屋着なのかかなり着崩れしていて神もボサボサで目も虚だ。



「母上!」


「テオ?いらっしゃいテオ、可愛い私のテオ」


「母上くすぐったいです、それに兄しゃまも連れてきました」


「リオン?リオンも近くにいらっしゃい」


「はい、母上」



 俺は母上の近くまで向かうと、母上の手が俺の頬に触れる。細すぎる手、冷たいし少しボロボロだ。



「リオン、あの人は帰ってきた?あの人はリオンのことようやく見てくれたかしら?リオンは私とあの人の子供だからきっと優秀だわ。リオンが優秀になればきっと私のことも見てくれるはず。ねぇ、リオン・・・早く成長してね」


「・・・はい、母上」



 胸がズキズキと痛い、これがリオンが感じてたプレッシャー。こんなこと、6才の幼い少年がずっと言われ続けていたら嫌にもなる。


 だけどここで逃げるわけにはいかない。母上はこんなに弱っているのを知ったからには健康にさせなければ。



「そういえばリオン、テオと一緒なんて珍しいわね」


「テオが誘ってくれたんだ、今日は新しい先生が来る予定だったけど吹雪で遅れてるみたいだから時間が余ってね」


「そうだったの・・・」


「うん、だから今日はしばらく暇なんだ。たまには俺もテオと母上の3人で楽しく話そう」


「・・・リオン、そんな提案できたのね」


「・・・できる、それに窓際は寒いだろうからもっと中で話そう。じいやに紅茶と茶菓子を用意してもらうか」


「なら僕がじいやにお願いしてくる!」


「1人で行けるかテオ?」


「任せて兄しゃま!母上も安心してね!」


「ふふ、ありがとうテオ」



 テオが部屋から出ていくのを見てから母上の肩に近くにあったストールをかけて暖炉の近くにある椅子に座らせる。


 多分だけど母上がここまでやつれているのは、父上・・・当主が領地に帰ってこないことと、あと頼れる人があまりいないから。だから俺が優秀な息子に成長することで愛してもらおうとしているのだろう。


 まぁ、見た目からして母上はかなり若い。女性に年齢を聞くのは野暮な気がするがここは聞いておこう。



「母上、不躾なのは承知でお聞きしたいのですが・・・年齢って」


「リオンは世辞が分かるのね、隠してるわけじゃないけど23よ」


「23・・・若い」


「そう?リオンに言われると恥ずかしいわね」



 うむ、流石に若いのにほったらかしなのはあかんやろ父上〜。こんな若い娘を嫁にしたのに会いにこないで仕事ばっかとか・・・呼びつけたろかな。


 そして、ここで知っておくべきなのは父上と母上の馴れ初め!流石に聞いておいて損はないだろ。ま、もっと病む可能性は無きにしも非ず。



「あと、父上との馴れ初めも聞きたいのですが」


「馴れ初めですか・・・あれは確か、10年前に遡ります」



 そこからがある意味地獄だった。


 あまりにも長い惚気話が始まったのだ。戻ってきたテオや茶菓子を用意してきたじいやもびっくりマシンガントーク。なんならじいやは知っていたのか俺に「やったな?」という目線を向けてきた。ごめんってじいや。あとテオに関しては俺の膝の上でキャーキャー言ってる。女子か!



「こんなところかしら、まだあるけど聞く?」


「母上、それ以上はいいです。母上が父上に並々ならぬ思いを向けており今でもそれは収まることなくむしろ膨れ上がって息子たちにまで色んな意味で膨れ上がってるのでよくわかりました」


「色んな意味で?」


「2度とこの話題だけは口に出さないって意味で。あと母上、テオはまだ幼いので過激な内容はほどほどに」


「あ!うっかり・・・」


「兄しゃま、僕兄しゃまの事好きだからキスってしていいの?」


「テオ、俺とテオは兄弟だからしちゃダメだ。例外として頬や額になら祝福や親愛の意味だからしていいぞ」


「わかったー」


「母上・・・」


「ご、ごめんなさい!」



 中身が中学生男子の俺でもかなり恥ずかしい内容だ。甘すぎてコーヒーが飲みたいくらいだがここには紅茶しかなかったのでストレートで飲む。甘くないけどこれくらいでちょうど良かった。


 母上の暴走も治り、あとは近頃の話や魔法の話を聞いたりした。俺とテオはまだ魔法を使ったことがないから少しだけ憧れる。



「久々に母上と話すの楽しかった!」


「そうだな・・・俺も、あんな元気に話す母上を見たのは初めてかもしれない」


「そうなの?」


「・・・嗚呼、テオが誘ってくれたおかげかもな」



 なんとなくだけど、母上は異常に愛を欲しがる。メンヘラ体質だ。だから一人一人で構うより人数がいた方が元気になる。



「明日から食事は全員で食べるか」


「!やったぁ!兄しゃま好き!」



 抱きついてきた弟を抱きしめ返したい衝動を抑えながら頭を撫でた。


 弟最高!絶対死なせないからな!お兄ちゃんが守ってあげるからな!

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