第10話 本当の主人公


目を開けるとそこは保健室だった


体を起こす


頭がうまく回らないし


頭が痛い


足音がする


近づいてくる


「あら。山崎くん。起きたのね」


誰だっけこの女の人


確か保健室の先生...


「あなた階段のとこで倒れていたらしいのよ」


倒れていた?

なんでだっけ


「幸い血とかは出てない様子だったけど、頭蓋骨にヒビとか入ってるかもしれないから帰ったら病院に行きなさい」


頭を触ってみるが感触的に目立った外傷はない


ただ頭は痛いので

頭蓋骨骨折しているかもしれない


「あ、あのありがとうございます」


感謝の気持ちを述べる


「礼ならその子にも、その子があなたを見つけて、先生に知らせてくれたのよ」


「あ、はい」


左右を見渡す


それらしき生徒の姿はない


俺に見えているのは

白い服を着た保健室の先生


...と


先生の子供らしき姿の子だけ


...?


先生に子供?


いたっけ?


その子をもう一度見つけようとした


その前に声を掛けられる


「お主、我が見えておらぬのか」


オ、オヌシ?


「まったく無礼なやつじゃのう」


言葉が聞こえる方向を向く


そこには身長が140位しかない黒髪の女の子がいた


「やっと目をあわしてくれたか」


その言葉遣いに困惑しながらも

さっき言われた要件を思い出す


「あ、ありがとうございました」


子供だからと思い

不器用ながらも

頑張った作り笑いをする


「うむ。よろしい。しかしその気持ち悪い笑みをやめてくれ」


こ...この

クソがきゃぁぁぁぁーーーーー!


おっといかん


子供相手についむきになってしまっては...


目線を下にする


高校の制服を着ている

それもうちの高校


ちょっと待てよ?


高校生?


これで?


そんな事を考える


「お主、今我に対して無礼なことを考えているであろう?」


俺は感づかれたことにより少し顔を上げる


「ほれ。図星じゃ」


背中から汗が流れる。


「すいません。あなた...超能力者ですか?」


図星なことにより頭が混乱し、今は頭がうまく回らないことにより

このような返答となった


小じ...彼女は拳を力強く握る


布団越しだが俺の上にまたがり


こちらに向かって思いっきり...


「おっじゃまっしま~す!」


ドアが勢いよく開く


彼女の拳が顔に当たる寸前で止まる


そして声がするほうに向く


この声はもしや!


「おう!山崎~元気にしとったか~」


「う~す加賀城~」


加賀城さんはいつもいいところで~


...いい意味でも悪い意味でも


「あ、山崎くん。さっきぶりですね」


そこには一輪の花のように美しい女性の姿があった


...さっきは俺のせいでたぶんその花が汚れたが


「あ...明見日さん...さ...さっきぶり...です」


相変わらずきょどる俺


二人だけだけかと思っていたがそこにはもう一つ声がした


「ち、ち~す山崎~」


そこには外見だけは一級品の女性がいた


...だけは


俺は驚きを隠せなかった


「た、高ノ宮!...さん」


俺は今二つの事に驚いている


一つ目は高ノ宮が来たこと


そこは誰でもわかる


もう一つは...


「か、加賀城さ~ん?」


「どうした~?や、山崎~」


加賀城は山崎の真似をしながら言う


ただ山崎にとってそんな事はどうでもよかった


「お、お前...」


その時

山崎には加賀城との思い出が頭に流れていた


中学3年生

「お~い山崎~一緒に帰ろうぜ」


後ろから声が聞こえたので振り返る


「分かった~かがし...」


そこには加賀城と一緒に女子もいた


案の定そいつらはこっち睨みつけている


俺は言葉が詰まる


「あ、そうだった~たしか今日も家の用事があって」


「なんや~いつもそれやな。俺と帰りたくないん?」


そういうわけではないが...


「本当に用事があって...」


「あ~はいはい分かったわ~でも空いてる日あったら教えてな~」


「分かってる」


そう

これが俺のいつもの日常


いつも加賀城のまわりには

何かと女子がいる


まぁ~上のものに惹かれるのは当たり前である


上のものに着くやつは

下のものに容赦がない


でもそれが日常


何も変わらない


どんなに睨みつけられても

蔑んだ目で見られようとも


俺は俺だ


そして今がある


加賀城はいいやつだ


俺みたいな陰キャのぼっちに限りなく近いやつとも友好的にしてくれる


俺はここに中学2年の時に引っ越してきた


中学2年にもなると


すでにグループが出来上がっており


俺が入れるスペースはなかった


しかしそんな時に俺に声をかけてくれた人がいた


明見日と加賀城だ


その二人はおどおどしている

俺に優しく接してくれた


そしていろいろなことを教えてくれた


俺の家と明見日が住んでいる家が近い(徒歩2分ぐらい)こと


明見日と加賀城は幼馴染な事


後はなぜ俺に接してきたかということ


加賀城は

俺と話してみたいということらしい


明見日さんは


困っていそうだったからということ


相変わらず優しい!


どちらも優等生で

基本的に皆からの注目の的...らしい


そんな人達と俺はという関係はとても光栄な事だと思う


席も近いし俺は恵まれたと思っていた


だがそのせいか俺は周りから除け者扱いされた


男子からは


”俺はまだ明見日さんと話したこともないのになんでお前だけ”とか

”お前みたいなやつが明見日さんと友好的になろうとかおこがましい”とかだ


女子からも...まぁだいたい想像つくだろう


そう。加賀城の事だ


俺の数少ない友達(陰キャ)曰く

中一の頃から加賀城は女で”遊んで”いるらしい


そいつが言う”遊ぶ”の意味が間違っていなければこれは

相当の問題だ


そして俺の目から見ても周りには常に複数人の女子がいる


モテ男ってすげーなとしか俺は思わなかった


しかし他の男子はそれが気に食わないらしく

加賀城を毛嫌いしていた


そのせいか加賀城は女子としか話さない


それでまた男子から嫌われる


繰り返しだ


しかし俺は加賀城とは仲良くしたいと思っていた


加賀城や明見日の事を本当の幼馴染のように思いたい


そう願っている


そんな友好関係が続き...

今に至る


そして俺はその思い出を言葉にする


「お...モテ男って大変だよな~」


俺はヘタレであった


本音は言えなかった


女で遊ぶな!


だなんて

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