第74話 山賊をあっという間にやっつけましたが、知らぬ間に大軍に囲まれました

「「「ウォーーーー」」」

山賊たちは雄叫びを上げて突っ込んできた。

向こうのほうが坂の上だ。

山賊たちはその優位さを笠に着て突っ込んできたのだ。


こちらは騎士3名にクリフ、そして見習いの3名だ。


それに足手まといの私。


対して、山賊は50名以上。圧倒的に山賊の方が多い。


これはやばいんじゃないか。楽天的な私でも、危機感を感じた。


「クリフ、私、ホワイトから降りようか?」

私は殊勝にもクリフに聞いていた。


クリフの前に私が乗っているのでクリフの戦力も半減だ。

私が邪魔だと思ったのだ。


「ふんっ、こんな山賊共、アオイが降りるまでもないさ」

クリフはそう言うと、手を前に構えた。


「喰らえ、火の玉」

叫ぶと手から巨大なファイヤーボールを出して敵の真ん中に打ち込んでいた。


ドカーーーーン

巨大な穴が敵の真ん中に炸裂する。


騎馬が巻き込まれる。


10騎はこれに巻き込まれた。


「野郎ども、怯むな、突っ込め」

頭と思しき男が叫ぶ。


「そこか! 喰らえ火の玉」

その頭に向けてクリフが火の玉を放出した。


ドカーーーン

また大きな爆発がする。


その頭が火の玉に弾き飛ばされていた。


「行け! トム、ジム」

クリフが命ずると


「「了解」」

抜剣したトムとジムが

馬で敵の正面から坂を駆け上がっていく。本来は坂の上の方が圧倒的に優位だ。しかし、彼らの馬は近衛の馬、能力は格段に高いのだ。


「ウォーーーー」

二人は雄叫びを上げると敵軍に下から突っ込んでいった。


「ギャっ」

「グゥオっ」

「ゲッ」

前にいた騎乗の山賊を次々に叩き斬って行く。


クリフはその二人の剣を避けた山賊に次々にファイヤーボールをぶつけていった。


あっという間に敵は半減した。


「な、何なんだ、こいつらは」

「やばいぞ」

敵の山賊がたたらを踏んだ。


しかし、そこを容赦なくクリフのファイヤーボールが襲う。


「やばい」

「逃げろ」

さすがの山賊たちも坂の上に向かって逃げ去ろうとしたが、そこには仁王立ちするトムとジムがいた。


「全員降伏しろ。剣を置かないやつは切り捨てる」

クリフが叫んでくれた。


「「「ヒィーーーー」」」

圧倒された山賊は剣を投げ捨ててくれた。


トムさんとジムさんが縄をかけていく。




「すごいですね。流石クリフさん」

エイブは圧倒されていた。


「ふんっ、俺も訓練すれば殿下を超えられるさ」

ボビーが対抗心を燃やして言ってくれた。


「ふんっ、どんどん超えてくれ。俺はいつでも相手になるぞ」

「くっそう」

クリフの余裕の発言にボビーは歯ぎしりして悔しがった。



「おーい、そこの騎士見習い。縄かけるの手伝ってくれ」

「判りました」

二人はケンさん等に呼ばれて手伝いに行った。



私はクリフの後ろについて怪我している山賊の手当をしてあげた。

クリフいわく、死なない程度にやってくれとのことなんだけど、それってめちゃくちゃ難しいんだけど。


「ヒール」

血を流して苦しんでいる人にヒールをかけると、その傷がたちまち塞がってしまった。

「えっ」

血を流して苦しんでいた男が唖然としていた。

「やってしまった」

私が言うと

「アオイ、やり過ぎ」

「でも、調整はとても難しいのよ」

私は開き直ったのだ。だって調整は難しいし。


ほとんどのけが人を完全に治してしまった。

怪我した人間は、いきなり怪我が治ってびっくりしていた。


「貴方様はせ、聖女様」

「ははあ---」

私を拝みだす山賊も出始めて、その筆頭が頭なんだけど……


「いや、私は聖女じゃないから」

いくら私が否定しても、

「こんな事が出来るのは聖女様しかいらっしゃいません」

「襲ったりして本当に申し訳ありませんでした」

土下座せんばかりに謝ってくるんだけど。


「何故俺達を襲ってきたんだ?」

そこへクリフが聞くと、

「帝国の密偵だと名乗る黒尽くめの男に金を渡されたんだ」

「はあああ、それはありえないだろう。俺等を襲えってか」

クリフが言うが、

「いや、俺が聞いたのは青髪の女を襲ってほしいと頼まれたんだ」

「私を?」

「どっちにしろありえないだろう」

クリフが疑い深そうに聞くと

「本当だ。嘘じゃない! 身柄は好きにして良いとのことだから、俺達のおもちゃにした後に娼館に叩き売れば……」

「何だと」

いきなり怒り狂ったエイブが頭の胸ぐらを掴んで持ち上げた。


「おい、エイブ、止めろ」

慌ててクリフ達が羽交い締めにして止めるが、


「止めないでくれ、こいつはポーラを傷つけるといいやがったんだ。ここで俺がぶち殺してやる」

「ヒィィィぃ、許してくれ。その髭面の男はロリコンだから聖女様に手を出そうとしていたぞ」

「「何だと!」」

「ちょっとお頭、今言うことかよ」

髭面が慌てるが、ボビーとクリフに今度は吊し上げを食らっているんだけど……

二人を止めるのも大変だった。



そのドタバタが一段落した時だ。


「殿下。第二王子派でしょうか?」

ケンさんが聞いていた。

「それはないだろう。どちらにしろ、帝国が指示するわけはないが」

とクリフが言って丘の上を見上げた。


「おい、クリフ、変だ」

ケンさんがそれに釣られて慌てて声を上げた。

「しまった。囲まれたか」

クリフが声を上げて周りを見渡した。


私も慌てて周りを見ると、丘の上からぐるっと私達を一周して武装した騎士たちが囲んでいたのだった。

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