第31話 Rayperを止めろ
「皆様。内閣府から放送がございます。繰り返します。内閣府から放送がございます。スマートフォンやパソコンをお持ちの方は各種動画投稿サイト、テレビをお持ちの方はテレビを付けてください。ラジオをお持ちの方もテレビをお持ちの方と同じくラジオを付けてください。繰り返します。内閣府から放送がございます。この放送の内容を知らずに違反した場合、最悪逮捕される恐れがあります。繰り返します。内閣府から放送がございます」
あの後アンチフェミーを解散したアリス達であったが、異常になっていくこの国を変えたいという思いを拭うことができず、アンチフェミーの臨時基地に集まっていた。
「なによ。内閣府から放送って」
「分かんないや」
「ろくでもないことだよ。きっとね」
「どちらにしろ。私達のやることは変わらないんでしょ。アリス」
アリス、ステラ、オーブリーの会話にカルメンは割って入る。
「ええ。勿論よ」
とアリスはゆるぎない意思を示すように力強く頷く。
四人は沈黙した。放送が開始されたからだ。
「クソオスクリーニング作戦により、攻撃性のある男性や反乱分子はいなくなりました。ネオ日本はより平和になったと言えるでしょう。しかし代償もあります。それは過剰な人口減少です。日本人の半分は生物学的には男性で、その九十%がいなくなったということは日本の人口がほぼ半分になったということであります。そのため、人口回復政策を随時行っていきたいと思います。その政策の一環としてこの国の全女性に人工授精してもらいます。また人工授精の成功のため、全女性に生理周期管理アプリを入れてもらいます。このアプリを入れない場合、国に敵対したとみなし、逮捕します。また人工授精プロセス実行ロイドRayperによる人工授精を拒否する場合も同じく逮捕されます。有事です。協力お願いします」
と言って高城は放送を終了する。
「酷いよ。こんなの人権軽視だ」
「自分達で大量虐殺した癖に酷い話だね」
「それより。あの声、ベルに似てなかった? というか、ベルよね。あの声」
「それは気のせいだと思うよ。ほら」
と言ってオーブリーはアリスに動画投稿サイトの動画を見せた。
そこには高城の姿が映し出されていた。
「じゃあ聞き間違えたってこと?」
とアリスは当惑していた。
「ベルに会いたいからって変になってるんじゃないの。あんた」
とカルメンは嫌味っぽく言う。
「というかあんた達はなんにも感じなかったの? 明らかにあの声はベルのものでしょう?」
とアリスは皆に訴えかける。
「いやアリスの言う通りだよ。あの声、すごくベルに似てるよ」
「まぁ。似てないってことはないと思うけど……」
アリスとステラに言われたカルメンも、段々違和感を持ち始めるようになる。
「それより……今はクソったれRayperを破壊するわよ。準備して」
アリスはその場にいる全員を仕切り、戦闘準備を進めるのであった。
『ロボットにレ〇プされました。怖いです』
『国の横暴。これは許されない』
『Not Rayper』
『Not Rayper』
SNSはNot Rayperの投稿で埋め尽くされる。民衆の怒りは電脳に収まることなく、現実にも現れた。
『Not Rayper』の文字が書かれたプラカードを掲げてフェミニストや一般女性等が練り歩く。彼女らの怒りの声が重なり、ネオ東京を揺さぶる大合唱となった。国の理不尽に抵抗する怒りの一大集団でとなった。
「Rayperです。人工授精プロセスを実行するために協力してください」
男性の形を模した人工授精プロセス実行ロイドRayperがデモをするフェミニスト達の前に現れる。
「スクラップにしてやる。このペ〇スロボットがぁ」
フェミニスト等は体中からオーラを迸らせ、大量に現れるRayperに抵抗し始める。
「抵抗を止めてください。人工授精プロセスを実行できません」
「お前達との子供なんて産みたくない」
「お前達のせいで涙を流している人がいる。ぶっ壊されろ。鉄屑がぁ」
フェミニスト対Rayperの戦いは途中、フェミニスト側が優勢になった。
「人工授精プロセス実行のため、Rayperはクソメス調教モードへシフトチェンジします」
押していたフェミニストであったが、クソメス調教モードになったRayperに次第に押されていく。彼らは戦闘に適した姿にトランスフォームしたのだ。
「君達は逃げるんだ。私達が必ず食い止める」
フェミニスト達はデモに参加している一般女性達に避難を促す。しかし、Rayperが包囲し一般女性達に避難できないようにした。
「誰も守れないなんて……不甲斐ない。これでなにがフェミニストか」
フェミニスト達はRayperにマウントを取られ、ボコボコに殴られる。自分の非力さを憎み、涙を流している。一般人女性達も同じような目に遭い、恐ろしさと惨めさに涙を流している。
「神拳F。水面八岐大蛇」
八首の蛇を象った水流がRayperの胴を貫き、破壊する。アリスが包囲の外側から攻撃したのである。
それに続いたのはアリスと反対の場所にいたステラである。
「後ろは任せて。神拳G。星の支配者」
彼女は重力を操作して、Rayperの動きを封じた。そこから更に重力の作用を強くした。するとRayperは自重に耐え切れずに破壊された。
「私達はアンチフェミー。あんたらがクソ嫌ってる反乱分子よ。でもね。私とあんたらの気持ちは同じよ」
とアリスはフェミニストと一般女性の方に視線をやる。
「私の目は好きな奴を映すためにある。私の口は好きな奴に愛を囁くためにある。私の手は惚れた奴を抱きしめるためにある。私の腹は惚れた奴との愛を育むためにある。私達はレ〇プされるために生きてるんじゃねぇんだよ」
「惚れた奴との愛を育むためだなんて、セクハラだ」
一人のフェミニストが批判する。
「私が好きな奴は女だ。男とのセッ〇スを連想してるんじゃねぇよ。馬鹿」
「一人で生きたい人だっている」
「なら勝手に生きてろ。私の言いたいことをよく考えろ。馬鹿」
アリスは粗探しをしてくるフェミニストに怒鳴りつける。
「私達は好きな奴と好きに生きたい。言いたいことの本質はそれなんだよ。てめぇらの中に国の奴隷みたいに子供を産みたい奴がいるかって聞いてるんだよ」
アリスは吠える。
(0だ。国の奴隷になりたいなんて奴は)
アリスはこの問いに対して、全員がノーと言うと確信していた。
「「「「「「「ノーだ」」」」」」」
その場の声が重なった。
「嘘っぱちの女性ファーストの時代を終わらせる。真に人間が生きられる国を私達で作り上げる。このクソ時代を終わらせる奴は声をあげろ」
「「「「「「「おう」」」」」」」
その場の声は怒りの波のように重なった。
総理官邸。
「総理。アリス・F・ミラーのせいで民衆が暴動を起こし、Rayperが次々と破壊されています」
「青い思想は愚民共を躍らせるのか」
「総理。レディー・オスカーを出動させましょう」
「ええ。そうしましょう。アリスを潰せば奴らも国に従うだろう」
民の怒りは感染症のように国中に波及していった。「Not Rayper」の声は途切れるどころか、どんどん大きくなっている。往来に人型のスクラップが散らばっていることが抵抗の激しさを現わしていた。
「作るぞ。私達の国を。神拳F。水面刃」
アリスは高圧の水流でRayperを切断して破壊する。
ステラは重力で押しつぶして破壊する。
カルメンとオーブリーはオーラの操作によって身体能力を強化して叩き潰している。
「はぁ……はぁ……きりがないよ。Rayperの生産元を破壊しないとずっと続くよ。これ」
「分かってる。でも今襲われている人達を見捨てることはできない」
(ベル。見ておきなさいよ。あんたの見たかった世界はもう少しよ)
アンチフェミーとフェミニスト連合軍の勢いは衰えていないが、決め手のないというのが現況であった。
しかしその流れを止めるためにレディー・オスカーが急襲してくる。
フェミニスト連合軍はレディー・オスカーに勝てないと感づき、その場から蜘蛛の子を散らしたように逃げていく。
アリスは腹を立てたが、邪魔者がいなくなってマシかと気持ちを切り替えた。
「これ以上Rayperは破壊させないし」
「アイーダ。バフを掛けるわ。だからあいつらを壊滅させなさい」
レディー・オスカーの二人が彼女達の前に立ちはだかってくる。
「オーケー。こいつらは皆殺しだし。総理の言う事聞いてればよかったし」
「馬鹿女。てめぇはレ〇プされたいっていうのかよ」
アリスはあまりにも簡単に言うアイーダに怒りを示した。
「総理の命令なら子を孕むことも辞さないでしょう。たとえ情のない相手でも」
「そうだし。私らの覚悟は決まってんだ。てめぇらも国の奴隷として使われろし」
クインとアイーダはアリスの考えと真逆の事を言う。
「上等だ。レディ―・オスカー」
「僕達は勝つよ。絶対に」
アリスとステラの気持ちが重なった。
「アリス、ステラ。あんた達が要よ。私とオーブリーはサポートに回るわ」
「カルメン。あいつにはあんたのセカンダリーは通じないわよ」
「私のセカンダリーはもう一つある。神拳T.。ビューティフルヴィジョン」
カルメンがセカンダリーを発動すると、目の色が変わる。色の変わった目でアリスとステラの二人を見つめる。
「私のビューティフルヴィジョンはあんた達の新しい可能性を引き出す。セカンダリーを発動しなさい」
「出し惜しみなんかしないって」
「分かったよ」
アリスとステラはカルメンの提案を承諾する。
カルメンはセカンダリーを発動したアリスとステラを視界に入れる。
「神拳F。ビューティフルヴィジョン」
カルメンのセカンダリーが発動した瞬間、二人の身体からオーラが更に湧き上がる。
沸騰した血が駆け巡った。
今まで生きてきて一度も体験したことはないが、嫌な感覚ではない。
「「ラストフェーズ」」
アリスとステラはセカンダリーより更に上の領域へと到達した。
「私のビューティフルヴィジョンありきだけど、こんなにもすごいなんてね」
カルメンは想定外の成果に、施した自分自身も驚いていた。
「私はもうリタイアよ。頼んだわよ。この国のこと」
「勝つわ。絶対に」
アリスは疲労困憊のカルメンに対してサムズアップした。
その瞬間、アリスはカルメンの視界から姿を消した。
「速過ぎ……」
「なっ? いつ移動してたし」
「まずは一発お見舞いしてやるよ。人形遊び女」
オーラを纏った一撃で思い切り顔面を叩いた。
アイーダは大きく吹き飛ばされ、背中を強く打ち付けた。
「調子に乗るなし。お前レベルの奴なんて何人もぶっ殺してきたしっ」
アイーダは焦りと焦燥に駆られていた。
「そう。なら期待してろよ。血だまりに沈めてやるから」
アリスは見栄を張るアイーダを更に挑発し、不敵な笑みを見せた。
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