第32話 生徒会への勧誘
扉の少し横でみんなを待っていると、
「……あら? ヤトくん?」
廊下から歩いてきた声を掛けられて顔を向けると、生徒会長のディナと、もう一人の女子生徒が立っていた。
「……会長、お疲れ様です。
そちらは……?」
俺がもう一人の女性について尋ねると、彼女はこちらに向き直り会釈をした。
「私は二年のルーウィ・ミアナです。
生徒会の副会長をしています」
「ルーウィ先輩ですね。
よろしくお願いします」
「イラ―クくんのことは、会長から聞いています」
「会長から?」
言われて俺は会長に視線を向ける。
一体、どんな話をしているのだろうか?
「あなたは期待のニューフェイスだから……生徒会に勧誘したいって話をしてたのよ」
「え? 生徒会、ですか?」
思わず聞き返してしまったのは、それが俺にとって完全に予想外の返答だったからだ。
「もしあなたがよければ……生徒会長として私はあなたを歓迎するから」
ディナ会長は柔和な笑みを向けた。
あまり俺を悩ませないように軽い口調で言っているが、どうやら冗談ではないようだ。
(……この誘いを今直ぐに無下にするというのは、会長をはじめ生徒会の心証が悪くなる、よな?)
だとしたら、この話を受けるにしても断るにしても、まずは考える素振りは見せておくべきだろう。
「あの……返事は今直ぐのほうが……?」
「もちろん、後日で構わないわ。
簡単に決められることではないものね」
「ありがとうございます」
感謝と共に軽く会釈する。
生徒会に入るメリットとデメリットを調べた上で、最終的な決定をしようと思う。
「……ところでヤトくん。
昼食がまだなら、生徒会で一緒にどうかしら?
それとも、このあと食堂に行くのかしら?」
俺が手に持ったコッペパンを見てか、会長からそんなお誘いがあった。
「いえ、今日は食堂が使えないみたいなので……」
「え? どういう意味かしら?」
どうやら食堂が占拠された件に関して、会長はまだ何も知らないらしい。
(……伝えておいたほうがいいだろうか?)
そんなことを考えていると、
「――ヤトくん、お待たせ」
昼食の購入を終えたアネアたちが購買から出てきた。
直ぐに皆、会長の姿に気付いたようで、どうかしたのかと俺の顔を見た。
「とりあえず……生徒会室で食事でもどうかしら?
そこで話を聞かせてもらえる?」
その会長からの提案に、俺は頷いたのだった。
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