第75話 敵だと思ったのはポーラの仲間でした
私達を囲んでいる騎馬の数は凄まじい数がいる。
さっきの山賊で50人だから、今度はざっと見て500人くらいいる。
さっきの10倍だ。
流石に今回は難しいんじゃないかと私は観念しかけた。
「山賊共よ。貴様らは包囲されている。素直に降伏すれば良し。さもなくば……」
一人の男が前に出て叫びだした。
青髪で、見たところポーラにとても二ているんだけど……
「お兄ちゃん!」
ポーラが突然、叫んで駆け出した。
「「えっ?」」
私達が唖然とする中で、
「ポーラか! お前無事だったのか」
真ん中で二人が抱き合ってくれた。
「なんだ、ヴァーノン族か」
私はほっとした。
「何してたのよ! 迎えに来るのが遅いわよ」
ムッとしてポーラがその兄に文句を言っている。
「ポーラ、無事だったのか」
そのポーラに歴戦の戦士と思しき男が馬で近付いた。
「おじいちゃん。元気だった。友人たちを連れてきたの。こっちよ」
ポーラが連れて来ようとする。
「族長、危険です」
「ふんっ、ポーラの友人なら、問題なかろう」
戦士は側近の制止を振り切って私達の方に馬で近付いてきた。
そして、ひらりと馬を降りる。
「みんな、私のおじいちゃんで族長のカルヴィンよ」
えっ! 歴史の教科書にも載っている、かの有名なカルヴィンだ。クリフのおじいちゃんの本陣に突入して、皇帝に手傷を負わせた歴戦の戦士だ。
「おじいちゃん。こっちが、エイブラハム・バレーよ」
「バレーと言えばデリックの所の者か」
驚いてカルヴィンさんがエイブを見た。
「はい、デリックは祖父です」
「そうか、奴は元気にしているのか。昔は戦場でよく相まみえた」
「ええ、まだまだ若いものには負けんと未だに現役ですよ」
エイブが喜んで答えていた。
「で、こちらがボビー・アラコン」
「アラコンと言えばエドは元気か」
「父をご存知なんですか」
相好を崩してボビーが聞いていた。
「ああ、帝国の皇帝の陣所に突入した時に小癪にも儂と一緒に突入しょったわ。そうか、元気にしておるのか」
そう言ってその隣の私の後ろを見て、カルヴィンさんは固まった。
「か、カール。お前、カールじゃないか」
「カールは祖父ですよ。カルヴイン卿」
クリフが笑って答えた。
「祖父ということは君は」
「クリフォードです」
「皇子殿下が、何を死にこのような辺境の地まで」
カルヴィンさんが驚いてクリフを見直した。
「祖父が昔に約束した訪問ができていないと祖母から聞いたので、ポーラさんに付き添って来させて頂きました」
「そ、そうか、昔の約束を覚えてくれていたのか」
なんか、カルヴィンさんが感激している。
「祖父はすぐに亡くなって今までその約束が実現できずに申し訳ありません」
「いやいや、わしこそ、カールなどと呼び捨てにして申し訳ない。やつとはデリックと同じで散々戦場で戦ったからな。もっとも膝つき合わせて話したのは降伏した戦いの後じゃったが」
クリフの謝罪に昔を思い出すように、カルヴィンさんは言った。
「そして、おじいちゃん。彼女が私の友達のアオイよ。私の命を救ってくれたのた」
最後にポーラが私を紹介してくれた。
「おおおお、我が孫娘の生命を救って頂いて本当にありがとうございました」
私は歴史の教科書に載っている歴戦の戦士にお礼を言われたんだけど。
「俺からもお礼を言わせてくれ。妹の命を助けてくれてありがとう」
兄が横から頭を下げてくれたんだけど……
「えっ、いえ、私はヒールをかけただけで……」
「ぎゃあぎゃあ喚く、公爵令嬢よりも私を優先してくれたのよ」
横からポーラが口を出してくれるんだけど、
「そうですか。それは本当に助かりました」
「いえ、当然のことをしたまでですから」
私が言うと
「その公爵令嬢と母親には祖母からきつく注意しておいたから、皇室としても本当に申し訳なかった」
クリフが頭を下げている。
「まあ、殿下。詳しい話は後で。とりあえず、我がゲルでおくつろぎくだされ。詳しい話は後ほどの宴会ででも」
カルヴィンさんはそう言うと皆に合図をした。
私達はそれぞれの馬に乗って、集落に向かったのだ。
*********************************************************************
御忙しい中、ここまで読んで頂いて有難うございました。
『つぎラノ2023』にもノミネートされた『悪役令嬢に転生したけど、婚約破棄には興味ありません! 学園生活を満喫するのに忙しいです』
https://tosshiii.wixsite.com/6furusato/%E6%9B%B8%E7%B1%8D
全国書店ネット書店で絶賛発売中です。まだの方は是非とも読んで頂けたら嬉しいです!
老若男女問わず楽しんで頂けること保証します!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます