第17話 突然の来訪者
「……誰か来たみたいだな」
「ど、どうしよう?
私がいてもおかしくないかな?」
「大丈夫じゃないか?
寮内の規則だと異性の部屋への立ち入り禁止は二十一時以降だったはずだぞ」
現在の時刻は十八時前だ。
時間にはまだ随分と余裕がある。
「そ、そうじゃなくて……普通は、異性の部屋に二人っきりにはならないと思うから……特別な関係に、思われないかな?」
「……特別?」
というのは、どういうことだろうか?
要領を得ないアネアの言葉に考えを巡らせるが答えは出ない。
そんな俺を見て、
「だ、だから……」
そんな俺を見て、言葉を詰まらせるアネア。
だが、思い切った様子で口を開いた。
「付き合ってるとか思われても……ヤトくんはイヤじゃ、ない?」
窺うような上目遣い。
その瞳は不安の色で揺れながらも、頬は興奮したように赤く染まっている。
不安の中に僅かに見えるのは期待だろうか?
「嫌じゃないぞ?」
「……ほんと?」
「そういうのは、女の子のほうが困るんじゃないか?」
「わ、私は全然大丈夫!
ヤトくんが相手なら――って、違くて……とにかく、迷惑じゃないなら、よかった」
緊張が解けてほっと一息吐くアネアが、安堵の微笑を浮かべた。
そこで再びピンポーンと、チャイムの音が鳴る。
「開けてもいいか?」
「うん。これ以上、待たせるのも悪いから」
確認を取ってから、俺は扉を開いた。
すると、
「お、帰ってきてたか」
屈託のない笑みを浮かべるルゴットが、部屋の前に立っていた。
「ヤト、これから飯でもどうよ?」
どうやら食事の誘いに来てくれたようだ。
「ちょうどアネアと、夕食でもどうかって話してたところだった」
「ならよかった……って、うん?」
ルゴットが首を捻った。
「アネアが来てたのか……いきなり来て邪魔しちまったか?」
どうやら扉の隙間から彼女の姿が見えたようだ。
「そ、そんなことないよ!
私も今来たところで、一緒に食事でもどうかって話をしてただけだから」
慌てた様子で説明するアネア。
だが、それを聞いてルゴットは晴れやかな笑みを浮かべた。
「ならよかった! アネアも一緒に行こうぜ!
ミルフィーも連絡して玄関口で待ち合わせすることになってるからよ」
昼食と同じメンバーで夕飯か。
親交を深めるという意味では悪くないだろう。
それに、もう少しこの辺りの施設を確認しておくのも悪くない。
「じゃあ、行くか」
俺たちは部屋を出た。
そして玄関口でミルフィーと合流してから、適当な飲食店を探すことになるのだった。
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