第103話 凛の前に引きずり出されて、逃げ出そうとして上から抑え込まれました
私は深い深い沼に沈んでいった。
私は蓮君と一緒にいた。
蓮君はいつも私に優しかった。いつも優しげに微笑みかけてくれたのだ。
でも、そこにいきなり凛がやってきて、連君を取り上げたのだ。
「ちょっと凛!」
私が文句を言おうとしたら、
「私の蓮君に何をしてくれるのよ」
とのたまってくれたのだ。
「えっ、違うわ。蓮君は私の……」
私が必至に言い募ろうとしたら
「何言っているのよ。蓮君と私は相思相愛よ」
と言って二人はキスしてくれたのだ。
「そんな、連くんは私のなのに! あなたにもそう言ったじゃない!」
私が文句を言うと、
「あなたは何様のつもりなの? なんで私が蓮くんを好きになってはいけないの?
あなたにそんな事決める権利はないでしょ」
凛に言われてしまったんだけど、あんたにも私から蓮くんを取り上げる権利なんてないじゃない!
そう言いたかった。
でも、蓮くんが凛が良いというのならば話しは別だ。
私が諦めるしか無かった。
そうだ。蓮くんは私ではなくて凛を取ったんだ。
それはクリフにも言えた。
クリフも私ではなくてアマンダを取ったのだ。
あの胸の大きい、図太いアマンダを……
私はいつも男に見捨てられる。
私は本当に一人ぼっちになった。
せっかくこの世界で生きていけると思ったのに……
でも、クリフの体は本当に暖かかった。彼に抱きしめられていたら、安心できたのに……
また涙が湧いてきた。
クリフも私が鬱陶しいならそう言ってくれたら良かったのだ。
それにあんなに親しくしてくれなかったら良かったのに!
キスなんてしてくれなかったら……
クリフの馬鹿!
私は大声で叫びたかった。
その時だ。
首に何か感じて、
「ギャッ」
という大声と共に
ガンガラガッシャーン
というすさまじい音が聞こえて、私は目を覚ました。
そこは知らないところだった。
とても殺風景な処だ。
前に入れたられ石牢のような……
「やっとお目覚めなの?、いい気なものね」
「凛!」
場にしたような声に私は一瞬で目覚めた。
起き上がろうとして足に足かせが嵌められているのを知った。
「ここはどこなの?」
「ここは、アリストン王国よ」
「私を浚って来たの」
私が聞くと
「何言っているのよ。元居たところに戻しただけよ。元々あなたはここに聖女として召喚されたんだから」
「それを追い出したのはあなたじゃない」
凛の言葉に私はむっとして言い返した。
「ふんっ、貴方じゃ何の役にも立たないと思ったのよ」
「じゃあ、なんで私を連れ戻したの?」
「こちらで癒し魔術で働いてもらおうと思って」
「はああああ! 何を勝手な事を言っているのよ!」
私は切れかけた。
「だって、あなた、あのままあそこにいても、邪魔になるだけでしょ。第一皇子にも振られたみたいだし」
笑って凛が言ってくれるんだけど、
「ほっといてよ。少なくともあなたにとやかく言われる筋合いはないわ」
私は凛を睨みつけた。
「生意気な女だな」
凛の横にいる偉そうな男が言って来た。
「偉そうなのはそっちでしょ」
私は言い返した。
「何だと、貴様、キンロスの王子の俺に対してそれを言うか?」
男がムッとしていってきた。
キンロスの王子?
「あなたが、凛の婚約者ね。凛と一緒で性格が悪そうね」
私は言い返したのだ。
もう、言われっぱなしではない!
「何だと、偉そうに!」
男はきっとしてこちらに向かって歩いてきた。
「言う事を聞く様にしつける必要があるな」
男は私の前まで来た。
「そうか、先の聖女みたいに殺してやろうか?」
男がニヤリと厭らしい笑みを浮かべたのだ。
私は思わず怖気が走った。
「やっぱり、聖女様を殺したのはあなた達なのね」
「ふんっ、俺たちのいう事を聞かかったからだ。お前もそうしてやろうか?」
男はそう言うと私を爬虫類のような気味の悪い目で見てくれた。
「結構整った顔形をしていやがる。何だったらその前に俺が可愛がってやろうか」
「いやああああ!」
男が手を伸ばした時だ。
私は叫んだのだ。
バシっ
その瞬間、護りの首輪が作動した。
男は一瞬で弾き飛ばされて石牢の壁に激突していた。
「アラム!」
慌てて凛がその男に駆け寄る。
私はその隙に逃げ出そうとした。足の鎖は護りの首輪の影響かはじけ飛んでいた。
でも、入り口は凛のいるところしかないみたいだ。
その周りには兵士たちがいた。
「何をしているの。すぐに捕まえなさい」
凛が兵士たちに命じていた。
「近寄ったらまた、天罰を下すわよ」
私は叫んでいた。
兵士達がぎょっとする。
「何が天罰よ。さっきのはその女の魔道具よ。その首輪を取り外しなさい」
「しかし、聖女様。先ほど取り外そうした兵士がやられましたが」
兵士たちは躊躇したのだ。
そうか、先程のショックは馬鹿なやつが首輪を外そうとしたからか!
でも、どうしよう。この首輪、いつまでもつんだろうか?
永久にその効果を発揮するとは思えなかった。
ここは既に帝国ではない。
帝国で無いということはすぐにクリフ達は助けに来てくれないのだ。
帝国との国境までも結構あるはずだ。
前は馬で3日ほどかかった。
そこまで一人で行けるんだろうか?
「何を怯えているの? さっさとやりなさい」
ヒステリックに凛が叫んだ。
「女、神妙にしろ!」
兵士達はそう言うと私に飛びかかってこようとした。
「嫌!」
私が叫ぶと同時に首輪が発動した。
「ギャーーーー」
首輪は兵士達をまとめて弾き飛ばしてくれたのだ。
これで邪魔するものは凛だけだ。
私は凛に向かって走ったのだ。
「行かさないわよ」
でも、凛が牢の扉の前で手を広げていた。
「どいて!」
私は凛を弾き飛ばしていこうとした。
でも、首輪は発動しなかった。
「きゃっ」
そのまま、凛に体当りした形になって、私が弾き飛ばされたのだ。
凛も弾き飛ばされていたけれど。
「行かさないわよ」
凛が起き上がって言った。
「その首輪も私には効かないみたいじゃない。これで終わりね」
凛が笑ってくれるんだけど。
「何言っているのよ。私も今までの私ではないわ」
そう言うと凛に向かってもう一度走り出したのだ。
今までの私なら、凛には絶対に勝てなかった。
でも、私も体力をつけてきたのだ。
凛にも勝てる!
私が凛に向かって体当たりしようとした時だ。
私の足に王子の手が伸びてきたのだ。
私の首輪が発動する間もなく私は足首を掴まれて、そのまま、バランスを崩したのだ。
「ギャッ」
皇子は首輪の障壁で更に弾き飛ばされたが、私も転けていた。
「捕まえたわ」
そして、上から凛にのしかかられたのだ。
「離しなさいよ!」
私は暴れたが、凛は動かなかったのだ。
「聖女様!」
そこに足音煩く兵士達が入ってきたのだ。
私は完全に囲まれてしまったのだ。
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どうなるアオイ?
続きは今夜です。
あと少しで完結です。
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