第106話 危機一発の所に救援の大軍が現れて、その軍を引き連れてアリストンの王都に向かいました

やばい。完全に囲まれた。


どうしよう?

私は慌てた。

しかし、戦いは専門外だ。まあ、ヒール以外は全て専門外だったが。

ここはクリフたちに賭けるしか無い。適当にやってくれるはずだ。


「帝国からの侵入者に告げる。直ちに降伏せよ」

指揮官らしきものが叫んできた。


「ふんっ、誰が降伏なんかするか」

「しかし、囲まれましたぞ」

クリフの声にゴードン先生が注意した。


「そろそろ着く頃だろう」

「しかし、もう少しかかるのではないですか?」

二人はなにか言っているけれど、何が着くんだろう?

私にはよく判らなかった。


「仕方がない。アオイ、もう一度、馬たちにヒールをかけてくれ。ゴードン爺はその後すぐに後ろの指揮官を攻撃。返す刀で前の敵を攻撃して、敵中突破する」

「やむを得ませんな」

ゴードン先生が言う。


「ヒール」

私は2頭の馬にヒールをかけた。


「行きまそすぞ」

ゴードン先生は先程声を出した指揮官のいる方にファイヤーボールを射出した。


敵がぎょっとする。


そして、振り向きざま、前に爆裂魔術を放っていた。


ドカーーーーン

ドカーーーーン


殆ど同時に爆発が起こる。


「行くぞ」

剣を片手にクリフが突っ込んでいく。

その後ろにゴードン先生が続いた。


前の敵は爆発に多くのものが倒れていた。


私達が突っ込んだ時は対処できていなかった。


そのまま抜ける。


「おい、逃がすな」

敵騎馬隊が慌てて追いかけてきた。


最初はヒールで元気になった馬たちだが、騎馬隊は軍馬だけあって結構立て直しも早い。


早くも私達の周りに弓矢が舞い落ち始めたんだけど。


やばいんじゃないかと焦りだした時だ。



パパパパパパラ、パパパパパパラーーーーー

遠くからラッパの音が聞こえたんだけど。


「「「ウォーーーーー」」」

そして、この雄たけびは


「ヴァーノン族だ。ヴァーノン族が間に合ったぞ」


アリストンの騎馬兵達は唖然としていた。


山の上から騎兵の大軍が降りてくるのだ。


「退却だ! 逃げろ」

馬首をめぐらせて、慌てて逃げ出したのだ。


「突っ込め、敵を逃すな」

そこに大声を上げてカルヴィンさんが叫んでいる。


「カルヴィン! 助かったぞ」

「これは殿下。それと聖女様もご無事でしたか」

カルヴィンさんが慌てて駆け寄ってきた。


「殿下、それと聖女様」

その後ろからはバレー族の族長のデリックさんが駆けてきた。

「デリックか。よく来てくれた」

「殿下と聖女様の一大事とならば駆けいでか」

そう言うとデリックさんは盛大に笑ってくれた。


「敵はいかが致しますか。何でしたらアリストンの王都を落としますが」

「おい、デリック、殿下を焚きつけるな。陛下は自重せよとおっしゃっておられたぞ」

デリックさんの声にゴードン先生が釘を刺すが、


「なあに、戦になれば戦場の指揮官が全てを決めるものです。聖女様を二人も殺害し、今また現聖女様を誘拐したアレストンなど、腐りきっております。

幸いなことにここには大陸最強の我がバーノン族とカルヴィンのヴァーノン族がおります。

この2つの軍があればアリストンなど鎧袖一触するのも簡単ですぞ」

「そうです。殿下。アリストンは聖女様を二回も誘拐したのです。

敵を叩き潰してやりましょうぞ」

デリックさんとカルヴィンさんが揃って言うんだけど。


「そうだな。この際だ。一気にやるか」

クリフまでそれに頷いた。


「宜しいのですか? 殿下。後で陛下がなんと言われるか」

ゴードン先生が忠告するが、


「どのみちここまで侵入したのだ。後でアリストンがキンロスと組んで難癖をつけてくるのは確実だ。なら、今ここで占拠しても同じだろう」

クリフはそう言いきったのだ。


「まあ、それはそうですが」

ゴードン先生も頷いていた。


「じゃあアオイ、申し訳ないがアリストンまで戻るぞ」

「えっ、戻るの?」

せっかく逃げ出してきたあそこにはあんまり戻りたくない。


「すまん。アスカの仇を取ってやりたい」

前聖女様の名前を出されたら私はもう何も言えなかった。


「者共聞け!」

クリフが剣を掲げたのだ。


全員がクリフを見る。


「アリストンは2人の聖女様を殺した上、帝国にお迎えした聖女アオイ様まで誘拐して奴隷としてこき使おうとしたのだ。そのようなことは許せない。

幸いなことにここには大陸最強のヴァーノン族とバレー族がいる。今こそ、聖女様の恨みを晴らすためにここに力を貸してくれ!」

「「「ウォーーーーー」」」


「敵はアリストンの王宮にふんぞり返っている偽聖女だ。全軍、直ちにアリストンの敵兵を追って一気にアリストンを着く。こちらには聖女アオイ様がいらっしゃる。正義は我にあるぞ」

「「「ウォーーーーー」」」

大歓声が上がった。


私はクリフの前で馬に揺られて、逃げてきた道を今度は逆に引き返したのだった。


逃げている時は2騎だったが、今度は大軍を引き連れて一気に王都に向かったのだった。

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ここまで読んで頂いてありがとうございます。

続きは明日です。

完結まであと少しです。

評価まだの方は☆☆☆を★★★にして頂けたら嬉しいです!





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