第104話 白馬の皇子様が助けに来てくれました
私は凛を私の上からどかせようと思い押してみたが、凛はびくともしなかった。
「あなたもこれで逃げられないわ」
リンの声とともに兵士達が私に近付いてきた。
もう終わりだ。私は涙が溢れてきた。こんな、凛のために、私は奴隷として、一生涯こき使われないといけないのか? 折角、健康な体になったのに!
こんな時にいつも助けてくれるのは……
そうだ、いつもこんな時に助けてくれたのはクリフだった。
でも、クリフにはアマンダが……
でも、助けてくれって、想う事は出来る。
例え来てくれなくても……
クリフ!
助けて! クリフ!
私がそう心の底から願った時だ。
「遅いぞ!」
その声と共に、
ズカーーーーン
凄まじい衝撃音とともにクリフが私達の上に転移してきたのだ。
「「「「ギャッ」」」」
その瞬間周りの兵士たちは弾き飛ばされていた。
「ギャっ」
そして、クリフは私の上にいた凛を蹴り飛ばしてくれたのだ。
凛は鉄格子に顔から突っ込んで行った。
クリフは地面に降り立つと、私を抱き起こしてくれて、そして、抱きしめてくれたのだ。
「クリフ!」
「遅いよ。アオイ、もっと早く俺を呼べ!」
クリフが文句を言うんだけど、
「だって、この首輪は好きあっていないと呼べないって」
「はああああ! 何を言っている。俺はアオイを好いているぞ」
クリフがサラリと嬉しいことを言ってくれたが、私はクリフの言葉が信じられなかった。
「えっ、だってクリフはアマンダが好きなんじゃ」
「なわけ無いだろう。俺は好きでないやつにキスなんかしないぞ」
「だってアマンダと抱き合っていたじゃない!」
私が叫ぶと、
「アマンダが悪酔いしていていたから介抱していただけだ。そうしたらいきなりアマンダが抱きついてきたんだ」
「えっ? そうなの? でも、そんなの突き放せば良かったじゃない!」
私が理不尽な事を言ったら、クリフは一瞬目を見開いたが、
「判った、次からは必ずそうするよ」
そう黒い笑みで言ってくれたのだ。
「ちょっと、そこの馬鹿皇子、あなた、よくも私を蹴り飛ばしてくれたわね」
そんなクリフに顔を押さえて怒り狂った凜が立ち上がった。
「ふん、無事だったのか? 次からは剣で叩き斬ってやるよ。貴様よくもアオイに酷いことをしてくれたな」
クリフが剣を抜き放った。
「何を言っているの? 私の事より自分の事を心配したら」
「ふん、それはそっくりそのまま、返してやる。さすが、ニセ聖女。体だけは丈夫だな。毎日、男を取っ替え引っ替えしているだけはある」
「誰が男を取っ替え引っ替えしているのよ!」
凜が怒って言うが、
「事実だろう。そこの皇子に神官達、大司教とも寝てたんじゃないのか?」
「なんであんな嫌らしい老人と寝なければならないのよ!」
「ふん、他の男と寝ていたのは認めるんだな」
「な、そんなことは……」
「リン、お前……」
王子が唖然としているが、
「そんなわけ無いでしょ。衛兵、この侵入者を捕まえなさい!」
凜が慌てて、命令した。
「ふん、都合が悪くなったのか?」
クリフが馬鹿にしたように言うが、
「ほざいていられるのも今のうちよ。ここから、無事に出られると思うの?」
「ふん、それはどうかな?」
馬鹿にしたように、クリフは言ってくれるんだけど。
そうだ、ここから国境までは遠い。
敵は嫌になるほどたくさんいて、クリフは一人だ。
到底逃げられそうに無いと思うんだけど、なんでクリフは余裕なんだろう?
「聖女様、大変です!」
そこへ兵士が駆け込んできた。
兵士は私達を見て驚くが、
「どうしたの?」
「はっ、一階で火事が起こっておりまして」
「すぐに消しなさい!」
「それが、武器庫の近くでして」
兵士は言いにくそうに言った。
「すぐに消せ! 武器庫まで火が及んだら、大変だぞ!」
やつと起きあがった王子が叫んだときだ。
ドカーン、凄まじい爆発音と共に、衝撃がきた。
私はクリフに抱き抱えられたのだ。
凄まじい爆風が吹く。
私はクリフに抱き締められて、地面に伏せていた。
そして、爆風が吹き抜けた後は、天井がなくなっていたのだ。
「もう、ムチャクチャだな」
呆れて、クリフが立ち上がって私を起こしてくれた。
護りの首輪が発動したのか、私とクリフは無傷だった。
「ゴードン爺、危ないじゃないか」
クリフが頭の上に文句を言ってくれた。
「ふぉっふぉっふぉっふおっ、少しやり過ぎましたか、まあ、お二方は護りの首輪があるから問題なかっでしょうが」
「ゴードン先生!」
そこにはなんと、白いマントをはためかせたゴードン先生がたっていたのだ。
なんか昔のヒーローみたいだ。
「でも、どうやって来たんですか?」
「なあに、私目は帝国随一の魔術師ですからの。ここまでは転移で参りましたのじゃ」
笑って、先生が言ってくれるけど、それじゃあ、ゴードン先生を呼べばよかったってこと?
私が呟くと、
「それでも宜しかったのですが」
「よいわけ無いだろう! 好きなやつを俺が守らなくてどうする?」
クリフが怒って言ってくれた。
「まあ、殿下には良いところを、譲ってあげましたのじゃ」
笑って、先生は言ってくれるんだけど
「それよりもお客さんが来たみたいですが」
先生の指す方に走ってくる兵士達の姿が見えた。
「逃げるぞ!」
私達は慌てて、駆け出したのだ。
「待ちなさい逃さないわよ」
起き上がろうとした凛等を無視して私達は駆けていったのだった。
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ここまで読んで頂いてありがとうございました。
★★★等評価してもらえたら嬉しいです!
あと少しで完結です
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