第4話 七希会議

 セブンズ・ホープ結成時の初期メンバー。

 この『六名』が――組織の幹部である七希しちき会議のメンバーだった。

 席が一つ空いているのは、今はもういないたった一人の親友の席だからだ。


「以前から話を進めていたが、明日から俺は予定通り支王学園に入学する」


 俺の言葉に、七希のメンバー全員が目を向ける。


「それに伴い卒業までの三年間、俺は学園寮で暮らすことになる。

 可能な限り連絡を取れるようにするつもりだが、不測の事態となった場合、組織に関する全ての決定権を一時的に白鴉はくあに与える」


 白鴉はくあは立ち上がり、流麗な動作で一礼してみせた。


「承知いたしました。

 あなたの期待に答えられるよう尽力します」


 彼女はこの組織の戦略責任者でもある。

 無法区画内の犯罪組織との抗争になった場合は勿論、抗争になる前に勝利を収める戦略を立案し組織運営を行うのが彼女に与えられた役割だ。

 組織が大きくなり敵対組織が増えた際、白鴉はくあの戦略立案に何度も助けられてきた。


『私は大和やまとに教えられた通りに戦略を練っているだけですから』


 普段からこんな風に謙遜するが、その実力は間違いなく本能だ。


黒鴉こくあ、もしもの時は白鴉はくあを支えてやってくれ。

 あと、団員の戦術強化を引き続き頼む」


「かしこまりました。

 姉様のバックアップは勿論、パンゲア軍との戦闘に備え、各個人にあらゆる訓練を施します」


 黒鴉こくあは戦術責任者だ。

 セブンズ・ホープの第一部隊隊長にして、隊員の戦術指南を行っている。

 戦闘に関するスペシャリストで、隊員の中でもトップクラスの戦闘力を有している。


「桜、各情報のアップデートを引き続き頼む。

 問題があれば今後は俺だけではなく、白鴉はくあにも共有してくれ」


「了解です!

 あと、支王学園に関する情報を最新のものにアップデートしておきました。

 先輩のデバイスに送っておくので、後で確認してくださいね」


 桜はセブンズ・ホープの情報管理者であり、優秀なハッカーだ。

 彼女の管轄する情報部は、多くの人員を使い情報網を張り巡らせていた。

 それは、無法区画に関わることだけでなく、第二十三パンゲア領内のあらゆる情報を手に入れることができるほどに。


「計画は桜がいなければ達成が難しかったと思う。

 本当に助かった。

 結果を出してもらった分は、俺も結果で答えてみせる」


「あたしがいなくたって……先輩なら一人でもなんとかしたと思いますけど……でも、褒めてもらえるのは嬉しいです」


 住所なく、存在すらも否定された俺が、支王学園の生徒として入学できた理由は、桜が国の管理システムに侵入し、データを偽造してくれたからだ。

 そして学園の入学者として偽の名前、住所、経歴を手に入れたのだ。


「詩季は引き続き、組織強化の為の人材確保を」


「はい! 一人でも優秀な人材の確保に励みます」


 俺がいない間も、詩季にやってもらうことは変わらない。

 超大国であるパンゲアに対抗する為の人材を探すこと。

 俺たちが勝利を収め自由を奪い返すには、多く力が必要になるのだから。


「恋は……」


「うん。

 私にできることなら、なんでも言って」


 期待に満ちた目で俺を見つめる。


「……とくに、ないな」


「ないの!? 私だけ何も!?」


 恋はガクッと肩を落とした。

 演技にしては少しだけオーバーだ。

 本当は恋にも役割はある。

 この場にいる七希すらも知らない……大切な役割が。


「恋ちゃんの役割は、先輩の膝枕係でいいんじゃないですかぁ?」


「なぁ!? い、今それを言うなぁ~!」


 膝枕係……と聞いて、この場にいる者たちの視線が恋に向いた。


「恋ったら……抜け駆けはいけませんよ?」


「や、大和様の膝枕係なら、私も立候補させてください!」


 白鴉はくあと詩季が同時に何かを言った。

 それに続くように、皆が口々に膝枕係なる謎の役割に関して討論を重ねるのだった。

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