第2話 認識と弟
俺、記憶だとここ3日間飲まず食わずで引きこもってたからそろそろ限界が近い。部屋のドアをそっと開けてから厨房に向かう。多分そこならパンと水があるだろうし。
自分の部屋から外を見てて思ったけど、本当に一面白しか見えないな。
まずシーン王国について俺が知っている情報をまとめてみよう。シーン王国は2400年くらい前に初代国王が島を開拓しようとしたのが始まり。けどこの島には邪悪な魔王が封印されていた。
初代国王は4人の賢者と5体の竜の力を借りて魔王を倒して平和になってから建国された。
建国した後は5つの区画に分けて、中央を初代国王の治める王都。
東を『春の賢者』、西を『秋の賢者』、南を『夏の賢者』、そして北を『冬の賢者』にそれぞれ治めさせた。それが現代でも続いている。
そしてここからウィンタリア家についてまとめよう。ウィンタリア家は王国建国の立役者となった4人の賢者の1人、『冬の賢者』の子孫の家系だ。その『冬の賢者』は東の大国の出身ということが作中言及されている。
東の大国は作者から中国とロシアを足して割ったようなイメージと言われているので雪原に覆われているのにチャイナ服という服装が主流である。
「あ、兄しゃま!」
「えぇ⁉︎」
「ん・・・?」
後ろを振り向くと、3・4才くらいの少年を抱えた若いメイドが驚いた表情をして僕を見ていた。頭の中で情報をまとめていたから後ろに人がいることに気が付かなかった。
それに幼い少年は俺のことを「兄しゃま」って呼んでいたから弟?まだ弟が死んでないってことは俺は5才か6才か。
「メアリ!おろして!」
「え、まずこのことを執事長に・・・!その前にテオ様を下ろしたほうが・・・⁉︎」
俺が部屋から出て来たことに驚いて混乱してるな。ちょっと申し訳ないし手助けするか。
「メアリ、だっけ」
「は、はい!メアリでございます!」
「テオは俺が見てるからじいやを呼んで来て。あと食事の用意も」
「は、はい、只今!」
下ろされたテオは俺に向けて笑顔で抱きついてきた。小さい、温かい・・・まだ、生きてる。
俺はテオの頭にそっと手を乗せて不器用に撫でた。
「兄しゃまが、なでなでしてる?」
いつもはしてなかったのか?記憶を思い出す前の俺はこんな風に抱きつかれても無反応だったしな。急に性格が変わったように相手するとなぁ・・・なるべく原作みたいに辛辣ではない感じでこれから話せばバレないか。
「気まぐれ」
「きまぐれ・・・でも、兄しゃまの手!すき!」
テオのフニャっとした笑顔を見た瞬間に心臓が撃ち抜かれた気がした。
こ、これが弟の破壊力・・・!これだから世の中にブラコンやショタコンが蔓延るわけだ。
「・・・俺がこの笑顔を守る」
「?兄しゃま?」
そう決意を決めると後ろからバタバタと足音が聞こえてきた。振り向くと先ほどのメアリと燕尾服を着た初老の男、多分じいやだ。
「リオンお坊ちゃま!3日間部屋に篭ったまま飲まず食わずなんて死んでしまうこで今後やめてください!じいやは、リオン様が心配ですぞ」
「すまないじいや」
元々リオンはプレッシャーや圧、過度な期待に対してとても弱い。だからか昔からよく気分が悪くなって部屋に引き篭ったりしていたらしい。
「食事の用意と湯浴みの準備も整っていますので」
「分かった。テオ、離れて」
「や‼︎‼︎」
「嫌か・・・」
「テオ様、リオン様はお疲れですから私と遊びましょう」
「兄しゃま、疲れてる?」
「・・・全く」
「嘘はよくありませんぞ。メアリ、テオ様を任せました。リオンお坊ちゃま、行きましょう」
「嗚呼」
俺はじいやについて行こうとすると後ろから泣き声が聞こえた。
「うあぁぁぁぁん!兄しゃまぁ!兄しゃまといるのぉ!」
「テオ様、リオン様とはまた会えますから!」
「いやぁあ!今一緒にいたいのぉ!」
「・・・じいや、テオの予定は空いてるのか?」
「ええ、空いてますが」
俺はその言葉を聞いてテオの元に向かって泣き叫ぶテオの頭を撫でる。
「兄しゃま・・・?」
「食事くらいなら一緒にいてやる」
「ほんと⁉︎」
「よろしいんですかリオン様?」
「別に、後ろであんなに泣かれたら寝る前に思い出して寝つきが悪くなるから。今日は気まぐれだよ」
「へへ、ありがとう兄しゃま‼︎」
涙と鼻水でべちょべちょになった顔で笑うテオを見て思わずハグしたくなる衝動を抑えて食堂に向かった。
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