第14話 病室内だけの雨
さっきから明見日はずっと
小言を言っている
なんて言っているかは
聞こえないが
どうせさっき俺が言ったことについてだろう
...いや俺の言葉を加賀城が言っただけだが
そんなに俺が言った事ってきもかったか?
俺は明見日さんを優先して言った
つもりだったのに
ーーー明見日も目を覚ましたところだし
そろそろ俺も頭の検査いくか
加賀城と明見日がイチャコラやっているのを
横目で見て
少しニヤリと笑いながら
席を立つ
自分ではそのイチャコラを邪魔しないように
何も言わず立って
気を使ったつもりだったが
それが気に食わないのか
加賀城が話しかけてくる
「ん?何も言わんとどこ行くねん」
「いや~明見日さんも目を覚ましたとこだし、そろそろ頭の検査に行こうかなと思って」
せっかく空気をよんでなにも言わずたったのに
「ふ~ん。了解や~じゃあ行ってき~」
「へいへい」
そのまま病室を出ようとする
「おい。ちょっと待てよ。」
後ろから
まるで自分が恐喝されているかのような
気分になる声を掛けられる
「ど、どうしたんです?高ノ宮さん」
後ろを振り返っては見たものの
やっぱり怒ってるよなこれ
「一人で行くのか?」
「ま、まぁ~そういう事になりますね」
「倒れたらどうすんだよ」
「ここは病院ですし、ナースさんとかが徘徊してますよ」
「誰も来なかったらどうすんだよ」
「...その時は覚悟を決めるしかないですね」
気を遣わせないように
作った笑顔で笑ってみる
逆にそれが気に障ったのか
高ノ宮の眉がぴくぴくと動き始める
「へ~そうか」
「わかってもらえましたか」
「...」
返事は...なしか
「じゃあ俺はこの辺りで」
病室のドアの取っ手にふれようとする
「...とまてよ」
?
今何か言ったか?
「だ~か~ら~」
なにかを言ってるが
よく聞こえず振り向く
「ちょっとまってよって言ってんだろが!!!!!!!!!!」
その瞬間顔面に
だいたい時速30キロぐらいの速さのこぶしが直撃する
???????????????????
床に倒れこみ顔面を抑え
悶絶する
い...今何が起きた!?
俺は理解が追い付かないまま
少し涙目になる
「お、おい!大丈夫なんか!?山崎!」
加賀城が俺のほうに走り寄ってくる
「い、いやマジで大丈夫」
正直、男が顔面を女性に殴られ
少し涙目になっているところなんて
見られたくない
その一心だった
「で、でも鼻血出てんで!?」
「え?」
鼻を触ってみる
なにかべちゃべちゃしたものが手につく
それを見るかのようにして顔を下に向ける
そこには自分の血と思われるものが
下に向かって垂れ落ちていた
「あ、ほんとだ」
「とりあえず鼻血止めな!」
加賀城は自分のポケットを探り
もう枚数がほぼないぐちゃぐちゃの
ポケットティッシュをだす
「とりあえずこんなんしかないけど使って」
「あ、ありがとう」
ポケットティッシュでも
友達の御厚意はありがたいものだ
そんな友情ストーリーは近づいてきた
足音によって終わる
「お前あたしの事無視したよな?」
「そ、そんなことないですよ」
「じゃあなんであんとき止まらなかった」
「聞こえてなくて」
「聞こえてなくてじゃね~~~~んだよ!!」
加賀城の隣にいた山崎の襟元をつかみ
気づけば身長170くらいあるはずの
高ノ宮より高い位置にいた
「え?あ、あの~俺今から何されるんすかね~」
少し後輩口調で落ち着かせようと試みる
「あ?なんだその口調。なめてんのか?」
...が失敗に終わった
てかもともと暴力系なやつだとは思ってたがここまでとは
気づけば鼻血は出ていなかった
いや...血の気が引いただけか
俺は覚悟していた
今から起こることすべてに
だが高ノ宮は俺の襟元を離した
だが俺も少し浮いていたからか
地面と衝突し
今部位のなかで一番痛い
尻を触る
そんな中
高ノ宮は話し始める
「あたしだって感謝してんだよ」
「ん?」
なんか始まったぞ?
「あたしを助けてくれて、飯まで食べさせてくれて、あんたはあたしの事なんにも知らないくせに一晩泊めてくれた」
おいそれは今この場で言ったら......
「だからあたしはあんたに倒れてほしくないの!」
よく見ると高ノ宮は少し涙目になっていた
それに気づかれないように一生懸命に涙を手で拭っていた
しかし涙を抑えれずに
すこしぽたぽたと地面に水滴が落ちていくのが見える
高ノ宮も本気でおれの事考えて....
「だからあんたには一人でいってほしくなかった。」
そうか。
...いやでもその恩人を殴るか普通!?
「だからこうするしかなかった!本当に...ごめん」
なんか悲しい展開になってますけど...
俺は高ノ宮が泣いてるの目前にしても
何も言えない
いや
自らが望んで何も言おうと
しなかった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます