第26話 強敵
「あいつはS級フェミニストのアイーダ。つまりね、ベル。あんたが今まで戦ってきた奴の中で一番ヤバいってこと」
「なら本体を狙う方が早そうだな」
「ええ。あんたはアイーダを狙いなさい。私達であの白い怪物を抑えるわ」
「頼んだアリス」
「ええ。神拳F。水面八岐大蛇」
アリスは八首の蛇を白い怪物の方へと差し向ける。しかし白い怪物は水面八岐大蛇をものともしない。
「カルメン。後、変態女装野郎。あんた達も手伝いなさい」
「あんたに命令されるなんて癪」
「私の名前はニセスよ~。よ~く覚えなさい」
と二人はアリスに抗議する。
「黙ってろ。今は緊急事態だぞ。これでベルが死んだらてめぇらは責任とれるのか? てめぇらのたまだけじゃすまねぇからな」
アリスはガチギレして、カルメンとニセスを黙らせた。
「カルメン。ニセス。アリスの言うことを聞いてやってくれ。失言したら私から窘めておくから」
「もう。仕方ないわね。ベルの頼みなら聞いてあげるわよ」
「よし。それなら私もアイーダを狙うか」
ベルはセカンダリーを発動させた。
「セカンダリー+春雷モード」
ベルのセカンダリーの外装に雷が纏われた。
「アンチフェミニズム神拳。飛雷」
と言った瞬間、彼女はいきなりアイーダの下へと接近した。
「ベル・ウララ? お前にそんなスピードはなかったはずだし」
ベルはアイーダの言葉に応じることなく、亜光速のゼロ距離戦を開始した。右ジャブを打つ。
アイーダはそれに簡単に対処する。次は左足のローキックだ。アイーダはそれを容易くブロックする。防御をすることもおっくうになったのか右ジャブ、左ストレート、ハイキックを受けた。
しかし、アイーダはそれに動じることはなかった。
「そんな馬鹿な」
「よわっちいし」
「オーラの大半をあの白い怪物に使っているんじゃないのか?」
「全然だし。それにあんた程度の考えることなんてお見通しだし」
昇雷から降雷を使い三次元的な移動を亜光速で行う。アイーダの後ろに回ったベルは
「アンチフェミニズム神拳。業火雷拳」
炎を纏った拳を飛雷で加速させて、背中を突いた。
アイーダの身体は一瞬大きく揺れる。
振り返ったアイーダの顔には焦りの表情は一切ない。
「それが本気?」
「くっ。これも通じないというのか」
「少しびっくりしたし。でも、それだけ」
(見栄を張っているとは思えないな。本体を倒せない以上、撤退するしかないか)
「何を考えているかは知らないけど、命令は全滅させること。エルル達の方にはイブが対処しているからお終いってことだし」
「仕方ないか」
「諦めたし?」
「まさか。むしろこの状況を乗り越えてやろうと思ったんだ」
「頭悪いね。ベルって」
「大切な約束を守るためだ。命も惜しくない」
ベルのオーラは更に増大した。
それに気付いたアイーダも身構えた。
二人はラッシュを打ち合った後、距離を取る。
「投雷」
ベルは雷を投げるが、アイーダは空間の穴を別の所から開けて白い怪物の腕を発生させて防ぐ。
「私の力は下にいる奴の千倍って思ってくれた方がいいし」
「上手い脅しだ」
「脅しじゃなくて事実だし」
「なら通用するまで戦い続けるさ」
ベルは投雷の量を二十に増やして、一気に攻撃を仕掛ける。
「無駄だし」
アイーダはまたもや空間に穴を開けて、腕を発生させる。
「変なことやるなし」
「そら。何個でも投げてくれる」
ベルは場所を変えながら投雷を繰り返す。その度に穴が増えていき、出る腕の量も増えていく。
「むかつくし。無駄に時間を浪費させられるってすげぇ不快だし」
「それなら私がそっちに行くから待っててくれ」
ベルは距離を詰める。
アイーダは距離を詰めるベルを、腕で叩き落とそうとするがそれは失敗に終わる。
「このモードの扱い方にも馴染んできた。速度に関しては私の方が一枚上手のようだ」
「いきるんじゃねぇし」
アイーダはベルを叩き潰すため、空間に開いた大穴から腕をやみくもに出す。
それでもベルは涼しい顔で、それを簡単に躱す。
「羽虫みたいにうぜぇし」
「そうやって感情を出している方が可愛いな。君は」
「茶化すんじゃねぇし。犯罪者が絶対に叩き潰すし」
「そうか。近くに来たよ。殴ってごらん」
「潰してやるし」
アイーダは真後ろにいるベルを叩き潰そうとする。
しかしベルは腕が当たる瞬間に、亜光速にまで加速して躱した。
伸びた腕はベルの傍にいたアイーダに当たった。
衝撃に耐えきれなかったアイーダは大きく吹き飛ばされて、白い怪物のいる下へと落下していく。
ベルも追撃しようとアイーダを追おうとしたが、その時心臓に痛みが走る。
「ぐっ。なんだこの痛みは」
(このくらい耐えなければ奴は倒せない)
そう自制しようとするが、奮闘空しくオーラを維持することすらできなくなり、彼女も落下していった。
ネオ東京東側。西側と打って変わってフェミニズム警察が優勢で、フトゥーロボーイズの面々は壊滅していた。
「エルル様。何故あなたまでアンチフェミニストに下ってしまったというのですか?」
フェミニズム警察の一人が問う。
「この国は私の愛する人を傷つけることを容認していたからだ。それは到底許せないことだからだ」
とエルルは激しい怒りを称えながら返した。
「私達はあなた達を逮捕しなければなりません」
「はい。我々はアンチフェミニスト共を逮捕します」
「その意気やよし。オーブリー、ステラ。油断するなよ」
「分かりました姉さん」
「そうだね。この数だもん。本気を出さなきゃだよね」
オーブリーとステラは頷いた。
結果はというと、エルル達の圧勝であった。一人一人そこそこの実力で、連携も完璧であったがオーラの力量に差がありすぎたのだった。
「二人共ご苦労だった。さて、この調子で暴徒共を鎮圧していくとするか」
「流石っす姉さん。こんな早くに終わるなんて」
「本当だね。アンチフェミーの隊員達が飛び出す前に終わっているんだもん」
「私達がこんなにすんなり言ったということは向こうが外れを引いている可能性があるな」
「それなら急いでやっつけていった方がよさそうだね」
「予想より二勢力がバラバラになっていたことが災いした。私達の考えた囲い込み作戦は失敗したとみてもいいだろう」
「そうだね。ベル達を手伝った方が確実かもしれない」
エルルは首を縦に振り、それを首肯する。
その直後、エルルの表情は曇る。
「ベルの手伝いは難しくなったな」
「凄い力を感じる。下手したら姉さんと同じレベルかもしれない」
「僕達三人で協力してそいつを倒せばベル達のアシストになるかな」
「私は神拳Lを発動する。二人共セカンダリーを使え」
「はい」
「うん」
「皆さんの殺気にあてられて寒気がしますね」
エルル達を身構えさせた元凶はその場にたどり着くと、発言と矛盾した酷薄な笑みを浮かべたのであった。
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