第5話 騎士に拷問されそうになった時に、首輪が光って男を弾き跳ばしました

私はクリフを助けたのにいきなり手錠をかけられたのだ。


なんで?


完全にパニックになってしまった。


追放されて、襲われそうになって、奴隷にされて、今度は逮捕されるなんて……


「貴様、クリフ様に何をした。魅了魔法か何かをかけたのか!」

「違う」

私は必死に言い訳しようとしたのだ。でもその騎士さん達が怖くて、中々答えられなかったのだ。


「クリフ様!」

騎士の一人がクリフを揺らそうとして、


「ダメ、クリフは怪我をしているから」

私が止めようとすると、


「何だと、女! お前が傷つけたのか?」

「誓うわよ、ティラゴンが現れて、クリフは私を助けようとして、怪我したのよ!」

「怪我? どこか、頭を打たれたのか? 見たところどこもお怪我はされていないが……」

偉そうな男が聞いてきた。けがの跡はヒールで治っているし、血は拭いたのだ。


「それは判らないわ。おそらく違うけど」

「じゃあ、何故、クリフ様は目を覚まさせられない。貴様が邪悪な魅了でも掛けたのだろう!」

「違う」

私は言ったけれど、誰も聞いてくれなかった。


「それを証拠にクリフ様はほとんど衣装を着ておられない状態で貴様が一緒に寝ていたではないか」

男たちは私に言い放つと、私はクリフと離されて、そのまま、馬車に乗せられて、連行されたのだった。



私は隣国の国境の騎士の詰め所に連行されたのだ。


私は前世で病弱だったから今まで警察のご厄介になったこともなかった。

それがいきなり手錠をかけられて怒った騎士に連行されたのだ。


そして、そのまま牢獄にそのまま放り込まれた。


牢獄は冷え冷えとしていた。


ジメジメとした牢獄だ。


石の上に布団も無いんだけど。


本当に最悪だった。この国に召喚されてから碌なことがない。

アリストンの王宮では親友の凛に裏切られて放り出されて、破落戸共に襲われそうになった。

そこで助けてくれたクリフに奴隷にさせられた。

でも、クリフは私を奴隷のようには扱わずに、口は悪いけれど、色々面倒を見てこの国まで連れてきてくれたのだ。

私が野垂れ死にしなかったのは全てクリフのおかげだった。


でも、今クリフのせいで牢獄に入れられているんだけど……


私はなんか無性に泣きたくなった。


涙が次から次に流れてきたのだ。


「元の世界に戻りたいよ……」

本当にもう嫌だ。病気で寝込んでいたけれど、牢に入れられるくらいなら前の世界の方がましだ。

でも、私の心からの願いは誰も聞いてくれなかった。


その日は泣きつかれて寝てしまったのだ。






翌日、私は冷たい朝食を与えられた後、尋問室のような所に連れてこられた。


机が一つあって私はその前に座らされたのだ。


「お前、名前は」

「私はチハヤ・アオイ」

「どこから来たんだ」

「判らない。アリストン王国の王都でクリフに助けられたの」

「それ以前は」

「記憶がないわ」

私はクリフからはどんなことがあっても異世界から来た事は言うなと、言われていた。それが判ったら拐われてどこかに叩き売られるに違いないからと。


「本当なのか?」

目の前の騎士の態度が変わった。

「貴様はどこかの国のスパイではないのか? クリフ様を魅了で洗脳するように言われたのだろうが」

「魅了ってなんなの? そもそも私はそんなの知らないわ」

私はまた泣きそうになった。

「ふん、そんな戯言もいつまで続くことかな。貴様を拷問にかければ済むことだ」

「えっ、そんな」

私は真っ青になった。か弱い私が拷問なんてかけられて生きていけるわけはない。


「嫌ならさっさと吐け!」

「吐けって何も知らないわよ。ちょっと私が誰かはクリフに聞いてよ。というかクリフに会わせて」

「貴様先程からクリフ様のことをたやすく呼び捨てにするな。クリフ様はこの国モンターギュ帝国の第一王子殿下でおられるのだぞ」

「えっ、嘘!」

私は驚いた。クリフが高貴な出だとは思っていたが、まさかこの国の王子様だとは知らなかった。

それならそうとクリフも教えてくれたら良かったのに。と言うか今まで平気でため口をきいていたのだ。本来ならば不敬罪でしょっ引かれても仕方がないかも……


「ふんっ、白々しい。貴様が知らないふりをしてクリフ様に近付いて、魅了の魔法をかけたに違いないのだ。何しろクリフ様はまだ意識が戻られないのだからな」

「ちょっと待ってよ。クリフに、クリフ様に会わせて下さい。そうすればクリフ様は気づかれるかもしれませんし」

私は必死だった。


「そんな事許せるわけはなかろう。貴様はクリフ様に会って魅了をかけて何かさせようという魂胆だろう」

「そんな」

「残念だったな。図星か。さっさと何を企んでいたか話すんだ」

男は残忍そうな顔をした。


「その貴様の手の指の爪を一枚一枚引っぺがしてやろうか」

男が私の指に手をを伸ばしてきた。

「やめて」

私は思わず指をひっこめた。


「おい、その女の手を掴んで固定しろ」

周りの騎士たちが私に掴みかかってきた。


「嫌よ、止めて!」

私が叫んだ時だ。


「ギャッ」

私の銀の首輪が突然金色に輝いて騎士たちを弾き飛ばしたのだった。

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ここまで読んで頂いて有難うございます。

アオイはこの後どうなる? 今日は後一話更新します


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