第11話 保健室

「モテ男?」


加賀城が首をかしげる


「そう!モテ男!」


自分でも何を言っているかわからない


ただ俺はチキンだったということは分かる


「俺を褒めてもなんも出てこ~へんで」


加賀城はにやにやしている


こいつ分かって言ってるだろ


「まぁ~確かにそうだな。だって加賀城の狙いは~」


その時加賀城は勢いよく

山崎の口に手をあて

塞ぐようにする


「なぁ~山崎~分かってるんやろ~?」


そう俺は加賀城が誰を狙って...いや

誰を好きなのかは知っている


そう...それは


加賀城は

口を塞いでいた手を

下ろす


そして二人とも小声で話し始める


「たしかに本人がいる前で言うことではなかったな。すまん加賀城」


「そうやで~俺が明見日に好きですってばれたらどうすんねん」


そう

こいつが好きなのは明見日だ


正直


このイケメン顔の加賀城+幼馴染というものがあれば


告白は成功するだろう


ただこいつもチキンだった


失敗するのが怖いらしい


「で...このお前に乗ってる女の子は誰や」


女の子...?


俺は右隣にいる加賀城から目線を外し


前を向く


そこには右を向いたまま


石化している少女...女性がいた


「あ~こいつね。俺が階段で倒れているのを見て助けてくれたんだよ」


「ほんまに⁉」


加賀城はその女性の手を握る


「いや~まじでありがとうな!俺の友達助けてくれて」


手を握られた途端

石化が解ける


「え...?ま、まぁ~当然のことをしたまでです」


女性は顔を赤くしたまま言う


おい⁉


さっきのキャラはどうした!


もうキャラ崩壊始まってるぞ!


そして加賀城の手が離れた時に


俺に近づき小声で言う


「な...なんじゃあのイケメンは⁉」


俺も小声で言う


「俺の友達の加賀城というやつです。聞いたことないですか?」


その女性は目を輝かせる


「我、保健室登校だったゆえ、そんな奴を聞いたこともなかったぞ!」


その言葉を言うと

山崎から顔を離し

再度、加賀城のほうを向く


「あ...あの!私...2年4組のしおゆいと言います。よろしくお願いします。」


突然の自己紹介に

加賀城は首をかしげる


「え...?あ~俺2年1組の加賀城や!よろしく」


加賀城はアイドル級の笑顔を見せる


「ところでじゃ...」



口調が戻ったぞ?


「なんでこいつがここにいるのじゃ!」


塩瀬が人差し指を

加賀城の後ろのほうに

向かってさす


その先は...


「あんたとは会いたく無かったんだけどな」


その言葉を言ったのは高ノ宮だった


理解が追い付かず

俺はとっさに質問をする


「た、高ノ宮...さんはこの塩瀬さんとお友達なんですか?」


すると二人共こちらを睨みつける


「そんないいもんじゃね~よ!」


二人そろって言った...


仲は良くなさそうだが

相性はよさそうだ


「我とこいつは勝負仲間なんじゃよ」


「勝負仲間?」


勝負仲間...


なにを言っているかよくわからない


「そうじゃよ。こいつ小学生の時から我に付きまとってくるんじゃ」


「仕掛けてくんのはそっちだろうが!」


話がよく分からない


そんな時に...


「あ、あの~私も喋ってよろしいのでしょうか」


明見日さん。

忘れていた


「え...あ~はいどうぞ」


塩瀬はおとなしくなった


「とりあえず山崎くんの容態も確認しましたし教室に帰ったほうがいいのではないでしょうか」


時計を見るともう9時40分だった


「あ、ほんまやな~!じゃあ帰るか~。山崎はおとなし~しとけよ」


「すこし休憩したら帰ると思うから先生に言っといてくれ」


「え~そうなんか~分かった。言っとくわ~」


「すまんな。加賀城」


「気にすんなって。俺と山崎の仲やろ」


加賀城は親指を上にたてる


「山崎くん。」


「ん?どうしたんですか?明見日さん」


明見日さん。

俺のせいでトイレ吐き事件(そんな事件は存在しない)

が起こったのに


俺に接してくれるなんて


やっぱ明見日さんは天使だな~


「一人で帰れますか?私がついていったほうがいいですか?」


明見日から一般生徒なら一秒でYesと返す質問が来た


ただ俺はそんな性にまみれた野獣どもとは違う


「そ、そんな!明見日さんのお手を煩わせるようなことは...」


明見日からすぐ返答がくる


「私は迷惑だと思っていませんよ?」


くっ...


がんばれ!


俺の理性!


「いえいえ!後、病院行って帰るだけですから!」


それもすぐ返答がくる


「びょ...病院ですか⁉どこか悪いのですか⁉」


あ、明見日さんや

そんな

天使の顔で


心配そうに見ないで...


もう俺の理性が...


分かりました行きましょうの「わ」

の部分で待ったが掛かる


「あたしが行くよ」


それを言ったのは高ノ宮だった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る