第29話 アネアとクーのバトル勃発!?


     ※


 昼休みになった途端、俺の元に人が集まってきた。

 この短期間で大きく価値を上昇させたことで、俺と交流を持っておきたい生徒が増えているのだろう。


 人脈が何かしらのチャンスに繋がってくる可能性があるのも間違いではない。

 それに、入学したばかりということもあって、皆が多くの生徒と関りを持っておきたいのだろう。

 その証拠に、ルゴットやミルフィー、そしてアネアの周りにも何人か生徒が集まっている。


「はいはい皆さん、どいてください!」


 そんな中、人だかりを割るようにクーが俺の元へやってきた。


「皆さんもヤトさんと話したいのはわかりますが、今は御昼休憩の時間ですよ」


 言いながらクーは俺の腕を取った。

 そして、


「さ、行きましょう。

 ヤトさん」


 突然のことで少し戸惑ったが、どうやら食事に誘っているのだろう。


(……この場にいるよりは気が楽か)


 俺は誘われるままに席を立った。


「ぁ……」


 微かにアネアの声が聞こえた気がして振り返る。

 だが、周囲の生徒たちが壁になり視線が遮られて、アネアの姿が見えなくなってしまう。


(……もしかして、食事に誘おうとしてくれていたのか?)


 そんなことを思っていると、人垣の間を縫うようにしてアネアが慌てて俺たちに駆け寄ってきた。


「ま、待って、ヤトくん。

 私も一緒に行く!」


 焦るように言いながら、アネアは俺の隣に並んだ。


「あら? アネアさん……わたしはヤトさんと二人で食事をしたいんですけど?」


「わ、私だって――その……き、昨日もヤトくんと一緒に昼食を食べたんだから!

 今日も一緒に食べようと思ってたの!」


 売り言葉に買い言葉なのか、アネアも俺の腕を取った。

 そして、俺を挟んでアネアとクーが睨み合いを続けていると、


「お~い、オレらも一緒にいいか?」


「ふふっ、ヤトさんもアネアさんも、新しいご友人ができたんですね」


 後ろからルゴットとミルフィーが声を掛けてきた。


「友達じゃないから!」


「友達ではありません!」


 アネアとクーがムキになって声を上げる。

 喧嘩をしているようにも見えるが、なんだかんだで相性は悪くないように見えるのも不思議だ。


「アネアさんは……わたしにとっては恋のライバルです!」


「ふえっ!?」


 クーの宣言に、ライバルと呼ばれた皇女様は激しい動揺を見せた。

 だが、事実無根だとしたら、こんなことを言われるのはいい迷惑だろう。


「やっぱり、仲良しさんみたいですね」


 ミルフィーはそんな二人を柔和な笑みで見つめる。


「とりあえず、飯に行かねえか?

 ここで騒いでたらまた人に囲まれそうだしよ」


「だな。

 話すなら食事をしてからでもいいだろ」


 ルゴットの提案を受けて、俺は渦中の二人に目を向ける。


「……わかった。

 ごめん……ヤトくん、みんなも……」


「すみません……少し騒ぎ過ぎました」


 さっきまで騒いでいたのが嘘のように二人は静かになった。

 歩きながらルゴットたちがクーに簡単な自己紹介をする。

 その間も俺を挟んだ睨み合いは、食堂に着くまで続くのだった

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