第18話 フェミニナイツ

 フリージェンダー学園地下。フェミニスト軍事戦略立案室。

「ステラとアリスはアンチフェミーに下り、カルメンは似非性別詐称罪で逮捕されてしまいました。超A級フェミニストがあなた方二人だけになるとは前代未聞の事態です。エルル。筆頭超A級フェミニストとしてどう責任を取るつもりですか」

 とプラムは自分の責任を棚上げして、エルルを責め立てる。


 それに対してエルルはなにも答えない。


「ちょっと。話を聞いていますか?」

「無論。聞いている」

 とエルルはプラムを一瞥する。

「それならなにか答えたらどうですか?」

 エルルはそれに対しても、何も答えない。

 その一方でプラムはいきなり膝から崩れ落ちてしまう。


「姉さん。斬りましたね。プラム少尉を」

 とオーブリーはエルルがなにをしたかに気付いたようである。


「まさかエルルさん。あなた、私の身体になにかしましたか?」

「斬られるというイメージを送っただけだ。首と胴体が繋がっている証拠にお前は私と会話することができているだろう?」

 とエルルは答える。



「あなたは恐ろしい女ですよ。目で私を切り捨ててしまうとは」

「プラム少尉。これが私の回答だ」

「どういう意味です?」

「本来、戦力は私とオーブリーの二人で十分だ。現に虎原の邪魔がなければ私は彼女達を殺せていたでしょう」

「その前に二人を殺すべきでしょう。プリンセスの誘拐を企んだ人間は問答無用で切り捨てるべきです」

「ごもっとも。次は首をいくつか持ってきてみましょう」

 とエルルは堂々と言った。



「皆作戦を実行する前は同じようなことをいうものです。現にステラ、アリスも同じことを話していましたから」

「なるほど。しかし私はあの女がいなければこの国を滅ぼすことも可能だ」

「現首相にあの女などと不敬な」

「私はこの国で二番目に強い。つまりフェミニストの頂点だ」

「あなたが自称しても誰も疑わないでしょうね。しかしご息女方もいらっしゃいますので、己惚れ過ぎないようにしてください」

「今この国にいない者の話をしても仕方ない」

「じき帰ってくるはずです」

「ならその前に約束を果たすとしよう」

「待ってください。フェミニズム警察がアンチフェミーの主力二人の存在を感知しました」

「居場所は?」

「似非トランスジェンダー刑務所です」

「早速チャンスが来た」

 とエルルはにやりと笑う。



「いえ。似非トランスジェンダー刑務所はこのフェミニズム政治にとって要となる施設の一つです。念には念を入れて、フェミニナイツの二人を派兵します」

 とプラムが言う。


「フェミニナイツだと」 

 エルルの表情が険しいものになる。

「姉さん。私は大丈夫ですから落ち着いてください」

「プラム。貴様、判断を誤ったな」

 エルルはオーラを刀状にして、居合の構えをした。


「こっ、これは総理大臣直々の命令なのです」

 とプラムが言う。

 エルルはプラムを両断するのを止めた。


 それと同時に、フェミニスト軍事戦略立案室にあるモニターに映像が投影される。

「久しぶりねエルル。あなたが率いているというのに無様ね」

「高城総理大臣。フェミニナイツの派兵は撤回していただきたい」

「無理ね」

「私の戦力に不満でしょうか?」

「フェミニナイツは今の不甲斐ない超A級フェミニストよりマシよ」

「私よりマシだと。それは侮辱です」

「エルル。あなた、私に随分反抗的ね」

「顔だけの猿共に関してははっきり言わねばなりませんから」

「姉さん。高城総理大臣閣下の御前です。感情を抑えてください。私は大丈夫ですから」

 オーブリーはエルルを必死に宥める。

 オーブリーに言われてエルルはようやく冷静さを取り戻した。


「取り乱しました。しかし高城総理大臣。約束していただきたいことが一つあります」

「不埒なことをしたらフェミニナイツの沙汰はあなたの好きなようにしなさい」

「高城総理大臣閣下。フェミニナイツはあなた直属の部隊の筈。そんなことをしたら示しが……」

「私の決断に逆らうつもりですか? 少尉如きが」

「いえ。過ぎた発言でした。お許しください」

「ではエルル・L・ルル、オーブリー・B・グリーン。二人はただちに似非トランスジェンダー刑務所に行きなさい」

 と高城が指示を下すと、通信が切れた。


「プラム少尉。作戦遂行のため、似非トランスジェンダー刑務所に急行する」

といい、エルルはオーブリーを引き連れて去っていった。


 都内。タワーマンション最上階。プレイフロアにて。

 男二人が女百人と淫蕩にかまけていた。

 一人は白い髪と赤い目が特長の小柄は男性。黒髪を無造作に束ねた筋肉質な大男である。

 小柄な方はジェミニ、大柄な方はスコーピオンと言う。

 彼らはフェミニナイツ。総理大臣直属の特殊戦闘部隊であり、唯一権利を認められる男性達である。

「ふぅ~。これで最後の一人か。所詮フェミニストいっても女だね」

 ジェミニが言う。


「ぶおとこペ〇スは犯罪棒。イケメンペ〇スは無罪棒なり。これがこの世の理なり」

 スコーピオンが呟く。

「それ、ルッキズムに反対しているフェミニストに見つかったら滅茶苦茶言われるよ」

「事実を言っているだけだ」

 とスコーピオンはズバリ言う。



「フェミニズム警察だ。貴様らを異端思想啓蒙罪で逮捕する」

 プレイフロアにフェミニズム警察がやってきた。

「追加らしいぜ。ジェミニ」

「君の性欲はとんでもないなスコーピオン」

「お前の方もな」

「わっ、わいせつ罪も追加しますよ」

 フェミニズム警察官が警告しても二人は涼しい顔をしている。


 先に動いたのはスコーピオンだった。彼はフェミニズム警察官に壁ドンし、

「俺だけ見てろ。お前は俺のものだ」

 と甘い声で囁く。



「はっ、はい」

「よ~し。みんなでパーティーしよう」

 とジェミニがこの場を仕切る。


 フェミニズム警察官達も二人の毒牙にかかるのであった。


 二人の性欲と食欲が逆転し、用済みの女を追い払った頃。

 二人のスマートフォンに緊急コールが二回繰り返された後、現場のマップが通知される。

「ターゲットは二人か」

「しかも二人共綺麗な女らしい」

「それにだよ。美しいエルルちゃんと可愛らしいオーブリーちゃんだよ」

「俺の心のアンテナが勃起する」

「うん。僕のもするよ」

 スコーピオンとジェミニは下品な笑みを浮かべる。

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