第29話 武器職人②

「アタシはフェフィー・オータ、武器を愛する武器職人だよ。よろしく坊主!」



 フェフィーはそう言いながら手を差し出してきたので俺も手を差し出して握手をする。握手してびっくりした。母様の様な女性らしい手とは違い、ゴツゴツしていて皮膚も厚くタコが沢山ある。職人の手、そのものだ。



「なんだい、気になることでも?」


「いえ、とても良い職人だなと感じたので」


「そうかいそうかい!アンタもいい戦士だよ」


「ありがとうございます。改めて俺はリオン・ウィンタリア。ジェミニと同じく公爵家の次期当主です」


「ウィンタリアの!じゃあアンタの義理の弟か、グラキエス」


「ええ、自慢の弟でもあり弟子ですよ。今日はリオンの武器を新しく作ってもらいたくて来たんです」


「新しい武器?前のは?」


「訓練中に壊れました、それに今のリオンにはもう合わない様なので新しく作り直さないといけないものでして」


「へぇ、壊れたものは?」



 俺は後ろの腰につけてあるホルダーから壊れた両剣を取り出した。袋に入れたり縄で縛って持ってこようとしたら重さに耐えきれずに破れたり千切れたので急遽魔物の毛皮で作ったホルダーに刃をしまえるようにして持って来たのだ。フェフィーは両剣を見た瞬間、目を見開いて驚いた。



「なんじゃこりゃ、両剣の柄が壊れてるな。下から何かに押し出されたんか?」


「武器を見ただけで壊れた原因まで分かるのは貴女くらいですよ」


「弟の魔法でぼっきりと折れた」


「まぁ、経年劣化とかもあるだろうし・・・確かにこれは直せないね」


「・・・リオン殿、この両剣の刃の部分の鉱石って鈍剛白鉱ですか?」


「そうだけど」


「マジか!しかもよく見てみろよジェニエ、これだけの純度の鈍剛白鉱は中々お目にかかれ無いぞ!」


「そうですね…本当にリオン殿は脳筋ですね」


「喧嘩売ってるなら表出ろよ」


「売ってませんよ、寧ろ褒め言葉ですよ。鈍剛白鉱を使った武器なんてめったに使う人はいませんが切れ味は一級品ですが手入れはとても大変なものです。職人ならぜひ担当したいものですよ」


「十代前半でこれを使いこなしてたのか。グラキエス、アンタの弟ヤバいな!」


「ええ、本当に凄い子ですよ」


「注文内容の確認だけど柄の部分だけ付け替えればいいのか?」


「いえ、新しく鍛造してもらえないかと。これの二倍の重量で」


「「二倍!?」」


「そんな重くして、持てるんですか?」


「持て、る?」


「微妙な返事ですね」



 グラキエスが言ってるんだし多分持てるんじゃないかな〜って思ってるけど。最近なんて両剣が軽すぎて片手でぶん投げてたくらいだし。二倍でも取り敢えず持てるかもな〜って感じでいる。



「まぁいい、グラキエスの要望通りにしよう!ただ、金はそれなりにもらうけど」


「いいですよ、金の使い所なんて弟に貢ぐか武器の修理くらいにしか使わないので腐る程ありますから」



 グラキエス、言い方悪〜。冷ややかな目を向けているとグラキエスは俺を見て笑ってから形に手を置いた。



「リオン、これからフェフィーが武器を作るための検査をします。半日は拘束されるのでがんばってくださいね」


「え?」


「私はテオと一緒にそこら辺を散策しているので終わったら合流してください。まぁ、リオンにそこまでの体力が残っていたらの話ですがね」


「……あい」


「それでは」



 また、あの日みたいな地獄が始まるのかと思うと頭が痛くなる。本当に嫌だけど、現在トップの武器職人に作ってもらえるのは正直ワクワクする。グラキエスの背中を見送ってからフェフィーの方を向いた。



「それじゃあ始めようか、ジェニエも手伝ってくれるよね?」


「鈍剛白鉱を使った武器を作るのを手伝うのだけでも楽しそうですからいいですよ」


「おし!なら坊主、上を脱げ」


「…え?」


「体の作りを知りたいから触らせてもらってんの」


「……」


「そんな目で訴えられてもどうしようもできないので我慢してください」



 背に腹はかえられぬ…俺は渋々と上を脱いだ。インナーも脱いだほうがいいか聞いてみるがインナーは許された。ちょっとしてフェフィーが体の筋肉を触り始めら。腕や胸、腹筋に足など戦いにおいて重要な筋肉を丁寧に触っている。意外とちゃんとしているな。



「うん、やっぱ良いケツしてるねー」



 え、け、け、ケツ?今、尻触られてる?これも必要なことなのか?確かに尻にも筋肉はあるけどそこは、触る必要あるのか?スペースキャットになりながら考えを巡らせていた。



「姉上、普通にセクハラですよ」


「いやぁ見事なケツだったからつい」



 いや普通にセクハラかぁい!熟考して損したわ。服はもう着て良いと言われたので着ながら話を進めていった。



「坊主、アンタ弓も使ってるだろ?遠近両方を使って確実にダメージを与える戦い方を意識してね」


「!よくそこまで・・・エス義兄さんにしか話してなかったんですが」


「筋肉のつきかたや武器の状態を見ればアタシには分かるよ。どうせなら両剣と弓を一体化させた武器にしてみるのはどうだい?」


「一体化、させる?」



 まさかの提案に俺は驚いて思わず固まってしまった。え、何それフォルムチェンジ出来ちゃう感じ⁉︎超カッコいいじゃん!



「ま、アタシはそこらへん詳しくないけどジェニエが得意だからね。少し予算はかさむけど、どうだい?」


「姉上、流石にそれは難しいんじゃ」


「難しいことなんてないよ!アタシの技術とジェニエの技術があれば作れないものなんてこの世に存在しないよ!まだやること多いんだし早く次やるぞ!」


「はぁ、もうしばらくお付き合いくださいリオン殿」


「俺の武器を作ってもらうんだし、それくらい付き合う」



 そのあと、半日ほど俺らは工房にこもってどんな素材を使うかを話し合った。

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