第107話 アリストン軍はあっさりと降伏しました
クリフと私は二回の逃避行、一度目はアリストンの王宮から追い出されたのでクリフ故郷の帝国に行くために、二回目は拐われたアリストンの王宮から逃げ出すためにこの道を逃げてきたのだ。
一度目はクリフと二人で、二回目はゴードン先生と3人で、走ってきた。
それが今度は大軍に守られて、逆にアリストンの王宮に向かっているのだ。
アリストン軍はたまに遭遇するが、彼らは我々を見ると一目散に逃げ出して行った。
我々はその逃げ出した敵を追いかけて王都に急行したのだ。
私はヴァーノン族が連れてきてくれた白馬のホワイトにクリフと一緒に乗っていた。
ヴァーノン族もバレー族も騎馬民族なだけあって馬はとても優秀だった。
次々にアリストン軍を蹴散らして、王都の城門をアリストンが閉める前に王都に突入したのだ。
「者ども、行くぞ!」
カルヴィンさん等を先頭に私達は突入した。
「「「キャーーーー」」」
「助けて!」
なだれ込んできた帝国軍に王都の住民は恐慌をきたして蜘蛛の巣が散ったように逃げ出した。
帝国軍は抵抗にあうこともなく、あっという間に王宮の前まで来たのだ。
王宮は固く閉じられていた。
兵士達が慌てて城壁の上からなにか叫んでいる。
カルヴィンさんとデリックさんの指示によってあっという間に王宮は帝国の大軍に包囲されてしまった。
「アリストン王国の偽聖女に継ぐ。直ちに聖女アオイ様の前に降伏せよ」
取り囲んだ我軍の前に騎乗のまま進んでカルヴインさんが大声で降伏勧告してくれた。
城壁にキンロスの王子等を引き連れた凛が出てきた。
「ふん、何を言う。帝国の皇子は何をトチ狂ったのだ。ここにおわすお方こそ、聖女リン様だ。そちらにいるアオイと名乗るものこそ偽聖女だろうが」
キンロスの王子が言い返してきた。
「笑止千万。そちらにいる偽聖女はヒールも使えないそうではないか! 片やこちらの聖女アオイ様は20年も前の私の足の怪我を治して頂けたのだ。どちらが聖女様に相応しいか言うまでもなかろう」
カルヴインさんが言ってくれたが、なんか自分のことを言われてとても面映ゆかった。
それに対して言い返せず思わず王子が詰まる。
「ちょっとアラム!」
凛が注意するがアラムはすぐに対応できなかった。
「ふん、そのようなヤラセなど、いくら聞いた所で茶番に過ぎませんわ」
凛が慌てて叫んできたが、
「ふん、茶番も出来ぬ聖女が何を言うやら。癒やし魔術を使えない聖女などおらんわ」
「な、なんですって」
凛が歯ぎしりして悔しがるが、実際そうなんだから何も言えないはずだ。
「偽聖女凛とやら、貴様がいくらほざいた所で、偽は偽だ。聖女アオイ様が聖女様だということをここに証明しよう」
クリフが前に進み出て言い放ったのだ。
「何をするつもりよ。まあ、どのみち何をやっても茶番だけど」
リンは笑ってこちらを向いた。
「ふん、茶番かどうか、ようく見るが良い。さあ、アオイ様」
私はクリフに促された。私は事前にクリフに言われていたことを実行したのだ。
「聖女アオイが命じます。城門開門。降伏の鐘よ鳴れ!」
私が声を上げると
ギーーーーーと言う大きな音ともに、アリストンの城門が大きく開いたのだ。
「えっ、ちょっと何しているのよ」
リンが慌てて叫んだが、
「いえ、こちらは何もしておりません」
兵士達が大慌てで叫ぶさまが映った。
カラン、コロン、カラン、コロン
一斉に降伏の合図の鐘が鳴り出したのだ。
「嘘だ!」
「そんな、馬鹿な」
リンたちが慌てふためいて叫ぶ。
「よし、突入しろ」
「「「ウォーーーー」」」
王子と凛が唖然としている間に、クリフの合図で帝国の兵が中に突入したのだ。
アリストン軍は抵抗する間ももなくあっさり全軍降伏したのだった。
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次回完結です。12時までに更新します!
ここまで読んで頂いてありがとうございました。
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