エロ漫画に厳しい国
第6話 水曜日のボイン事件
『水曜日のボイン』
水曜日のボインとは山田久志の著作で『一週間の折り返し地点という水曜日に頑張って働いているサラリーマンを巨乳女子高生が励ます』というテーマのイラスト群を漫画にしたものである。
地方裁判所第一法廷にてフェミニズム裁判が行われる。
「以上の証拠により水曜日のボインには現代に必須なジェンダー意識が希薄であることと、女性を性奴隷的に見ているペ◯スのエゴイズムが痛々しいほどに表現されていると断言できます」
検察の
「異議あり。あなたの証拠は偏見の寄せ集めだ。この水曜日のボインという漫画は一週間の折り返しである水曜日のサラリーマンを応援したいという気持ちで作られたコンテンツであります。男の欲望を体現したものであるとか、性奴隷的な女性を描写しているというのはいわれなき中傷です」
鳥島寿世に対抗するのはおっぱい派の自称弁護士の
「サラリーマンを応援したいという目的ならおっぱいの大きい女子高生を出す必要性はないと思います。このことに関して反論は?」
「胸の大きさなど些細なこと。おっぱいに貴賤はありません。おっぱいの大きい小さいなんぞに騒いでいる人間は二流でありましょう」
さわやかに言い返す。
「一個人の感想でしょう。そんなの」
「先程も申しましたがあなたのペ◯スのエゴイズムだというのも一感想でしかない」
「他にも証拠はあるのです」
「今言った証拠とやらも一感想をかき集めたものに過ぎません」
鳥島寿世は尾宗好雄に言い返せず、歯噛みするしかなかった。
「鳥島さん。私はね。彼を異端思想啓蒙罪で問うのはどうかと思うんですよ」
「どういうことです?」
「単純な話です。水曜日のボインはあなた達のような女性をターゲットにした作品ではないからです。あなた達に分かるように言えば、少女漫画なのにイケメン達を描くなと無謀な事を言っているのに等しいんですよ」
鳥島は何も言えなくなってしまった。
その一方で尾宗は勝利を確信したのであった。
両者の明暗が決まったと思われた時、
「尾宗好雄は弁護士資格を持っていません」
法廷に割って入った係官が言う。
「いや。そんなことは嘘だ」
「資格を持っていない?」
「係官。詐欺罪で逮捕してください」
「こんなことをさせたお前達が悪いぃぃ」
尾宗の抗議が聞き入れられることはなかった。
「速報。
山田正志氏。20☓☓年4/4。フリージェンダー広場で処刑。
水曜日のボインで異端思想啓蒙罪に問われた山田正志氏に死刑の判決が下されました。ついでに自称弁護士尾宗好雄も処刑されることが決定されました。
異端思想啓蒙罪で死刑になったのは日本で初めてのことであります。これは他人事ではなく、今後はフェミニストが所属するフェミニスト警察の取り締まりがより一層激しくなることを意味します。クソオス共はその旨をよく自覚し、クソオス身分相応の人生を生きることを推奨します」
アナウンサーはクソオスに勧告するように告げた。
二〇☓☓年。女性優位思想が過剰に拡大した結果、立法・司法・行政を侵略した。その結果、女性と男性との間で極端な差が生まれてしまう。女性だけ武器が携帯出来たりするが、その一方で男性は女性に逆らうこと一切を禁じられて、労働奴隷か愛玩ペットのような生き方の二種類を強いられたのだった。
そこで立ち上がったのがアンチフェミニスト組織アンチフェミーであった。
アンチフェミー地下拠点 -アナグラ。
ラジオから流れる残酷なニュースを聞いたベル・ウララは聞くに耐えないと思いながら険しい表情をしていた。
「明日か。なんとしてでも助け出さなければ」
義憤に駆られたベルは一人呟いた。
三年前に更生施設を出たベルをはアンチフェミーに入隊した。
元リーダーである虎原龍からベル・ウララを同志として迎えるように指示があったからである。
入隊したベル・ウララはアンチフェミニスト神拳の使い手ということと、理不尽を正したいと思う高潔な意志を評価されてリーダーに出世した。
「ベル様。フリージェンダー広場に行かれるつもりですか?」
慇懃な口調で問うたのは、ベルの側近であるリー・フェイロンであった。辮髪に甘いマスクが似合う高身長で痩せた男であった。
「当たり前だ。理不尽な目に遭っているあの人を助けずしてなにがアンチフェミーか」
保守的なことを言うリーのことを激しく非難した。
「その志はよろしいことですが……やめておけと言ってもあなたは安々と引き下がらないでしょう」
「サポートを頼むよ」
「承りました」
リーは諦めたように了承したのだった。
フリージェンダー広場はフェミニスト思想に傾倒している活動家が企業と協力して作り上げたフリースペースだ。LGBTを肯定する近代アート的なモニュメントが多数あり、現代を象徴する場所の一つとなっている。
そんな広場の真ん中に断頭台がぽつんと一つだけ置かれているのだ。急に設置したということもあるが、それを抜いてもこの場に馴染むことはなかった。
断頭台を男性をペットのようにする何百人もの女性が取り囲む。愚か者の死を見届けるためだ。
「日本初の異端思想啓蒙罪を犯した罪人の処刑を始めます。後、弁護士を名乗り法廷と女性を侮辱した愚か者も処刑されます」
断頭台の前に立ったのは今日の死刑を取り仕切る司会でC級フェミニストの母武仕切だ。
母武に促されて警察官が山田久と尾宗好雄の両人を連れて来る。手枷と足枷が嵌められている二人を無理やり断頭台へと押し倒した。
逃げられないことに絶望した二人は、絶叫して命乞いをする。
「我々フェミニストに立ち向かった愚か者を罰します。あなた達の死によってフェミニズム国家は新たな局面を迎えることになるのです。警備代表の超B級フェミニストのニセス・フェイスさんからも一言ください」
司会の母武に言われて現れたフェイスは股間部に白鳥の頭部が備え付けられたチュチュを着ている。小柄で顔が大きく、筋骨隆々であった。
「あたくしは警備責任者のニセス・フェイスよ。さて……」
と軽く自己紹介して、言葉を続けようとしたニセスであったが
「あいつっておネェなんか? 女装好きの変態なのか?」
とぼそぼそと独り言を呟いた尾宗の声を聞いて振り返った。
「あたくしは女よ。生物学的に男性なんていう馬鹿な医者は何人かいたけど、あたくしが全員粛清してやったわ。あたくしのパワーと、フェミニスト達のパワーのデモンストレーションにあんたの顔面を抉ってみせようかしらぁ」
ニセスは興奮して尾宗にまくし立てた。
「ゆっ、許してくれ。あんたがそんなに怒るとは思わなかったよ」
「来世ではよ〜く女心を勉強して、愛の相対性理論をお見つけなさい。おっぱいフェチのおバカべんごしちゃ~ん」
ニセスの右手の五指がドリルのように回転した。最初は緩やかであったが、次第に速度が増していく。
「やっ、やめてくれぇ」
「後悔するがいいぃ」
尾宗の顔面にドリルと化した右手が接触しそうになった時、動きが止まった。
「なにっ」
「ニセス・フェイス。人の顔を抉るなんて残酷なことは止めろ」
「お前はまさかアンチフェミーのリーダー。ベル・ウララ?」
ニセス・フェイスは思わぬ人物が現れたことに驚いている。
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