第24話 フェミニズム対アンチフェミニズム
ネオ東京は混沌としていた。武装したフェミニズム警察と学生フェミニストが往来を警備する。彼女らに畏敬の念を持つ市民達であるが、この物々しい雰囲気には辟易としていた。
「あのプリンセス。最後にとんでもない置き土産をしていったわよね〜」
「それを鵜呑みにしてアンチフェミニストが増長するし、本当に最悪よね」
市民Aと市民Bは同時に溜息を吐いていた。
そんな会話を路傍に転がっている痩せ細った男はじっと聞いていた。
「きっ、きも〜。飼い主にすら捨てられた弱者男性じゃ〜ん」
「そんな事言うのやめなよ〜。飼い主すらいない野良童貞かもしれないじゃん。律儀に純血守ってるだけかもじゃ〜ん」
「狙われない童貞の警備お疲れ様で〜す」
市民達は顔も醜く、痩せ細っている男を嘲笑した。
「おっ、俺だってこんな顔に生まれたかったわけじゃねぇ〜。俺はなんで何もしていないのにこんなことをされなきゃいけないんだっ」
「キモいんだってば〜か」
市民は転がっている男を蹴りつけようとした。その時、市民等の後ろに男が一人、いきなり現れた。
「おっ、お前は涙の去勢聖戦で有名になった似非トランスジェンダー。ニセス・フェイス」
市民は思わぬ人物がいきなり現れたことに驚きを隠せなかった。
ニセス・フェイスは小市民を睨みつける。それと共に彼のビスチェの股間部にある白鳥も赤く発光し始める。
「何故俺が怒っているか分かるか馬鹿メス共」
「きしょっ。股間光ってるんですけど~。変態すぎなんですけど~」
「股間が光っていることよりもっと大事なことがあるだろうがよ」
「いや。あんただって性別偽ってた犯罪者だし。犯罪者が説教を垂れるなっての」
市民等はニセスに抗議する。
「俺の心と白鳥は弱い者虐めするてめぇら外道に怒ってるぞ」
「へっ、変態がマジ切れしてる。犯される。助けてフェミニズム警察」
市民達が助けを求めた瞬間、武装したフェミニズム警察がビルから飛び降りてきて、彼女達を庇うようにしてニセスの前に立ちはだかってくる。
「私達はフェミニズム警察。変態を成敗しにきた」
「C級フェミニストレベルの警察が俺の怒りの白鳥を倒せると思うなよ」
ニセス・フェイスは空高く飛んでいき、回転しながらフェミニズム警察へと突っ込んでいく。
「新アンチルッキズム神拳。アタクシドリル。エアダウン」
ニセスのレオタードの下部分が空気が入り込むことにより開き回転する。
彼のつま先が当たり、”アタクシドリル。エアダウン”が炸裂しそうになる直前、足に手刀を叩き込み回転を止める。
「なんですって」
「我々の実力はA級相当だ。B級ごときでは勝てない」
「ランクなんてくだらねぇ。俺が勝つ」
「クソオス共め。貴様らを倒してアンチフェミニスト共に思い知らせてくれる」
互いにジェンダーを発動させ、オーラを高めていく。
「勃起しろ。アンチルッキズム神拳。白鳥」
「燃え盛れ正義。女に従え神拳。男根クラッシュパンチ」
ニセスの白鳥の頭が警察官に向かって伸びていく。それを迎え撃つように、警察官もストレートを打つ。
「うぐぉぉぉぉ」
「潰れろ。クソオスゥゥ」
力は拮抗し続けるが、この決着は数秒後に着いた。 ニセスは白鳥の首をもがれて、膝から崩れ落ちるのだった。
「クソオス狩り時代の伝説は本当に嘘だったようだな」
「俺の白鳥が折れちまうだとっ」
「元英雄。あの世の地獄を楽しむがいい」
ニセスにとどめを刺そうとした瞬間、警察官の拳が縦に真っ二つになり、そこから白鳥が沢山生えてくる。
「はっ、白鳥?」
「続けるって言うならこれが現実になるけどどうする?」
カルメン・T・ヴィオラが現れて言う。
「くっ……」
警察官は流石にそれは避けたいと思ったのか、ズルズル引き下がっていく。
「お前。腕の一つくらいなんだ。フェミニズムのためだ」
「あんたにも悪夢を体験させたげる」
カルメンが指を鳴らすと、もうひとりの警察官の腰から下が砂となって消えた。
「ギアァァァァ」
半狂乱になって叫ぶ。
「この悪夢を実行されたくなかったら、この場から消えなさい」
カルメンの言葉に警察官の二人は頷いた。彼は解除して二人を逃がしたのだった。
「カルメン。あなたに助けてもらうだなんて思わなかった」
「ニセス。私達のところへ来い。クソッタレフェミニズム時代を終わらせるぞ」
ネオ東京。某日。
鞭を振るう音、銃弾の発砲音、男性の阿鼻叫喚と女性のサディズム的な哄笑がよく響いた。残虐な暴力都市と化したのである。
数々のアンチフェミニスト組織の活動が活性化し始めたことを受け、警視総監の藤柴は警備体制の改革を発表。更に反逆男性のを罰することに関しての法案を即決した。
その事によりクソオスいじめが過熱化したのだった。
「男性に人権を」
「男性に平等を」
「男性に自由を」
「男性に平穏を」
虐める市民達から男達を守るためにカルメン率いるアンチフェミニスト組織フトゥーロボーイズがデモ活動を行う。
「フェミニズム警察に通報だ。通報しろ」
市民達は男性を痛めつける行為を止めて、通報する。
すると空からフェミニズム警察官が襲来し、カルメン達の前に立ちはだかった。
「女性の権利の保護のため推参」
「フェミニズム警察をぶっ潰してフェミニズム時代の終わりを始めるのよ」
ニセスが声を張り上げて、フトゥーロボーイズの隊員達を鼓舞する。
フェミニズム対アンチフェミニズムの戦争が開戦したのだった。
「フトゥーロボーイズの抗戦により警察官十名殉職、三十名重傷、五十名が軽傷。学生フェミニスト二十名死亡、四十名が重傷、七十名が軽傷です。フェミニズム時代が始まって以降、史上最悪の事件であります。我々はフトゥーロボーイズをアンチフェミーと同じ第一級アンチフェミニスト組織と認定します。フトゥーロボーイズの打倒に優先的に戦力を割き、市民生活に平穏をもたらせるように努力していく所存であります」
藤柴の発表により、フェミニスト対アンチフェミニストの戦闘は激化していき、市民らもその巻き添えを食らうことが多くなってきたのであった。
アンチフェミー。アナグラにて。
「死人が出るなんて馬鹿な話だ」
「戦力が削れるまで静観する?」
アリスの問いに対してベルは首を横に振る。
「あいつらと一緒に戦うの?」
「違う」
「まさかフェミニストの味方をするつもり」
「私達の道は彼らの道と違う」
ベルの言葉の意味を汲み取ったアリスの顔は青ざめていく。
ベルとアリスが会話している時にリーが入ってくる。
「ベル様。今現在調べられる情報を下に両者の消耗具合を計算いたしました。作戦立案の目安にお使いくださいませ」
リーはレポートをベルに手渡す。
「リー。そのデータはいらない」
「左様ですか。どのような理由で」
「我々はこの戦闘を終わらせるために動く」
「それは無謀ですよ。ベル様」
「リー。あんたには同情するけどベルは聞かないわよ」
「アリス様。この無謀は流石に止めなければなりませんよ」
リーは諦めているアリスを窘めるように言う。
「ベル。私もリーの意見に賛成。ここで打って出るのは愚策だと思う」
「二人の意見のほうが賢いことも分かっている。しかし私達はこの戦いを終わらせなければならない。そうでなければ春など永遠に訪れないのだから」
ベルは二人の意見を突っぱねた。
「意思は固いようですね。それなら私も本国の支援者であるフェイ・ウィリアム様に掛け合い資金と兵士を調達できるか話し合ってみましょう」
「反対している割にはずいぶん素直に聞くじゃない」
「三年も部下をしているのです。なんとなく予想がついていたんですよ」
皮肉を言うアリスに対して、リーは一言返した。
「リー。皆を呼んできてくれ」
「分かりました。ベル様」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます